月の代行者と、新たなる旅路 ― 南米へ導く光 ―
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
常夏の島々の国――パラオ。
赤い空が消え、青が戻ったその日。
消えていた人々が、次々と帰ってきていた。
泣きながら家族と抱き合う者。
言葉も出ず、ただ空を見上げる者。
誰もが、生きて帰れた奇跡を噛み締めていた。
「うん!元どおりだね!」
レイナが嬉しそうに言った。
「うん!」
彩葉も微笑む。
その時――
「皆様、今回の件、ありがとうございます」
澄んだ声が響いた。
振り向くと、そこには水色の髪をした少女が立っていた。
静かな月光のような存在感。
彼女は、一冊の本を抱えていた。
――月の本。
「おう!」
セキが軽く手を上げる。
「おや、英雄様も。はじめまして」
少女は丁寧に頭を下げた。
「私は、パラオの守護者――ルーと申します」
「あ、はじめまして!彩葉です!」
彩葉も慌てて頭を下げる。
「はい、知っていますよ」
ルーは柔らかく微笑む。
「あちらの方々も……有名ですから」
皆の方を見るその瞳には、敬意があった。
「あれ? ねぇ、ルー」
「はい?」
彩葉が少し首を傾げる。
「月光・ラグナ砲で作った、ブラジルの下の月光の湖を作ったのって……」
ルーはあっさり答えた。
「えぇ、私ですが?」
「……」
彩葉は固まった。
「ハハハッ!」
セキが笑う。
「作ったように見えないよな!」
「どういう意味ですか」
ルーは頬をぷくっと膨らませた。
少し子供っぽい仕草。
「ハハハッ……」
セキは笑いながら話題を変えた。
「そうだ、彩葉。次の目的地は決まってるか?」
「いえ……」
彩葉は首を振る。
セキは少しだけ真剣な表情になる。
「だったら――熱帯の国、ブラジルに行くといい」
「ブラジル……どうして?」
「彩葉は、自分の存在理由を探している」
静かに言う。
「知り合いから聞いた」
彩葉は驚いたように目を見開いた。
「それで、ブラジルでも困っているものがいるらしい」
風が吹く。
「彩葉の役目は――人助けだと、私は思う」
セキは彩葉を見る。
「彩葉はどうだ?」
少しの沈黙。
波の音だけが聞こえる。
「私は……」
胸に手を当てる。
「……うん」
小さく頷いた。
「私も、そんな気がしてます」
セキは微笑んだ。
「だったらブラジルはいいぞ」
「自然が多いからな」
「自然はいい」
「心が落ち着き、考えもまとまる」
「はい!」
彩葉の声には、迷いがなかった。
彼女は皆の方を向いた。
「みんな――」
そして、伝えた。
次の目的地を。
ブラジルを。
「任せてなの!」
アビが元気よく言った。
「アビのエアーライドでひとっ飛びなの!」
「うん!お願い!」
皆は手を繋ぐ。
風が集まる。
エアーライドが起動する。
その前に――
「わたしたちは一度、日本に戻る」
甘奈が言った。
「もし、私達と同じ怪異警官に会ったら――よろしく頼む」
「うん!」
彩葉は強く頷く。
「バイバーイ!お姉ちゃんお兄ちゃんたちー!!」
花子が大きく手を振る。
「バイバイ……」
メリーも静かに。
「また、です」
かごめが微笑む。
「じゃあね〜!」
ヒギョウが手を振る。
「またな」
セキが言う。
「また〜!」
レイナが笑う。
風が吹いた。
光が舞う。
そして――
彩葉たちは空へ飛び立った。
南へ。
遠く。
熱帯の大地へ。
自分の存在理由を知るために。
助けを求める者のために。
そして――
未来のために。
彩葉たちの旅は、まだ終わらない。
答えを探すため。
理由を知るため。
彼女たちは向かう。
南米――ブラジルへ。
南米編、開幕。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




