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アルケオン  作者: れんP
日本編

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12/34

桜菊祭・前編

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

夜の帳が下りた東京の空の下、無数の灯りが揺れていた。

 提灯の朱、屋台の白熱灯、行き交う人々の笑顔――それらが溶け合い、街全体がひとつの生き物のように脈打っている。


「わぁ……!」


 彩葉(いろは)は思わず声を上げた。


「人がいっぱい……あの街みたい。屋台も、いっぱいあるよ!」


「……!」


「おぉ〜!」


 (エイ)(くろ)の目は、宝石のようにきらきらと輝いていた。


「ふふっ。みんな、祭りは逃げないから、落ち着いてね」


 陽菜(ひな)はそう言いながらも、その表情はどこか楽しそうだった。


「まったく……お主らは子供じゃのう」


 (しおり)はくすりと笑い、懐から札束を取り出す。


「金はたくさんある! 好きな屋台に行くと良い!」


「おぉ〜……!」


「良いのか!?」


 喰は驚き、影は信じられないというように栞を見上げる。


「どこ行こうかな〜」


 彩葉は屋台の列を見渡し、胸を躍らせた。


「……少しは遠慮したらどうだい」


 陽菜が苦笑いで言うと、栞は肩をすくめる。


「まぁよいではないか。子供を見る親のようで、妾は楽しいぞ」


「栞がいいなら、まぁいいけど」


 こうして一行は、祭りの人波へと溶け込んでいった。


 ――たこ焼きの屋台では、喰が熱々の玉を頬張りながら涙を浮かべる。


「熱っ!? ……でも、うめぇ!!」


 ――金魚すくいでは、影が真剣な顔でポイを水面に沈め、小さな金魚をそっとすくい上げる。


「……とれ……た……」


 ――りんご飴の屋台では、彩葉が大きな赤い飴を両手で持ち、嬉しそうにかじる。


「甘くて……きれい……」


 ――射的では、陽菜が軽く構えただけで景品を次々と落とし、周囲からどよめきが起こる。


「さすがだね……」


 栞はそんな様子を少し離れたところから眺め、満足そうに目を細めていた。


「人と守護者と妖が、同じ場所で笑っておる……

 これが、この祭りの本当の意味なのじゃろうな」


 その言葉を、誰も否定しなかった。


 ――だが。


 視点はゆっくりと上空へ移る。

 夜空のさらに上、祭りの光が届かない場所。


 そこには、歪んだ感情が渦巻いていた。


「人間との……友好の祭りだと!?」


 低く、怒りに満ちた声が闇を震わせる。


「ふざけるな……!」


 黒い気配が膨れ上がる。


「俺は……俺達は……壊してやる!」


 眼下に広がる、平和で無邪気な光の海を睨みつけながら、声は叫んだ。


「こんな……腐った世界を!!!」


 その憎悪は、まだ誰にも気づかれていない。

 しかし確実に、桜菊祭の夜へと近づいていた――。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

桜菊祭・前編では、彩葉たちが東京の祭りの賑わいを全身で楽しむ様子と、人・守護者・妖が同じ時間を共有する「平和な瞬間」を描きました。

その一方で、空の上では確実に不穏な気配が動き始めています。


この祭りが「友好」を象徴するものであるからこそ、それを憎む存在の感情もまた強く、物語はここから大きく動き出します。

彩葉が見つめる世界は、守りたいものに満ちているのか、それとも――。


後編は本日12時に投稿予定です!

ぜひ引き続き、彩葉たちの物語を見届けてください。

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