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アルケオン  作者: れんP
オセアニア編

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115/182

太古の脚、守護者の蹴撃

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

 しばらくのあいだ、太古の自然が息づく大地が続いていた。

 赤茶けた土、どこまでも広がる草原、奇妙な形の岩山。

 それらすべてが、この地に流れる原初の力を思い起こさせる。


「ほんと広いね〜」

 彩葉(いろは)は思わず感嘆の声を漏らす。


「まぁ、広大ですから」

 アケイシャは淡々と答え、前方を指した。

「こっちです」


 一行が歩みを進めた、そのとき――

 風の流れが、わずかに歪んだ。


「……来ます」

 アケイシャが足を止める。


「え?」

 レナが周囲を見回した瞬間、大地が震えた。


 ズズズ……ッ


 地面の割れ目から、異形の影が姿を現す。

 岩と獣が混ざり合ったような魔物――赤い土をまとった《荒土獣》。

 さらにその背後から、小型の獣型個体が次々と現れ、数は十を超えていた。


「敵なの!」

 アビが身構える。


「数が多いね」

 リリア=エジソンが苦笑する。


「彩葉」

 アケイシャは振り返らずに言った。

「皆さんは、下がっていてください」


「え、でも――」

 彩葉が言いかけた、その時。


「これは、私の役目です」


 次の瞬間、アケイシャの足が地面を踏みしめた。


 ドンッ!!


 爆発するような踏み込み。

 その反動だけで、周囲の草がなぎ倒される。


「――――ッ!」


 最初に突進してきた荒土獣に、アケイシャは回し蹴りを放った。


 ゴォンッ!!!!


 音が、重い。

 岩の鎧ごと砕かれた魔物は、数十メートル先まで吹き飛び、地面に叩きつけられて動かなくなった。


「……っ!?」


 仲間たちが言葉を失う間もなく、次の敵が跳びかかる。


 アケイシャは一歩も下がらない。


 ――ヒュッ!


 鋭い前蹴り。

 貫くような蹴撃が、敵の胴体を一直線に打ち抜いた。


 ドシュン!!


 衝撃波が走り、魔物は空中で粉砕される。


「速……!」

 村正(むらまさ)が目を見開く。


 左右から同時に襲いかかる三体。


「ふっ……」


 アケイシャは軽く跳び、空中で体をひねる。


 ――連続回転蹴り。


 一蹴、一蹴、一蹴。


 まるで風が舞うかのような動きで、三体すべての首元を正確に捉え、同時に地面へ叩き落とした。


 残った魔物たちが怯み、後退する。


「逃げようとしてる?」

 花火(はなび)が呟く。


「逃しません」


 アケイシャの瞳が鋭く光る。


 最後の一撃。

 彼女は助走もなく地を蹴り、長い脚を大きく振り上げた。


「――――守護蹴・原初断!」


 振り下ろされた踵が地面を叩いた瞬間、衝撃が波となって広がる。


 ドォォォン!!!!!


 地鳴りと共に衝撃波が走り、残っていたすべての魔物がまとめて吹き飛ばされ、岩と土の彼方へ消えていった。


 静寂。


 風だけが、何事もなかったかのように草原を撫でていく。


「……」

 彩葉は、ただ立ち尽くしていた。


「す、すごい……」


「まぁ、このくらいは……」

 アケイシャは何事もなかったようにローブを整える。

「では、案内を続けますね」


 そう言って、再び歩き出す。


 彩葉たちは、その背中を見つめながら確信していた。


 ――この大地の守護者は、

 ――言葉よりも、脚で語る存在なのだと。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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