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アルケオン  作者: れんP
アフリカ編

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見えざる病と妖艶の花、月下の邂逅

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

 彩葉(いろは)たちは、月明かりに照らされた灼熱の大地を、息をひそめて進んでいた。

 そこかしこに徘徊する森緑人――洗脳され、植物に支配された存在を避けながら、一行は慎重に足を運ぶ。


 踏みしめる砂は乾ききり、わずかな音すら遠くまで響きそうだった。


「音は……この辺……」

 ユキが小さく指差す。


 その先、月光の下に――ふわりと浮かぶ影があった。


「……あれじゃない?」

 彩葉が目を凝らす。


 そこにいたのは、淡いピンク色の髪を揺らし、宙に浮かぶ少女。

 足は地に触れず、まるで夜気に溶け込むように漂っている。


「……」

 少女は黙したまま、何かを放ち続けていた。


「ポン……ポン……フワワ……」

「ポン……ポン……フワワ……」


 規則的で、しかし生理的な不安を誘う不思議な音。


「レナ、あの子の周辺から出てる!」

 レナは目を見開く。


 その瞬間、少女はびくりと身を震わせた。


「ひっ!?」

 驚いたように声を上げ、後ずさる。


「驚かしてすまない」

 ムトゥリヴが一歩前に出た。

「久しぶりだね、マラリア」


「……あ、あなたでしたか……!?」

 少女――マラリアは、はっと息を呑んだ。


 だが次の瞬間、ふわりと姿が揺らぎ、彼女は物陰へと隠れてしまう。


「?」

 リリア=エジソンが首をかしげる。


「大丈夫ですわよ、マラリアちゃん」

 ココア=モカ=コフィアが、優しく声をかけた。

「あなたの感染能力は、任意発動ですわよ?」


 しばしの沈黙の後、弱々しい声が返ってくる。


「そ、そうだけど……自然界に、絶対はない……から……」


「私もね」

 メデューサが静かに言った。

「制御するまでは怖かった。だから、その気持ち、わかる」


「こんにちわなの」

 アビが無邪気に近づいた。


「ひゃぁ!? なんで近づくんですか〜!」

 マラリアは悲鳴を上げる。


「はなれちゃったなの」

 アビはすぐに距離を取った。


「大丈夫だって、マラリア」

 ロゼ・シュジャーが穏やかに微笑む。

「力を貸してほしいの。断界同盟の事件は知ってるよね? それを手伝ってほしいの」


「わ、私が……ですか?」

 マラリアは不安げに目を伏せる。


「うん」

 ロゼは迷いなく頷いた。


「…………それは、“招集”でしょうか?」

 マラリアの声は震えていた。


「う〜ん……」

 ロゼは少し考えてから答える。

「強制じゃないから、招集じゃないかな。だから、第一次神怪世界大戦の時みたいに、無理やり戦わなくていいよ?」


「……招集じゃない……」

 マラリアはしばらく沈黙し、やがてぎゅっと胸元を握りしめた。

「……でも、私……大好きな者が消えていくのは、いや……」


 顔を上げ、涙を浮かべながら叫ぶ。


「私! 行きます!!」


「うん! ありがとう!」

 ロゼ・シュジャーの声が、夜に響く。


「嬉しい……」

 (エイ)が小さく呟いた。


「あぁ!」

 (くろ)も力強く頷く。


「これで仲間ゲットですね」

 ロウが明るく言う。


「そうだね」

 フェルルも微笑む。


「うむ、強力な仲間じゃ」

 (しおり)が満足そうに頷いた。


「そうだな」

 (リー)芳乃(よしの)も同意する。


 ――その時。


「カカカッ……それは良かったなぁ〜!」

 不気味な笑い声が、闇を裂いた。

「……英雄よ?」


「!?」

 陽菜(ひな)が身構える。


「あなたは!」

 村正(むらまさ)が歯を食いしばる。


「もしかして……」

 ムトゥリヴが低く呟く。


「うん」

 その視線の先に立つ女を見据え、断言する。

「断界同盟幹部、《魔界に咲く妖艶の花》――カトレア・ノワール」


「カカカッ!」

 カトレア・ノワールは妖しく笑った。

「私をご存知とは、さすがはアフリカ序列三位。それに二位……英雄の皆さまも勢ぞろい……」


 月光に照らされたその姿は、美しくも禍々しい。


「……ここで死んでもらいます」


「ううん!」

 マイが一歩前に出る。

「死ぬのはあなた! みんなの音を奪った……命の音を返して!」


「そうだそうだ!」

 花火(はなび)が声を上げる。


「幸せを奪うもの、許さない」

 マミの瞳は真っ直ぐだった。


「カカカッ! 面白い!」

 カトレアは腕を広げる。

「かかってくるがいい!!!」


「……ここで止める!」

 ベアトリスが静かに宣言する。


「みなさん、頑張りましょう!」

 彩葉が拳を握る。


「ふぇぇぇ……」

 マラリアは涙目で震えながら、

「もう戦うなんて聞いてないよぉ〜……」


 月下のケニア。

 新たな仲間と、宿敵との邂逅。


 見えざる病と妖艶の花が交錯する夜、

 運命は、ついに決戦へと大きく動き出した。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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