表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルケオン  作者: れんP
南米編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

140/182

紅の代償 ― 守護者の宿命

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

 洞穴を出た彩葉たちは、サンパウロの街へと戻っていた。


 空気は重かった。


 だが、それは恐怖ではない。


 終わった――という安堵の重さだった。


 


 街の中心にある広場。


 守護者たちは、人間たちに事の顛末を説明していた。


 子どもを襲っていた怪異――パパ・フィーゴは既に消滅したこと。


 しばらくは安全であること。


 人々は恐る恐る姿を現し、そして――深く頭を下げた。


 守られたのだと、理解していた。


 


 そして。


 その後――。


 


 彩葉(いろは)たちは街の外へと移動していた。


 


「じゃあ、次の目的地はサルバドール?」


 彩葉が尋ねる。


 


「うん」


 アンナが頷いた。


「そこでも事件が起きてるって、アマゾンたちが言ってた」


 


 彩葉は拳を握る。


「良し!行こう!」


 


 だが――。


 


「……うぅ!」


 


 突然。


 彩葉の身体が揺れた。


 


「え?」


 レナが振り返る。


 


 次の瞬間。


 


「ゲホッ――!」


 


 彩葉の口から――


 血が溢れた。


 


「えええええ!?」


 レナが絶叫する。


「だ、だ、だ大丈夫!?」


 


 彩葉は口を押さえる。


「ゲホッ……ケホッ……!」


 赤い血が指の隙間から滴り落ちた。


 


「彩葉!」


 陽菜(ひな)が駆け寄る。


「ゆっくり!」


 


「彩葉さん!」


 (エイ)も駆け寄る。


「どうしたんですか!?」


 


 その時。


 村正(むらまさ)が静かに言った。


「あぁ、守護者はな」


 


 全員が彼を見る。


 


「生理の代わりに吐血するんだ」


 


 静寂。


 


「性器がないからな」


 


 空気が止まった。


 


「え……」


 影が固まる。


 


「そう……なんですか……?」


 


「あぁ」


 村正は頷いた。


「守護者は完全な生物ではない」


「生命の仕組みの一部だけを持っている」


 


 陽菜が彩葉の背中をさする。


「大丈夫」


「これは異常じゃない」


「守護者として正常な現象だ」


 


 彩葉は息を整えながら頷いた。


「……うん」


 


 だが。


 その顔は少し苦しそうだった。


 


 守護者の身体は強い。


 だが。


 完全ではない。


 


 それは――


 不完全な神の証だった。


 


 しばらくして。


 彩葉たちはその場で休憩を取ることにした。


 


 木陰。


 柔らかな風。


 熱帯特有の湿った空気。


 


 陽菜は彩葉を座らせた。


「無理はしなくていい」


 


「……うん」


 彩葉は小さく答えた。


 


 影が心配そうに見ている。


「彩葉さん……」


 


 彩葉は微笑んだ。


「大丈夫だよ」


「すぐ治るから」


 


 守護者の再生能力は高い。


 既に吐血は止まりつつあった。


 


 レナが隣に座る。


「びっくりしたよ……」


 


「ごめんね」


 彩葉は少し申し訳なさそうに言った。


 


「謝らなくていいよ!」


 レナは首を振る。


「彩葉は悪くない!」


 


 花火も言う。


「そうだよ」


「体の仕組みなんだから仕方ないよ」


 


 アンナは静かに見守っていた。


 


 守護者。


 


 それは強い存在。


 だが同時に――


 孤独な存在でもある。


 


 人間でもない。


 完全な神でもない。


 


 その狭間の存在。


 


 だからこそ。


 守るのだ。


 


 守ることだけが――存在理由だから。


 


「……ありがとう」


 彩葉は小さく言った。


 


 その声は。


 少しだけ、弱かった。


 


 そして。


 休憩を終えた守護者たちは――


 転移装置の前に立っていた。


 


 光の輪が回転している。


 空間転移装置。


 


「行ける?」


 陽菜が尋ねる。


 


「うん」


 彩葉は頷いた。


「大丈夫」


 


 全員が装置の中へ入る。


 


 光が溢れる。


 


 空間が歪む。


 


 そして――。


 


 次の瞬間。


 


 彼らは。


 ブラジルの別の都市――


 サルバドールへと到着していた。


 


 だが。


 


 そこもまた。


 


 静まり返っていた。


 


 カタ……


 カタ……


 


 骨の音。


 


 スケルトンが街を徘徊している。


 


 人間の姿は――ない。


 


「……」


 フェトゥ=ハーネアネアが周囲を見渡す。


 


「ここもですわね」


 ココア=モカ=コフィアが呟く。


 


「そうなの……」


 アビが言う。


 


「ここもここで不気味だぜぇ」


 (くろ)が笑う。


 


「うん……」


 花火も警戒する。


 


「ふぇぇぇ……」


 マイが震える。


 


「とりあえず、進んでみよう」


 マミが言った。


 


「うん」


 ユキが頷く。


 


「了解」


 ベアトリスが答える。


 


「人の気配はあるけれど」


 メデューサが言う。


「家に引きこもっているわね」


 


 陽菜は彩葉を見る。


 


「僕たちは彩葉を休ませる」


 


 そして。


 他の守護者たちを見る。


 


「お願いできるかな」


 


「うむ」


 (しおり)が頷いた。


「まかされたのじゃ」


 


「ゆっくり休め」


 (リー)=芳乃(よしの)も言う。


 


 彩葉は小さく頷いた。


「……うん」


 


 仲間たちは前へ進む。


 


 彩葉はその背中を見つめていた。


 


 守られる側。


 


 それは――


 まだ慣れない立場だった。


 


 だが。


 


 その胸の奥には。


 


 確かな想いがあった。


 


(早く……回復しないと)


 


(みんなと一緒に――戦うために)


 


 静かな街。



 サルバドールで。


 新たな脅威が――


 彼らを待っていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ