熱帯の大地、緑の都市へ
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
彩葉たちは、アビの技――エアーライドで大海原を越えた。
青い海。
白い雲。
そして、やがて見えてくる広大な緑。
「ついたなの」
アビがゆっくりと降下する。
足元に広がるのは、熱帯の大地。
「ここが……ブラジル……」
彩葉は深く息を吸い込んだ。
湿った空気。
濃い緑の匂い。
どこまでも続く森林。
「ここは、どこだろう。人がいないみたい」
リリア=エジソンが周囲を見回す。
「森林が見える……」
マイが静かに呟く。
「あれが、アマゾンかな?」
マミが遠くを指さす。
視界いっぱいに広がる密林。
「どうでしょう?」
メデューサが首を傾げる。
「ここ、詳しくないからわかんない」
ユキが肩をすくめる。
「地図を探せばいいんだけど、どこにあるのかわからない」
ベアトリスが腕を組む。
「そうだよなぁ」
喰がぼやく。
「とりあえず、歩いてみる?」
影が提案する。
「うん、そうしよう」
李=芳乃が頷いた。
――こうして、彩葉たちは歩き始めた。
照りつける太陽。
熱帯特有の湿度。
巨大なシダ植物。
色鮮やかな鳥が枝を飛び交う。
遠くから聞こえる、正体不明の動物の鳴き声。
「自然……すごいね」
陽菜が感嘆する。
「ジャングルって感じだねぇ」
レナが汗を拭く。
道らしき道を進み、川沿いを渡り、小さな集落跡のような場所を通り過ぎる。
やがて――
舗装された道路が見えてきた。
「人工物……!」
リリアが目を輝かせる。
さらに歩く。
すると、遠くに建物群が見えた。
「あれ、街じゃない?」
陽菜が指さす。
「やっとついた〜!」
レナが大きく伸びをする。
そこは、ブラジル北西部の都市――リオ・ブランコ。
低層の建物が並び、ヤシの木が街路を飾る。
熱帯の空気と都市の匂いが混ざり合う場所。
「うむ、まずは休憩して聞き込みかの」
栞が言う。
「まぁ、それしかないな」
村正も同意する。
「ブラジルでコーヒーが有名と聞いたような気がしますわ」
ココア=モカ=コフィアが目を輝かせる。
「あるのでしたら、ぜひ飲んでみたいですわ」
「確かに、コーヒーの本場だもんね」
フェルルが笑う。
「……緊張する……」
フェトゥ=ハーネアネアが小さく呟く。
「大丈夫だよ!」
花火が明るく言う。
「そうだよ」
フェルルも続く。
彩葉は皆を見渡し――
ふっと微笑んだ。
「ふふっ……」
そして前を見る。
「行こう!」
その一歩が、新たな物語を動かす。
一方――
街の中心部。
ある建物の屋上。
そこに、一人の少女が立っていた。
細い身体。
長い尻尾。
その先端には――
身体よりも大きなパラボラアンテナ。
彼女は、じっと彩葉たちを見つめていた。
「……英雄御一行、発見」
アンテナがわずかに回転する。
電波のような微かな音。
「ここも……救われる?」
少女の瞳は、どこか不安げだった。
ブラジルの空の下。
新たな怪異の気配が、静かに動き出していた。
――南米編、本格始動。
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