断たれた絆 ― 闇に撃たれた想霊
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
熱帯の国ブラジル――沿岸都市サルバドール。
満月の下、姉と妹の戦いが始まっていた。
「あははははっ!」
ラキシアの笑い声が夜に響く。
その姿は、まるで遊びを楽しむ子どものようだった。
「ふぇぇ!こ、こないでください!」
マイが後退しながら両手を構える。
「ノイズバインド!」
空気が震える。
音の鎖がラキシアへ絡みつこうとする――
「あははっ!」
だが。
「遅い遅い!!!」
ラキシアは残像を残し、消えた。
「ニードルソード!」
その瞬間。
無数の光の針が出現し、一直線にマイへと放たれる。
だが――
「陽光・陽日輪!!!」
村正の刀が太陽のように輝いた。
光の円が広がり、針をすべて弾き飛ばす。
キィィィィィン!!
「あは♡」
ラキシアが楽しそうに笑う。
「やるねぇ!」
その瞬間。
「後ろじゃ!」
栞の声。
「狐火・炎魂永星!」
蒼い狐火がラキシアの背後から襲う。
だが――
「あは♡」
ラキシアは振り向きもせず言った。
「抗体バリア♡」
透明な膜が展開される。
狐火が、霧散した。
「なんと!?」
栞が目を見開く。
李=芳乃が踏み込む。
「ふむ――」
拳を握る。
「死聖拳・ホーリデッド!!」
神聖な力を宿した拳が、ラキシアへと突き刺さる――
「強固・フィブリン」
瞬間。
白い繊維のようなものが出現し、李=芳乃の腕へ絡みついた。
「!?」
動かない。
「な、何だこれは!」
「と、取れない!」
その時――
「ブレイブクローなの!」
アビが飛び込み、鋭い爪で繊維を切り裂いた。
バチィン!!
「助かった」
李=芳乃が頷く。
アビは胸を張った。
「これくらい普通なの」
「あれ〜?」
ラキシアが残念そうに言う。
「逃げられちゃった」
その瞬間。
「籠球・一球入魂!」
マミが放った球が、光を纏いラキシアへ直撃した。
「!?」
ドカァァァン!!!
爆発。
煙が舞う。
「ケホッ!ケホッ!」
ラキシアが咳き込む。
「な、何?」
その隙を、レナは見逃さなかった。
「ドリルスピア!!」
螺旋の槍が突き出される。
だが――
カキンッ!!
ラキシアが受け止めた。
「!……へぇ〜」
微笑む。
「やるじゃない、姉様」
レナは叫んだ。
「っ……もうこんなことやめて!」
ラキシアは首を傾げる。
「なんで?」
そして、冷たく言った。
「無責任な人間がいるから、この世界は平和にならないんだよ?」
「そんな人間を駆除してあげてるんだから」
微笑む。
「感謝してほしいな〜」
「うるさい!」
レナの声が震える。
「自分の正義を貫くことは悪くない!」
「でも!」
一歩踏み出す。
「他の人に迷惑をかけることは悪いことだから!」
そして、強く言った。
「あなたが私を姉と言うなら!」
「あなたが私から産まれたと言うなら!」
涙を浮かべながら。
「私はあなたを止める権利がある!」
ラキシアは笑った。
「あは♡」
「姉様が私を止められるかな〜?」
その頃。
ユキとメデューサは動かずにいた。
「……」
ユキが静かに言う。
「私達は流石に攻撃できない」
「私は銃だし」
「メデューサは石化……」
「それに」
ラキシアとレナを見る。
「あの二人は話し合うべきだから」
「……うん」
メデューサも頷いた。
ベアトリスが構えながら言う。
「もしものときは、いつでも動く」
「えぇ」
ココアも頷く。
フェトゥが呟いた。
「……説得、うまくいくといいけど」
「そうだね」
フェルルも同意する。
「……はい」
影も不安そうに見つめていた。
その時。
銃声が響いた。
「ハウリングピストル!」
リリアの銃撃。
「キュウウン!?」
異形の獣が倒れる。
周囲を見る。
そこには――
異形の獣たち。
「グルルルルルル!!」
唸っている。
リリアが呟いた。
「これは……」
陽菜が答える。
「妖獣」
そして続けた。
「しかも異獣」
「異界に住む獣です」
「なんでここに!?」
彩葉が驚く。
「それよりも」
ココアが構える。
「お二人の邪魔になります」
「片付けますわよ!」
一方。
「あは♡」
ラキシアが手を差し伸べる。
「姉様」
「一緒に来てください!」
「嫌だ!」
レナが叫ぶ。
「あなたがこっちに来るべき!」
「お願い!」
「考え直して!」
その瞬間だった。
近くのビルの上。
一つの影。
「ふむ」
男が呟く。
「もう用済みか……」
次の瞬間。
ピューーーン!!!
「!?」
ラキシアの体を、光が貫いた。
「え……?」
レナが目を見開く。
「ラキシア?」
彩葉も叫ぶ。
「!」
陽菜が睨む。
「あれは!」
花火が叫んだ。
「ロキ!?なんでここに!」
ロキは微笑んだ。
「ふふふっ」
そして、冷たく言った。
「用済みの駒を駆除しただけですよ」
振り返る。
「それでは」
そして――
闇夜へと消えた。
「……あ!」
喰が叫ぶ。
「レナ!」
ラキシアが崩れ落ちる。
「……ラキシア……」
レナが駆け寄る。
ココアが不安そうに言う。
「レナさん……」
その時。
「ん?」
栞が目を見開いた。
「レナ!」
「まだ生きておる!」
「え!?」
レナが顔を上げる。
「早く回復を!」
「で、でも!」
レナの手が震える。
「やったことないし……!」
「仕方ない!」
李=芳乃が言った。
「速攻で教える!」
アンナが能力を展開する。
「音波ドーム!」
透明な壁が広がる。
「……うん」
「これで周りと遮断された……」
レナは震える手を、ラキシアへ向けた。
「……っ……」
李=芳乃が優しく言う。
「そうだ」
「ゆっくり……」
「……ッ!」
ラキシアが咳き込む。
「ゲホッ、ケホッ!」
「はぁ……はぁ……」
「ラキシア!」
レナが叫ぶ。
ラキシアは、弱々しく目を開けた。
「……お姉様?」
そして、問う。
「なぜです?」
「考えの合わないものと……」
「あなたを引き抜こうとしたものを……」
「なぜ救うのです?」
レナは答えた。
「そんなの関係ないよ!」
「!」
ラキシアの目が見開かれる。
レナは続けた。
「例え」
「住む場所も」
「国も」
「言葉も」
「色も」
そして、優しく言った。
「絆があれば」
「縁があれば」
「関係ないんだよ……」
ラキシアは静かに見つめた。
「……そう、ですか……」
「ラキシア?」
返事はなかった。
栞が言う。
「眠っておるようじゃ」
アンナが言った。
「近くに守護者が作った休憩所があります!」
「そこに!」
「うん!」
レナはラキシアを抱き上げた。
守るように。
強く。
――その頃。
天界のどこか。
暗い場所。
ロキが立っていた。
「ふふふっ」
静かに笑う。
「かなりの断界同盟の幹部の数を減らされましたが……」
そして、空を見上げた。
「ここまでは来れるはずがありません……」
口元が歪む。
「私の野望も」
「もう少しで……」
ククククッ――
闇の中で。
その笑いだけが、静かに響いていた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




