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アルケオン  作者: れんP
オセアニア編

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116/182

鳴り響く角笛と想いの影

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

 太古の自然が息づく大地に巻き起こっていた砂嵐は、いつの間にかおさまっていた。

 空は高く澄み、乾いた風が草原を渡っていく。


 いろはたちはしばらく歩き続け、やがて奇妙な足跡が残る場所へとたどり着いた。


「なぁ、あのサイみたいな獣はなんなんだ?」


 村正(むらまさ)が口を開く。

 先ほどアケイシャが蹴りで倒した巨大な獣のことだ。


「わかりません」

 アケイシャは首を横に振る。

「最近増えていたので……ですが、妖獣の類かと」


「妖獣……」

 (しおり)が顎に手を当てる。

「たしかに、妖怪と獣の間のような感じじゃったな」


「あれが暴れているのですか?」

 陽菜(ひな)が問う。


「えぇ。人間にも被害が……」

 アケイシャは静かに答える。

「怪異警官の人たちは、ニュージーランドの方でなんとかしてくれてるみたいです」


「怪異警官が来てるのか?」

 村正が目を細める。


「えぇ、三人ですが」

 アケイシャは続ける。

「ここを一通り調べたあと、ニュージーランドへ渡りました。あちらの方が深刻ですので、私が頼んだのです。……まぁ、元凶はわからないのですが」


「なにか手がかりは?」

 (リー)芳乃(よしの)が冷静に尋ねる。


「いえ、ありません。不思議な音が、不定期に流れることくらいでしょうか?」


「音?」

 ユキが反応する。


「えぇ。楽器を吹いているような――」


 そのとき。


 ブォーーーーン……

 ブォーーーーーン……


 低く、遠く、けれど大地を震わせるような音が響いた。


「この音です!」

 アケイシャが即座に言う。


「不思議な音……」

 彩葉(いろは)が目を閉じる。


「……この音……」

 ユキの声がわずかに震えた。


「ユキちゃんも感じた?」

 リリア=エジソンが小声で問う。


「はい」


「やっぱりそうですよね」

 マイも頷く。


「なにか、わかったのですか?」

 アケイシャが振り返る。


 リリア=エジソンが静かに告げる。


「これ、想霊が出してる音」


「え?」

 メデューサが目を見開く。

「想霊って、あの?」


「うん……」

 ユキが小さく頷く。


 アケイシャはわずかに息を呑んだ。


「……想霊。ですが、このようなことを起こす想霊は記録にない……新種?」


「だとしたら」

 ベアトリスが眉をひそめる。

「どんな想いから生まれたのかわからない」


「どうするなの?」

 アビが彩葉を見る。


「その音、どこから来てるかわかる?」

 彩葉が三人に問う。


「はい」

 マイが即答する。


「うん」

 リリア=エジソンも。


「わかるよ」

 ユキの瞳が、遠くを見据える。


 彩葉は強く頷いた。


「じゃあ、その音を突き止めましょう!」


「うん! 行こう!」

 花火(はなび)が拳を握る。


「想霊か……」

 フェルルが慎重な声を出す。

「魔法少女たちも、たまに苦戦している敵だ。どんな力があるかわからない。慎重に行こう」


「うん!」

 彩葉が言う。


「うん、頑張る」

 (エイ)が言う。


「任せろ!」

 (くろ)が言う。


「おまかせくださいですわ」

 ココア=モカ=コフィアが言う。


 他の仲間たちもうなずく。


「みなさん、あリがとうございます」

 アケイシャは深く頭を下げた。


 そして一行は、妖獣がうずまく草原の奥へと進んでいく。


 ――その頃。


 赤茶けた岩場の影。


 そこに、角笛のようなものを手にした“何か”が立っていた。


「もっとだ……もっと……」


 くぐもった声が、ひび割れた大地に溶ける。


「……君たちの虚しさを教えてくれ! ヒヒッ」


 謎の存在は、再び角笛を口元へ運ぶ。


 ブォーーーーーン……


 低く、重く、

 想いを歪ませる音が、草原へと解き放たれた。


 その音に呼応するように、遠くで妖獣の咆哮が重なる。


 戦いは、すぐそこまで迫っていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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