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アルケオン  作者: れんP
南米編

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132/182

密林に轟く黒き斬撃

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

 アマゾン近郊の密林。


 巨大な樹木が天を覆い、昼であるはずの森は薄暗い。湿った空気が重く沈み、葉の隙間から差し込む光が、緑の霧のように漂っている。


 その中央で、ヤギ頭の怪異――カブラ・カブリオーラが荒い息をついていた。


「キシャャャ! オレを追い詰めたつもりか? ただのパラボラアンテナに何ができる! キシャャャャャ!!」


 嘲笑とともに、口から火花が散る。爪が地面を抉り、土が弾け飛ぶ。


 対峙するのはアンナ。


 細身の身体。長い尻尾。その先端には、身体よりもはるかに大きなパラボラアンテナ。


 彼女は無言だった。


 アンテナがゆっくりと回転する。


 森のざわめきの中、目に見えない波が空間を震わせた。


「……」


 アンナは片足を引き、静かに構える。


 次の瞬間――


 カブラ・カブリオーラが地を蹴った。


 爆発のような衝撃。


 一直線に迫る巨躯。


「キシャャャャャ!!!」


 振り下ろされる爪。


 アンナは横へ滑るように回避する。爪が地面を裂き、土と根が舞い上がる。


 だが怪異は止まらない。振り向きざまに尾のような脚で蹴りを放つ。


「っ……!」


 アンナはアンテナを盾のように前へ傾ける。


 轟音。


 衝撃波が森に広がる。


 アンテナがきしむ。だが折れない。


「キシャャャャ!! その程度か?」


 怪異が炎を吐いた。


 赤い奔流が一直線に走る。


 アンナはアンテナを高速回転させる。


 空間が歪む。


 炎が、逸れた。


 まるで見えない壁にぶつかったかのように、火流は左右へ散り、木々を焼き焦がす。


 焦げた匂いが広がる。


 アンナの額に汗が滲む。


「……っ」


 アンテナの縁が赤熱している。


 カブラ・カブリオーラは獣じみた笑みを浮かべた。


「面白ぇ……だが、防ぐだけか?」


 今度は跳躍。


 頭上からの急襲。


 巨大な影が覆いかぶさる。


 アンナは片手を掲げた。


 アンテナが空へ向く。


 瞬間――


 甲高い音。


 空気を切り裂く振動波が上空へ放たれる。


 不可視の衝撃が怪異を直撃。


「グッ!?」


 軌道がわずかに逸れ、落下位置がずれる。


 地面に叩きつけられる怪異。


 土煙が舞う。


 だがすぐに立ち上がる。


「……なるほどな。叩き落とすくらいはできるか」


 獣の目が細まる。


「だが……殺せるか?」


 再び突進。


 今度はジグザグに軌道を変え、攪乱する。


 アンナのアンテナが高速回転し、森全体に電磁のうねりが広がる。


 だが怪異は炎と煙を撒き散らし、視界を遮る。


 煙の中から牙が迫る。


「っ……!」


 肩を掠める。


 赤い血が飛ぶ。


 アンナがよろめく。


「キシャャャャャ!!! その程度か?」


 追撃の爪。


 その瞬間――


「加勢しますよ……」


 低く、澄んだ声。


 森の奥から、ドス黒い斬撃が放たれた。


 闇を凝縮したような刃が一直線に走る。


 カブラ・カブリオーラの脇腹を裂いた。


「っ!?!?!? な、何者だ!!!」


 血飛沫。


 怪異が後退する。


 煙の向こうから、二人の少女が姿を現した。


 深緑色のドレス。腰には赤と黄色のリボン。

 静かな威圧を纏う少女が一歩前へ出る。


「私はアマゾン=チャムサーモン……」


 アンナが目を見開く。


「……なん……で」


「……なぜアマゾンから出てきたのか? ですって?」


 アマゾン=チャムサーモンは淡く微笑む。


「この国は今の私のもう一つの住処です。そこにいるものを守るのは、私の役目」


 その隣。


 黄緑色の髪。茶色いドレス。

 頭には黄緑の実――りんごのような果実が実っている少女。


「うん……私はあの国に居たくないから南米で暮らしてる。助けるのは当然」


 柔らかな声。


「あぁ、私はマンチニールの守護者『ニル』」


 森の空気が変わる。


 湿度の中に、静かな力が満ちる。


「私はアマゾンの守護者……元・鮭の守護者」


 チャムサーモンの足元で、地面がざわめいた。


 木の根がうねる。


 川の気配が満ちる。


 その時――


「アンナ!」


 彩葉(いろは)たちが駆けつけた。


 息を切らしながら、森へ踏み込む。


「くっ! 集まってきやがったか……」


 カブラ・カブリオーラが舌打ちする。


 だがすぐに、誇示するように胸を張った。


「まぁいい! オレはカブラ・カブリオーラ、断界同盟の幹部のお一人《人間の血を吸い尽くす者》チュパウマノス様の率いる四天王の一人! カブラ・カブリオーラ様だ!!」


 名乗りと同時に、炎が噴き上がる。


 森の上空まで届く火柱。


 密林が赤く染まる。


 四天王。


 その言葉が重く響く。


 アンナは血を拭い、再び構えた。


 チャムサーモンの周囲で黒き水流が渦を巻く。


 ニルの足元で毒の実が淡く光る。


 彩葉たちも武器を構える。


 密林は戦場と化した。


 炎と電波と闇と水。


 それぞれの力が交錯する。


 カブラ・カブリオーラの瞳が狂気に染まる。


「さぁ来い……まとめて喰らってやる!!」


 次の瞬間。


 密林を揺るがす、総力戦が始まった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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