供物喰らいし怪異 ― 神装解放の刻
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
熱帯の国ブラジル――首都ブラジリア。
近未来的な都市に降り立った彩葉たちは、すぐに異変を察した。
静かすぎる。
高層建築が並ぶ街。
だが、歩く人間はいない。
代わりに――
カタ……カタカタ……
死者。
スケルトンが、街を彷徨っていた。
「……やっぱりここにもいるね」
彩葉が呟く。
「ふぇぇ……」
マイが彩葉の後ろに隠れる。
「あは♡骨がいっぱい♡」
ラキシアは楽しそうだ。
「……」
レナは、そんな妹を横目で見た。
その時。
「っ!」
アンナが顔を上げる。
「……なにかいる!」
空気が重くなる。
緑色の、大きな影が建物の陰から現れた。
細長い体。
鋭い牙。
赤黒い目。
「クックック……」
低く、粘つく声。
「私の気配を感じ取ったか……」
ゆっくりと、姿を現す。
「まぁいい……」
牙を剥いた。
「貴様らの血を吸わせろ」
栞が目を細める。
「あれは……チュパカブラか?」
アンナが即座に否定した。
「いえ」
「チュパカブラの突然変異」
断言する。
「チュパウマノスです」
「おそらく……幹部」
李=芳乃が頷く。
「なるほど……あれが」
怪異は笑った。
「あぁ、そうだ」
「私はチュパウマノス!」
「断界同盟幹部……」
両腕を広げる。
「クックック……さぁ、英雄たちよ」
「他の幹部をほふってきたのだろう?」
目が狂気に染まる。
「……その力を見せてくれぇ!!!」
「ブラッティクロー!!!」
赤黒い爪撃が放たれる。
「硬質化・ストラップブレード!!!」
彩葉が刃で受け止める。
「陽光・陽日輪!!!」
村正の光刃が重なる。
「ククククッ……」
チュパウマノスは飛び上がり、空中で回避。
「ダークバインド!」
喰の影が伸びる。
空中で拘束。
「アイアンテール!」
アンナの鋼鉄化したパラボラアンテナの尾が、顎へ打ち上げる!
「ググッ!?ハガァッ!!?」
「神力……弾!」
影の弾丸が直撃。
「ガガカハァッ!?……クソが!」
体勢を立て直す。
「ブラッティマリオネットダンス!」
赤黒い小型エネルギー弾が無数に放たれる。
「ふふっ」
リリアが微笑む。
「吸音・アコースティック・デス・サイレント!!」
爆音。
「グギャアアアアア!!??」
煙が上がる。
だが――
「……はぁ、はぁ、はぁ」
笑う。
「ヘヘッ……耐えたぜぇ?」
「嘘!?」
リリアが驚愕。
「アレを耐えるなんて……」
マイも震える。
「クックック!」
「エンチャント・ブラッテクロー!!!」
爪が強化される。
「合わせるよ!姉様!」
「うん!」
レナとラキシアが同時に踏み込む。
「ニードルブレード!!!」
二つの剣がぶつかり合い、火花が散る。
「ねずみ花火!」
花火の小爆発が連続で発生。
「な、何だこれは!?鬱陶しい!!!」
だが集中は切れない。
「はわわ……近すぎて……あ、スネークちゃん!!」
メデューサの髪が蛇に変じる。
ガブリ。
チュパウマノスの片腕が石化。
「な!?」
「押し切れる!」
ラキシアが叫ぶ。
だが――
「貴様!」
チュパウマノスが睨む。
「裏切ってそちらにつくか!」
狂気の笑み。
「まぁいい!」
「勝てばいいだけだ!!」
その時。
陽菜は屋上にいた。
火縄銃を構える。
「……大丈夫」
「狙撃は初めてじゃない」
深呼吸。
「風速、距離……その他もろもろ、良し……」
「霊峰弾・フジノミコト!」
パァァン!!!
「!」
チュパウマノスが横にそれるが。
「な!?」
チュパウマノスが目を見開く。
「あ、足が!!
「ク、クククッ」
「どうした?」
「切り札はおしまいか?」
「……まだあるよ」
彩葉が、静かに前へ出た。
「……お主……」
栞が息を呑む。
「え!また見せてくれるの!」
花火が目を輝かせる。
「な、なんだこの気配は!」
チュパウマノスが後退する。
「……神装……解放!!!」
彩葉の身体が、神々しい輝きに包まれる。
白銀の光。
背後に広がる記憶の紋章。
「……終わらせるよ……」
「綺麗……」
ベアトリスが呟く。
「えぇ、そうですわ……」
ココアも見惚れる。
「……メモリア・アーカイヴ!!!」
空間が震える。
チュパウマノスの頭から、光が引き抜かれる。
「な!?何だ!!」
「グ、グググッ……ああぁ!!」
光は、彩葉のショルダーバッグへ吸い込まれていく。
「……ぁ……ぁ……」
膝をつく怪異。
「チュパウマノスの相手の記憶・能力・権能の全てを封印しました!」
「今です!」
「うん……トリニティスラッシュ!」
ベアトリスの三連撃。
「アサシン・ブレンドスラッシュ!ですわ!」
ココアの斬撃が重なる。
「!?!?!?!?」
静かに。
チュパウマノスは崩れ。
灰となり。
風に消えた。
「……ふぅ……」
彩葉は元の姿へ戻る。
「彩葉!今のは?」
陽菜が屋上から降りてくる。
「えっと……」
少し照れながら。
「頭に浮かんだものを試してみました……」
陽菜は微笑む。
「そうか」
「良い技だね」
「ありがとう!」
アンナが小さく頷いた。
「……ん……」
「これでブラジルは救われる……」
だが。
その裏で。
――メキシコ・メキシコシティ。
メルヘンな服装の少女が立っていた。
「ここ、ですか?」
その隣には、半透明の少女。
「えぇ……」
「このあたりで依頼人のお手伝いです……」
「ハーメルン?聞いていますか?」
「うん!」
ハーメルンと呼ばれた少女が笑う。
「聞いてるよ〜」
半透明の少女は小さくため息をつく。
「はぁ……まぁ良いでしょう」
そして。
静かに告げた。
「行きますよ――」
「ミクトランへ」
新たな地で。
新たな物語が、動き出そうとしていた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




