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アルケオン  作者: れんP
南米編

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133/182

密林の断罪、毒針の終幕

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

 熱帯の国ブラジル――アマゾン近郊。


 湿った大気が重く沈み、森は戦いの気配に震えていた。


 巨大な樹木が取り囲む空間の中央で、カブラ・カブリオーラが炎を噴き上げる。

 その赤い光が、夜のように暗い森を照らし出していた。


「断界同盟の幹部が率いている四天王……その一人……」


 彩葉(いろは)が呟く。


 その言葉の重みが、皆の胸に落ちる。


「……役者はそろった」


 アマゾン=チャムサーモンが一歩前に出た。

 深緑のドレスが静かに揺れる。


「さぁ、“お仕置き”を始めよう」


「うん……」


 ニルが頷く。黄緑の髪が森の光を受けて淡く輝く。


「っ……はい……今度こそ止めます!」


 アンナのアンテナが高く掲げられ、微かな振動音を発する。


「うん! 皆! 行くよ!!」


 彩葉の号令と同時に、空気が爆ぜた。


「キシャャャャャ!!! まずはお前からだ!!!」


 カブラ・カブリオーラがニルへ突進する。


 だが――


「ポイズントラップ」


 ニルの足元から、淡い光が広がった。


 地面に潜んでいた毒の陣が発動する。


「!?」


 怪異の足が沈む。


「マンチニールハイドロポンプ……」


 地中から無数の木の根がうねり出る。

 根は絡みつき、拘束し、その隙間から毒素を含んだ水流が噴き上がる。


 激流のような毒水が怪異を包み込んだ。


「グギャャャャャ!?!?!?!?……ク、クソ!!!」


 皮膚が焼け、煙が上がる。


「神力の鎖……!」


 (エイ)の放った鎖が空を裂き、怪異の胴体を縛り上げる。


「!?」


「今だ! ダークバレット!!」


 (くろ)の黒弾が炸裂。


「エンチャントバレット!」


 陽菜(ひな)の光弾が連続で叩き込まれる。


「グァァァァァァ!!!」


 爆発の閃光。


「満開・お祭り花火!」


 花火(はなび)の放つ光が夜空のように広がり、炸裂する。


「籠球・シュート……!」


 マミの放った光球が怪異の顔面を直撃。


「音響・ソングフルバースト……!」


 マイの音波が鼓膜を震わせる。


「吸音・ノイズフルバースト!」


 リリアが衝撃を増幅させる。


「ダブルニードルランス・ロケット!」


 レナの双槍が推進炎を纏い、貫く。


「ドカァァァン!!!」


 密林を揺るがす連続爆撃。


 煙が晴れた瞬間――


「グギャャヤャヤャ!!!???……クソが……鉄爪・乱斬り!」


 怪異はまだ立っていた。


 狂気のまま爪を振るう。


「アサシン・カフェインスラッシュ!」


 ココア=モカ=コフィアが高速で踏み込み、刃で受け止める。


「キン! カキン!! キキンッ!!!!」


 火花が飛び散る。


「くっ!」


 怪異が力を込める。


「遅い、後ろ」


 静かな声。


「!?」


 振り返った瞬間――


「恐怖・ジャック・ザ・リッパー……」


 ベアトリスの刃が走る。


 まるで解剖するかのような、正確で残酷な斬撃。


「ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!?!?!?」


 肉が裂ける音。


「月光・双月斬り……!」


 村正(むらまさ)の刃が月の弧を描く。


 閃光。


「がぁぁぁぁ!?? オレの腕がァァァァァ……」


 両腕が宙を舞った。


 血が噴き出す。


「エアリアルカッター……なの」


 アビの風刃が追撃。


「グッ!?」


「発信電・オンパマグネットボム……」


 アンナのアンテナが赤く光る。


 怪異の体に小さな装置が吸い付く。


「!?」


「ピピッ……」


 一瞬の静寂。


「……ドカァァァン!!!」


 内側から爆発。


 怪異の巨体が吹き飛ばされる。


 そこへ――


「硬質化・ストラップブレード!」


 彩葉が跳躍。


 刃を構え、怪異の喉元へ突きつける。


「降参してください!」


 呼吸が荒い。


 だが瞳はまっすぐだった。


「キ、キシャャ……それはできねぇなぁ……ファイアブレス!」


「!?」


 炎が至近距離で噴き出す。


 彩葉は横へ転がり、ぎりぎりで回避。


 背後の木が焼け落ちる。


「キシャャャャャ……近づいてみろ……燃やし尽くして食ってやる……」


 腕を失ってもなお、怪異は笑う。


「……哀れだな」


 (リー)芳乃(よしの)が低く言う。


 フェトゥ=ハーネアネアと(しおり)は静かに目を伏せる。


 その時。


「……じゃあ、安らかに……毒針・ファイナルスピア……」


 アマゾン=チャムサーモンの姿が消えた。


 次の瞬間、怪異の懐。


 手の甲から伸びた毒針が、腹部へ深く突き刺さる。


「ガハッ!?」


 黒い液体が逆流する。


「……オレ達四天王は……幹部であるあの方に仕えている……」


 膝をつきながら、怪異は笑う。


「それぞれの街で事件を起こせと……せいぜい足掻け……キシャャャ……」


 身体が崩れ始める。


 灰のように、霧のように。


 やがて完全に消え去った。


 森に静寂が戻る。


「……」


 彩葉は黙って立ち尽くす。


 四天王。


 まだ三人いる。


「皆さん……まずは森を抜けましょう」


 チャムサーモンが静かに言う。


「……うん……」


 アンナが頷く。


「はい」


 彩葉も答えた。


 戦いの余韻を背に、彼女たちは森を後にする。


 湿った風が吹き抜ける。


 だが空気は変わっていた。


 これは終わりではない。


 断界同盟――


 その影は、南米全土へと広がっているのだから。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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