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アルケオン  作者: れんP
オセアニア編

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123/182

星堕ちて、虚無は解ける

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

「……霊魂ごときが、我を撃ち落とすだと?」


 地に叩きつけられた巨躯が、黒い羽根を震わせる。

 ヴォイド・ハーストの無数の瞳が、フェトゥ=ハーネアネアを睨みつけた。


「……私はただ、マオリ族を滅ぼすものを許さないだけ」


 少女は静かに前へ出る。


「お家を犯すものは潰す!」


 その声は小さい。だが、山の空気を震わせるほどの決意があった。


「……あの霊もずいぶん古いな……」

 セキがぼそりと呟く。


「私一人で、やる……あんたたちは帰って」


「え? でも!」

 彩葉(いろは)が声を上げる。


「横取りはメーなのー!」

 花子(はなこ)が頬を膨らませる。


「……」


 フェトゥはわずかに困ったように目を伏せた。


「困惑しているぞ……」

 甘奈(かんな)が冷静に言う。


「……わかった、協力したげる……」


「うん!」

 彩葉が強く頷いた。


「何体束になったところで……雑魚には変わらぬ! 食い殺してやる!!!」


「私もう死んでるけど」

 レイナがさらりと言う。


「わたしも……」

 フェトゥも続ける。


「……うるさい!!! しねぇ!!!! デスフェザー!!」


 無数の黒い羽根が刃となり、嵐のように放たれる。


「霊魂・天の慈雨!」


 レイナの両手から柔らかな光雨が降り注ぐ。


 羽根の斬撃が、光に触れた瞬間、霧のように消えた。


「なぬ!? 我が羽根の斬撃が消えた!?」


「ふっふっふっ! 私は魂を三途の川に帰すのが役目だから! 力を授かったの」


「よくやった! もう一度叩き落とせ!」

 セキが叫ぶ。


「言われなくても……リーダー……ハァッ!」


 甘奈の蛇身が再び唸る。


 鞭のようにしなり、ヴォイド・ハーストを強打。


「グッ!? この程度……」


 再び飛び上がろうとした、その瞬間。


「水圧の楔です!」


 花子の水が足に絡みつき、重く縛る。


「!?」


「フレイムバレット!」

「アドレナリン・スプラッシュ!」


 陽菜(ひな)の炎弾が貫いた穴へ、レナの薬液が流れ込む。


「っ!?!?!?」


 内側からの衝撃。


 ヴォイド・ハーストが暴れ出す。


「石化!……っ!……やっぱり、大きいと大変」


 メデューサの視線で、足だけが石と化す。


「グアァァアア!!! こ、小癪なぁ!」


「ストラップ・ニードルバインド!」

「ダークバインド!」

「私も、できるかも……神力の鎖……できた!」


 三方向からの拘束。


 (エイ)の神の鎖が絡みついた瞬間、ヴォイド・ハーストの動きが明らかに鈍る。


「キィーーーーイ!?!?!?」


 背後から、ユキのMG42が唸りを上げる。


「今だ! 翼を狙え!!」

 セキが叫ぶ。


「アサシン・ブレンドスラッシュ!」

「トリニティスラッシュ……」

「陽光・陽日輪!!」


 斬撃と光が翼を切り裂く。


「ぐぁあぁ!? つ、翼がぁ!?」


「これほど一方的とは……敵が可哀想になってきた」

 (リー)芳乃(よしの)が苦笑する。


「うむ……だが、あやつは掟を破って人間を襲ったようじゃし、討伐か、監視対象になるだけじゃ……」

 (しおり)が淡々と告げる。


「でも、監視対象になっても、多分暴れる……」

 マミが呟く。


「うん……」

 リリアも頷く。


「ふぇぇぇ……掟、怖いです」

 マイが震える。


「……」


 フェルルは黙って戦況を見つめている。


 そして――


「……あリがとう……スターメテオクラッシュ……」


 フェトゥが空へ手を掲げた。


 空気が凍る。


 次の瞬間。


 幾つもの光の星が降り注ぐ。


 轟音。


「っ! がぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?……」


 光が収まった時、黒い羽根は崩れ始めていた。


「…………?」


 ヴォイド・ハーストの中心から、淡い光が滲み出る。


 そして――


「……解放……してくれて……ありがとう……」


 微かな声。


 黒はほどけ、無数の光の鳥となって空へ舞い上がった。


 最後に、ひときわ澄んだ鳴き声が響く。


「キィーーーーイ……」


 それは、もはや怨嗟ではなかった。


 静寂。


「……」


 彩葉は、空を見上げた。


「まぁ、想霊ってのはそういう感情が合わさってできたものもいるからな」

 セキが肩をすくめる。


「指示してただけのやつが何を言ってんだか」

 村正が呆れる。


「な、何!? 指示だって立派な仕事だろう?」


「はははっ!」

 花子が笑う。


「……」

 甘奈は静かに空を見る。


「……」


 フェトゥは背を向けた。


「ちょっと!? どこ行くの!?」

 レイナが慌てる。


「私はもう役目を終えたから、見回りしてくるの」


「彷徨ってちゃ私が怒られるの~!!!」


「あなたも彷徨ってるじゃないですか」


「私は仕事~!」


 騒がしいやり取りの中。


 彩葉は、消えていった光の鳥たちを見つめ続けていた。


 悪だったのか。

 それとも、救いを求めていただけだったのか。


 長く白い雲が、ゆっくりと流れていく。


 戦いは終わった。


 だが、世界の深淵は、まだ静かに口を開けているのだった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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