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アルケオン  作者: れんP
南米編

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144/182

断たれた絆 ― 闇に撃たれた想霊

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

 熱帯の国ブラジル――沿岸都市サルバドール。


 満月の下、姉と妹の戦いが始まっていた。

 

「あははははっ!」

 

 ラキシアの笑い声が夜に響く。


 その姿は、まるで遊びを楽しむ子どものようだった。

 

「ふぇぇ!こ、こないでください!」


 

 マイが後退しながら両手を構える。

 

「ノイズバインド!」

 

 空気が震える。


 音の鎖がラキシアへ絡みつこうとする――

 

「あははっ!」

 

 だが。



「遅い遅い!!!」


 


 ラキシアは残像を残し、消えた。


 


「ニードルソード!」


 


 その瞬間。


 無数の光の針が出現し、一直線にマイへと放たれる。


 


 だが――


 


「陽光・陽日輪!!!」


 


 村正(むらまさ)の刀が太陽のように輝いた。


 


 光の円が広がり、針をすべて弾き飛ばす。


 


 キィィィィィン!!


 


「あは♡」


 


 ラキシアが楽しそうに笑う。


 


「やるねぇ!」


 


 その瞬間。


 


「後ろじゃ!」


 


 (しおり)の声。


 


「狐火・炎魂永星!」


 


 蒼い狐火がラキシアの背後から襲う。


 


 だが――


 


「あは♡」


 


 ラキシアは振り向きもせず言った。


 


「抗体バリア♡」


 


 透明な膜が展開される。


 


 狐火が、霧散した。


 


「なんと!?」


 


 栞が目を見開く。


 


 (リー)芳乃(よしの)が踏み込む。


 


「ふむ――」


 


 拳を握る。


 


「死聖拳・ホーリデッド!!」


 


 神聖な力を宿した拳が、ラキシアへと突き刺さる――


 


「強固・フィブリン」


 


 瞬間。


 


 白い繊維のようなものが出現し、李=芳乃の腕へ絡みついた。


 


「!?」


 


 動かない。


 


「な、何だこれは!」


 


「と、取れない!」


 


 その時――


 


「ブレイブクローなの!」


 


 アビが飛び込み、鋭い爪で繊維を切り裂いた。


 


 バチィン!!


 


「助かった」


 


 李=芳乃が頷く。


 


 アビは胸を張った。


 


「これくらい普通なの」


 


「あれ〜?」


 


 ラキシアが残念そうに言う。


 


「逃げられちゃった」


 


 その瞬間。


 


「籠球・一球入魂!」


 


 マミが放った球が、光を纏いラキシアへ直撃した。


 


「!?」


 


 ドカァァァン!!!


 


 爆発。


 


 煙が舞う。


 


「ケホッ!ケホッ!」


 


 ラキシアが咳き込む。


 


「な、何?」


 


 その隙を、レナは見逃さなかった。


 


「ドリルスピア!!」


 


 螺旋の槍が突き出される。


 


 だが――


 


 カキンッ!!


 


 ラキシアが受け止めた。


 


「!……へぇ〜」


 


 微笑む。


 


「やるじゃない、姉様」


 


 レナは叫んだ。


 


「っ……もうこんなことやめて!」


 


 ラキシアは首を傾げる。


 


「なんで?」


 


 そして、冷たく言った。


 


「無責任な人間がいるから、この世界は平和にならないんだよ?」


 


「そんな人間を駆除してあげてるんだから」


 


 微笑む。


 


「感謝してほしいな〜」


 


「うるさい!」


 


 レナの声が震える。


 


「自分の正義を貫くことは悪くない!」


 


「でも!」


 


 一歩踏み出す。


 


「他の人に迷惑をかけることは悪いことだから!」


 


 そして、強く言った。


 


「あなたが私を姉と言うなら!」


 


「あなたが私から産まれたと言うなら!」


 


 涙を浮かべながら。


 


「私はあなたを止める権利がある!」


 


 ラキシアは笑った。


 


「あは♡」


 


「姉様が私を止められるかな〜?」


 


 


 その頃。


 


 ユキとメデューサは動かずにいた。


 


「……」


 


 ユキが静かに言う。


 


「私達は流石に攻撃できない」


 


「私は銃だし」


 


「メデューサは石化……」


 


「それに」


 


 ラキシアとレナを見る。


 


「あの二人は話し合うべきだから」


 


「……うん」


 


 メデューサも頷いた。


 


 ベアトリスが構えながら言う。


 


「もしものときは、いつでも動く」


 


「えぇ」


 


 ココアも頷く。


 


 フェトゥが呟いた。


 


「……説得、うまくいくといいけど」


 


「そうだね」


 


 フェルルも同意する。


 


「……はい」


 


 (エイ)も不安そうに見つめていた。


 


 その時。


 


 銃声が響いた。


 


「ハウリングピストル!」


 


 リリアの銃撃。


 


「キュウウン!?」


 


 異形の獣が倒れる。


 


 周囲を見る。


 


 そこには――


 


 異形の獣たち。


 


「グルルルルルル!!」


 


 唸っている。


 


 リリアが呟いた。


 


「これは……」


 


 陽菜(ひな)が答える。


 


「妖獣」


 


 そして続けた。


 


「しかも異獣」


 


「異界に住む獣です」


 


「なんでここに!?」


 


 彩葉(いろは)が驚く。


 


「それよりも」


 


 ココアが構える。


 


「お二人の邪魔になります」


 


「片付けますわよ!」


 


 


 一方。


 


「あは♡」


 


 ラキシアが手を差し伸べる。


 


「姉様」


 


「一緒に来てください!」


 


「嫌だ!」


 


 レナが叫ぶ。


 


「あなたがこっちに来るべき!」


 


「お願い!」


 


「考え直して!」


 


 


 その瞬間だった。


 


 近くのビルの上。


 


 一つの影。


 


「ふむ」


 


 男が呟く。


 


「もう用済みか……」


 


 


 次の瞬間。


 


 ピューーーン!!!


 


 


「!?」


 


 ラキシアの体を、光が貫いた。


 


 


「え……?」


 


 レナが目を見開く。


 


「ラキシア?」


 


 彩葉も叫ぶ。


 


「!」


 


 陽菜が睨む。


 


「あれは!」


 


 花火(はなび)が叫んだ。


 


「ロキ!?なんでここに!」


 


 


 ロキは微笑んだ。


 


「ふふふっ」


 


 そして、冷たく言った。


 


「用済みの駒を駆除しただけですよ」


 


 振り返る。


 


「それでは」


 


 そして――


 


 闇夜へと消えた。


 


 


「……あ!」


 


 (くろ)が叫ぶ。


 


「レナ!」


 


 


 ラキシアが崩れ落ちる。


 


「……ラキシア……」


 


 レナが駆け寄る。


 


 ココアが不安そうに言う。


 


「レナさん……」


 


 その時。


 


「ん?」


 


 栞が目を見開いた。


 


「レナ!」


 


「まだ生きておる!」


 


「え!?」


 


 レナが顔を上げる。


 


「早く回復を!」


 


「で、でも!」


 


 レナの手が震える。


 


「やったことないし……!」


 


「仕方ない!」


 


 李=芳乃が言った。


 


「速攻で教える!」


 


 アンナが能力を展開する。


 


「音波ドーム!」


 


 透明な壁が広がる。


 


「……うん」


 


「これで周りと遮断された……」


 


 


 レナは震える手を、ラキシアへ向けた。


 


「……っ……」


 


 李=芳乃が優しく言う。


 


「そうだ」


 


「ゆっくり……」


 


 


「……ッ!」


 


 ラキシアが咳き込む。


 


「ゲホッ、ケホッ!」


 


「はぁ……はぁ……」


 


「ラキシア!」


 


 レナが叫ぶ。


 


 ラキシアは、弱々しく目を開けた。


 


「……お姉様?」


 


 そして、問う。


 


「なぜです?」


 


「考えの合わないものと……」


 


「あなたを引き抜こうとしたものを……」


 


「なぜ救うのです?」


 


 レナは答えた。


 


「そんなの関係ないよ!」


 


「!」


 


 ラキシアの目が見開かれる。


 


 レナは続けた。


 


「例え」


 


「住む場所も」


 


「国も」


 


「言葉も」


 


「色も」


 


 そして、優しく言った。


 


「絆があれば」


 


「縁があれば」


 


「関係ないんだよ……」


 


 ラキシアは静かに見つめた。


 


「……そう、ですか……」


 


「ラキシア?」


 


 返事はなかった。


 


 栞が言う。


 


「眠っておるようじゃ」


 


 アンナが言った。


 


「近くに守護者が作った休憩所があります!」


 


「そこに!」


 


「うん!」


 


 レナはラキシアを抱き上げた。


 


 守るように。


 


 強く。


 


 


 ――その頃。


 


 天界のどこか。


 


 暗い場所。


 


 ロキが立っていた。


 


「ふふふっ」


 


 静かに笑う。


 


「かなりの断界同盟の幹部の数を減らされましたが……」


 


 そして、空を見上げた。


 


「ここまでは来れるはずがありません……」


 


 口元が歪む。


 


「私の野望も」


 


「もう少しで……」


 


 


 ククククッ――


 


 闇の中で。

 

 その笑いだけが、静かに響いていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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