潮風の港、海賊守護者との再会
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
マラリアと別れを告げたあと、彩葉たちはアフリカ東部を抜け、インド洋に面した地――ソマリアの港を目指して進んだ。
灼熱の大地は次第に色を変え、乾いた風には潮の匂いが混じりはじめる。
遠くから聞こえてくる波音と、かすかに響く鐘のような音が、彼らが海へ近づいていることを教えていた。
「……ここが、ソマリアの港……」
彩葉は目の前に広がる光景を見て、思わず息をのむ。
広い港湾には、大小さまざまな船がひしめき合っていた。
木造の古い船、鋼鉄で補強された大型船、明らかに戦闘を想定した異形の艦――。
人々の掛け声、荷を運ぶ音、帆が風を受けてはためく音が、絶え間なく行き交っている。
「船がいっぱい!」
レナは目を輝かせ、きょろきょろと周囲を見回した。
「ここは交易も多いし、守護者絡みの船も集まりやすい」
ムトゥリヴは港を見渡しながら言う。
「たしか……この辺だったはず……」
そのときだった。
「お〜!お前らじゃないか!」
港の喧騒を突き抜けるような、豪快な声が響いた。
「お久しぶりですね」
落ち着いた、穏やかな声がそれに続く。
「……?」
彩葉たちが声のした方を見ると、ひときわ目を引く二人の少女が立っていた。
一人は、自身の身体よりもはるかに大きな錨を肩に担いだ少女。
日に焼けた肌に屈託のない笑顔、荒海にも負けないであろうたくましい雰囲気をまとっている。
もう一人は、神官のような装いで、錫杖を手にした少女。
柔らかな眼差しと静かな佇まいは、喧騒の中にあっても不思議と心を落ち着かせた。
「あ!」
ロゼ・シュジャーがぱっと表情を明るくする。
「バローシン!カラー!」
「よう!」
錨を担いだ少女――バローシンは豪快に笑った。
「ロゼにムトゥリヴじゃないか!そっちの方たちは、噂の英雄様方か!はじめましてだな!」
「はじめまして、こんにちは」
錫杖を持つ少女――カラーは、丁寧に頭を下げた。
潮風が吹き抜け、船の帆が大きく揺れる。
ソマリアの港での再会は、次なる旅――海を越える大きな一歩の始まりを告げていた。
彩葉たちはまだ知らない。
この出会いが、彼らを想像以上に広く、深い海の物語へと導くことを。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




