灼熱の大地に香るもの、出会いは陽光の中で
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
灼熱の大地には、容赦なく太陽の光が降り注いでいた。
空はどこまでも高く、雲は薄く流れ、風は熱を含みながらも乾いている。その中に、不思議と香ばしい匂いが混じっていた。
彩葉とベアトリスは、路地を抜け、茶色い髪の少女と向かい合ってい
「まぁ……」
少女は両手を胸の前で重ね、目を輝かせる。
「あの英雄様方なのですわね! お会いできてとても嬉しいですわ!」
距離を詰めてくるその勢いに、彩葉は思わず一歩引いた。
「う、うん……あの、近いよ……」
「あら」
少女は我に返ったように一歩下がり、上品に微笑む。
「失礼いたしましたわ」
ベアトリスは少女から目を離さず、静かに彩葉の耳元で囁いた。
「彩葉……この子、すごい実力」
「え?」
彩葉は思わず声を漏らす。
「あの男たちに囲まれていた時……」
ベアトリスは視線を逸らさず続けた。
「ナイフ、取り出してた」
「え!?」
彩葉の背筋に、ひやりとしたものが走る。
「うん」
ベアトリスは小さく頷く。
「私も直前まで気づかなかった。殺気を隠すのが上手い……かなりの実力」
彩葉はごくりと喉を鳴らし、改めて少女を見る。
「えっと……ココアちゃん?」
名を呼ばれた少女は、少しだけ困ったように微笑んだ。
「あら……」
目を伏せ、すぐに顔を上げる。
「バレていましたのね。そうですわ、私……こう見えて、アルビノ狩りを狩っていますの」
「へ、へえ……」
彩葉は曖昧に笑う。
「アルビノ狩り?」
ベアトリスが問いかける。
「アルビノとは、色素の薄い方々のことですわ」
ココア=モカ=コフィアは静かに語り出す。
「この国では……今でも、アルビノが呪術に使われると信じられていますの。そのために、狩る人間がいる」
香ばしい匂いの中に、微かな苦味が混じった。
「そういった人間を狩るのが」
彼女はまっすぐに二人を見つめる。
「私の役目ですの」
「……そうなんだ」
彩葉は息を整えながら言った。
「あ、ロゼ・シュジャーも、アルビノ狩りを狩ってるって聞いたよ」
「まぁ」
ココア=モカ=コフィアは嬉しそうに目を細める。
「シュジャーをご存知なのですわね。今は、どちらに?」
「あ、今は別行動してて」
「まぁ、そうなのですわね」
少し考え込むように首を傾げる。
「……よろしければ、連れて行ってくださいます?」
「うん、いいよ」
彩葉は即答した。
「怪しい人じゃなさそう」
ベアトリスも頷く。
「あリがとうございますの」
ココア=モカ=コフィアは丁寧に頭を下げた。
こうして三人は、集合場所である街の広場へと向かった。
広場には、すでに仲間たちが集まり始めていた。
「あ、来た」
村正が手を振る。
「お〜い、こっち〜」
ロゼ・シュジャーが気軽に声を上げ、ふと隣の少女に目を留める。
「……あれ? ココアちゃん」
「ふふっ」
ココア=モカ=コフィアは優雅に微笑む。
「お久しぶりですわね」
「コーヒーノキの精霊か」
ムトゥリヴは興味深そうに眺める。
「畑にいないのは、少し不思議だ」
「お嬢様みたい!」
花火が目を輝かせる。
「うん!」
レナも元気よく頷いた。
「新しい同行者?」
マミが首を傾げる。
「……」
マイは無言のまま、じっと観察している。
「わぁ〜」
リリア=エジソンは純粋に感嘆の声を上げた。
「一番、綺麗」
メデューサがぽつりと呟く。
「そうだね」
「うん」
フェルルと影も同意する。
「精霊は初めて見るぜぇ」
喰が言う。
「特定の場所に留まる種族か……」
李=芳乃は腕を組む。
「珍しい」
「ふむ」
栞は静かに頷いた。
「彩葉、ベアトリス」
陽菜が二人を見る。
「なにかあったな?」
「うん、えっとね」
彩葉は頷き、路地で起きた出来事を皆に話した。
話し終えたその時、雲の切れ間から陽光が差し込んだ。
強く、まっすぐな光が広場を照らし、新たな出会いを祝福するかのようだった。
灼熱の大地に、香ばしい匂いとともに。
また一つ、彩葉たちの旅に、新しい縁が加わった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




