太古の脚、守護者の蹴撃
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
しばらくのあいだ、太古の自然が息づく大地が続いていた。
赤茶けた土、どこまでも広がる草原、奇妙な形の岩山。
それらすべてが、この地に流れる原初の力を思い起こさせる。
「ほんと広いね〜」
彩葉は思わず感嘆の声を漏らす。
「まぁ、広大ですから」
アケイシャは淡々と答え、前方を指した。
「こっちです」
一行が歩みを進めた、そのとき――
風の流れが、わずかに歪んだ。
「……来ます」
アケイシャが足を止める。
「え?」
レナが周囲を見回した瞬間、大地が震えた。
ズズズ……ッ
地面の割れ目から、異形の影が姿を現す。
岩と獣が混ざり合ったような魔物――赤い土をまとった《荒土獣》。
さらにその背後から、小型の獣型個体が次々と現れ、数は十を超えていた。
「敵なの!」
アビが身構える。
「数が多いね」
リリア=エジソンが苦笑する。
「彩葉」
アケイシャは振り返らずに言った。
「皆さんは、下がっていてください」
「え、でも――」
彩葉が言いかけた、その時。
「これは、私の役目です」
次の瞬間、アケイシャの足が地面を踏みしめた。
ドンッ!!
爆発するような踏み込み。
その反動だけで、周囲の草がなぎ倒される。
「――――ッ!」
最初に突進してきた荒土獣に、アケイシャは回し蹴りを放った。
ゴォンッ!!!!
音が、重い。
岩の鎧ごと砕かれた魔物は、数十メートル先まで吹き飛び、地面に叩きつけられて動かなくなった。
「……っ!?」
仲間たちが言葉を失う間もなく、次の敵が跳びかかる。
アケイシャは一歩も下がらない。
――ヒュッ!
鋭い前蹴り。
貫くような蹴撃が、敵の胴体を一直線に打ち抜いた。
ドシュン!!
衝撃波が走り、魔物は空中で粉砕される。
「速……!」
村正が目を見開く。
左右から同時に襲いかかる三体。
「ふっ……」
アケイシャは軽く跳び、空中で体をひねる。
――連続回転蹴り。
一蹴、一蹴、一蹴。
まるで風が舞うかのような動きで、三体すべての首元を正確に捉え、同時に地面へ叩き落とした。
残った魔物たちが怯み、後退する。
「逃げようとしてる?」
花火が呟く。
「逃しません」
アケイシャの瞳が鋭く光る。
最後の一撃。
彼女は助走もなく地を蹴り、長い脚を大きく振り上げた。
「――――守護蹴・原初断!」
振り下ろされた踵が地面を叩いた瞬間、衝撃が波となって広がる。
ドォォォン!!!!!
地鳴りと共に衝撃波が走り、残っていたすべての魔物がまとめて吹き飛ばされ、岩と土の彼方へ消えていった。
静寂。
風だけが、何事もなかったかのように草原を撫でていく。
「……」
彩葉は、ただ立ち尽くしていた。
「す、すごい……」
「まぁ、このくらいは……」
アケイシャは何事もなかったようにローブを整える。
「では、案内を続けますね」
そう言って、再び歩き出す。
彩葉たちは、その背中を見つめながら確信していた。
――この大地の守護者は、
――言葉よりも、脚で語る存在なのだと。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




