虚無を裂く万雷の一撃
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
太古の大地に、角笛が響き渡る。
乾いた風が止まり、空気が震えた。
それは戦いの始まりを告げる不吉な音。
「ヒヒヒッ! さぁ! 踊り狂え!!!」
エンプティが両手を広げ、角笛を吹き鳴らす。
「ブォーーーーーン!!!」
音が空間を歪めた。
「何もないところから獣がでてきたなの!」
アビが叫ぶ。
虚空が裂けるように、無数の影が現れる。角を持つもの、牙を剥くもの、異形の四足獣が地面を踏み鳴らした。
「石化の術!!!」
メデューサの瞳が妖しく輝く。
「!?!?!?」
獣達は一瞬で灰色に染まり、石像と化す群れ。
「MG42! GO!」
ユキが機関銃を構える。
ドドドドドドドド!!!
轟音とともに弾丸が石像を粉砕していく。砕けた石片が砂塵に混ざり、戦場は一層混沌を極めた。
「お遊びは終わり」
アケイシャが地を蹴り、エンプティへ一直線に迫る。
「ヒヒッ! 私に触れれるかな?」
「っ!?」
彼女の蹴りは、確かに命中するはずだった。だが、触れた瞬間、手応えが霧のように消える。
「大丈夫ですか!」
彩葉が駆け寄る。
「問題ない……あれは、」
アケイシャの視線の先、大地が裂ける。
「まるでティラノサウルスじゃな」
栞が呟く。
土煙の中から現れたのは、巨大な顎と鋭い牙を持つ怪物。ティラノサウルスのような獣が咆哮を上げる。
「がぉぉぉぉぉぉ!!!!」
音圧だけで空気が震えた。
「おそいなの! ブレイブクロー!! なの!」
アビが跳び上がり、鋭い爪撃を叩き込む。
「……?」
「聞いてないなの……っ!」
硬すぎる皮膚。次の瞬間、巨大な尾が唸りを上げる。
アビは弾き飛ばされた。
「アビちゃん!」
彩葉の叫び。
「大丈夫……なの……」
よろめきながら立ち上がるアビ。
「これは、大変になりそうだ」
李=芳乃が低く言う。
「だったら! 本命・メガトン八尺玉!」
花火が巨大な火球を放つ。
「籠球・シュート!!」
マミの一撃が続く。
ドォオォオン!!!
爆炎が怪物を包む。
「ぎゅるるるるる!!???」
だが、炎の中からなお立ち上がる巨体。
「ノイズバインド」
マイの音の鎖が絡みつく。
「!?……がぉぉぉぉぉぉ!!!」
拘束を力任せに引き裂く。
「吸音・アコースティック・デス・サイレント!!」
リリア=エジソンが咆哮の音を吸収し、凝縮する。
閃光。
レーザーが放たれ、怪物の胸を貫く。
「がぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!???……ぐるるる……」
「嘘!?」
まだ倒れない。
「だったら! ニードルミサイル!」
レナの無数の針。
「エアリアルカッター……なの」
アビが空を裂く刃を放つ。
「月光・三日月!!」
村正の斬撃が弧を描く。
「セイクリッドバレット!」
陽菜の聖なる弾丸が突き刺さる。
怪物は膝をつく。
「ヒヒッ、やるねぇ」
エンプティが愉快そうに笑う。
アケイシャは彩葉を見た。
「彩葉さん、最後の一撃、ともにいただけますか?」
「はい!」
「では、援護しますわ」
ココア=モカ=コフィアが微笑む。
「足止めをしよう」
李=芳乃。
「うむ」
栞。
「……がんばる」
影。
「おう!」
喰。
「うん……」
ベアトリス。
「行きますわ! カフェイン・ハイテンション!」
仲間の身体が軽くなる。
「神力・大江ノ力!」
影の加護が重なる。
「身体が軽くなった……これなら、暗殺・ライトニングシャドーステップ・トリニティスラッシュ」
ベアトリスが閃光のように駆け、エンプティを斬る。
「消えっ!……!? グァァ!?」
「逃さねぇ! ダークバレット」
喰の一撃。
「グッ!?」
「死聖拳・ホーリデッド!!!」
李=芳乃の拳が炸裂する。
「がぁあぁあぁ!???」
エンプティの身体が揺らぐ。
「今です! 守護蹴・天地万雷!!!」
アケイシャが跳躍する。
天と地を繋ぐような蹴撃。
「ショルダーストラップブレード!!!」
彩葉が渾身の一閃を重ねる。
光と雷鳴が交錯する。
「っ!? グァァァァァァ!!!!……こんなところでぇ〜……」
エンプティの身体が裂け、黒い霧へと崩れ落ちる。
虚無の笑い声が、風に溶けて消えた。
やがて静寂が戻る。
アケイシャは息を整え、周囲を見渡した。
「終わりのようです……」
彩葉は剣を下ろし、空を見上げる。
「……終わった……」
太古の大地に、角笛の音はもう響かなかった。
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次回もお楽しみに




