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アルケオン  作者: れんP
オセアニア編

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124/182

蒼海の呼び声、常夏に潜む異形

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

 長く白い雲の国――ニュージーランドに、束の間の平和が訪れてから数日が過ぎていた。


 山々は静かに風を受け、海は穏やかに呼吸を続けている。

 あの戦いがまるで夢だったかのように、世界は再び優しい顔を取り戻していた。


 その日のことだった。


「なぁ、一緒に来てくれないか?」


 不意に、セキが彩葉へ声をかけた。


「え?」


 彩葉(いろは)は目を瞬かせる。


「実はな、仲間から連絡が来てな。敵の怪異が厄介らしいんだ。だから……来てくれないか?」


 その声は、普段の軽さを少しだけ失っていた。


「その怪異って?」


「わからない」


 セキは首を横に振る。


「急に『パラオ』に現れた怪異らしくてな」


 パラオ――

 常夏の島々が浮かぶ、蒼き海の国。


 未知の怪異。


 未知の戦場。


 彩葉はしばらく考え、そして仲間たちの元へ向かった。


「……ということなの」


 彩葉は皆へ事情を伝えた。


 陽菜(ひな)(エイ)(くろ)(しおり)村正(むらまさ)、レナ、マミ、アビ、花火(はなび)、リリア=エジソン、マイ、フェルル、メデューサ、(リー)芳乃(よしの)、ユキ、ベアトリス、ココア=モカ=コフィア――


 誰もが真剣な表情で聞いている。


 沈黙。


 そして彩葉は、まっすぐ顔を上げた。


「はい! 決めました! 行きます!」


 迷いはなかった。


「そうか! ありがとう!」


 セキが嬉しそうに笑った。


「アビが連れてくなの」


 アビが胸を張る。


「うん、お願い」


 陽菜が優しく頷いた。


 その時だった。


「まって……」


 静かな声。


 振り向くと、そこにはフェトゥ=ハーネアネアが立っていた。


「あ~!! もう! さっきはどこ……」


 レイナが駆け寄る。


 だがフェトゥは、真っ直ぐ彩葉を見ていた。


「彩葉……だっけ? 一緒に行ってもいい?」


「いいけど……なんで?」


 彩葉が首を傾げる。


 フェトゥは少しだけ視線を逸らし――


「……気に入ったから……みんなの恩人だから……ダメ?」


 その声は、ほんの少し不安そうだった。


 彩葉は微笑んだ。


「……ううん、いいよ! 行こ!」


「……っ……うん!」


 フェトゥの表情が、わずかに明るくなる。


「私と、甘奈(かんな)は海から行くよ」


 セキが言った。


「うん……花子(はなこ)をお願い」


 甘奈が彩葉を見る。


「しゅっぱーつ!!」


 花子が元気よく手を上げる。


「エアーライド……なの」


 アビが手を広げた。


 空気が震える。


 透明な力が集まり、空間が持ち上がる。


「……三途の川にフェトゥちゃんを連れてく依頼なのに……まぁいいか」


 レイナが小さく呟いた。


 そして――


 彩葉たちは、空へと浮かび上がった。


 青い空。


 白い雲。


 そして、その下に広がる蒼き海。


 島々が、宝石のように散らばっている。


 パラオ――


 常夏の楽園。


 だが、その美しさの裏で、異変が起きていた。


 その頃。


 パラオの、とある海岸。


 波が静かに打ち寄せている。


 だが――


 そこに、“それ”はいた。


 人のようで、人ではない。


 影のようで、影ではない。


 揺れている。


 崩れている。


 そして――


「アンーミョージーーー」


 それは、声を発した。


「アンーミョージーーーー……………………」


 歪んだ音。


 水の中から響くような声。


「ジョーーーーミーーーーシーーー」


 砂が黒く染まる。


 海が、わずかに濁る。


「ジョーーーーミーーーーシーーーー……」


 呼んでいる。


 何かを。


 誰かを。


 そして――


 常夏の楽園に、新たな怪異が目を覚ました。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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