表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルケオン  作者: れんP
日本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/34

生まれたばかりの心

この世界には、人の目に見える不思議な存在がいる。


それは神でも、幽霊でも、幻想でもない。

人の想いから生まれ、人と同じ世界に立つ存在――

守護者アルケオン


彼らは守るために生まれ、

同時に、戦う運命を背負っている。


なぜ守護者は生まれるのか。

なぜ想霊は人を蝕むのか。



これは、

忘れられた物から生まれた一人の守護者が、

世界と出会い、運命と向き合っていく物語。


まだ何も知らない、

小さな「コア」から始まる――

確かな冒険の記録である。

2020年。

この世界には、人の目に見える不思議な存在がいる。


それは幽霊でも、幻覚でもない。

確かにそこに存在し、人と同じ空気を吸い、同じ世界を歩く存在――

**守護者アルケオン**。


守護者とは、コアを持つ人型の精神生命体である。

攻撃を仕掛けなければ基本的に無害であり、中立。

だが種類によっては人間を助け、時に人の歴史に介入する。


守護者が消滅する条件はただ一つ。

**コアの破壊**。


その核は、最初から人の姿をしているわけではない。

目に見えぬ小さな存在として生まれ、

無機物や有機物――

忘れられた物、長く使われた道具、強い想いを宿した存在に張り付き、

そのデータを吸収しながら成長し、

やがて人の形を得る。


守護者に勝てる存在は、守護者のみ。

そう言われるほどに、彼らは強い。


そして――

守護者が討つべき、もう一つの存在がいる。


**想霊そうれい**。


黒い靄のような姿を持ち、

人や守護者に取り付き、悪意のままに害をなす存在。

多くは意思を持たず、本能だけで動く。


だが、特定の強い感情から生まれ、

意思と形を持つ個体も存在する。

それらは**感情体**と呼ばれ、

人の怒り、憎しみ、悲しみ、絶望を糧に成長する。


守護者と想霊は、決して相容れない。

守護者にとって、想霊を倒すことは使命であり、宿命だった。


神、天使、悪魔、妖怪、怪異、妖精、精霊。

この世界にはそれらすべてが存在している。


だが――

これは、そんな世界の片隅で始まる、

**とある守護者の冒険の物語**。


---


静まり返った廃墟の奥。

崩れた天井から差し込む光が、埃を照らしていた。


かつて人で賑わっていたであろうその場所は、

今や忘れ去られ、時間だけが積もっている。


その瓦礫の隙間――

誰にも気づかれぬ場所で、

小さな“何か”が、確かに存在していた。


目には見えない。

形もない。

だが、確かにそこにある。


**コア**。


それは長い時間、

誰にも拾われず、

誰にも必要とされず、

放置された一つのバッグに張り付いていた。


破れかけた布。

色あせた持ち手。

中には、もう使われない思い出だけが残っている。


核はそれらを、静かに吸収していく。


持ち主の記憶。

抱えられた時間。

置き去りにされた想い。


――守りたい。

――失いたくない。


そんな感情の残滓が、

核に形を与えた。


やがて、廃墟の空気が揺らぐ。


光が集まり、

人の輪郭を描き、

小さな足音が床に落ちる。


そして――

少女は、そこに立っていた。


「……ここは……?」


おそるおそる、声を出す。

それはまだ、世界を知らない声だった。


少女は自分の手を見る。

確かに“触れる”感覚がある。

足が床についている。

風が肌をなでる。


「……私……?」


名前も、役割も、よく分からない。

けれど、自分が“生まれた”ことだけは理解できた。


少女は瓦礫を乗り越え、

廃墟の外へと歩き出す。


崩れた壁を抜けると、

眩しいほどの光が視界を満たした。


「……ここが……外?」


青い空。

風に揺れる草。

遠くに聞こえる街の音。


すべてが初めてで、

すべてが新しかった。


――そのとき。


サザッ。


草の茂みが、不自然に揺れた。


「……?」


少女が振り向いた瞬間、

黒い靄が、地面から這い出る。


形は定まらず、

ただ“悪意”だけがそこにある。


想霊。


それは少女を“存在”として認識し、

獲物を見るように、にじり寄ってきた。


「……な、なに……?」


足がすくむ。

逃げ方も、戦い方も分からない。


想霊は距離を詰め――


――パァンッ!


乾いた銃声が、空気を裂いた。


次の瞬間、

想霊は衝撃に弾かれ、黒い靄を散らして消滅する。


「……え?」


少女が呆然とする中、

銃を構えた一人の少女が姿を現した。


ショートヘア。

軽装。

その手には、古風な火縄銃。


「君、大丈夫?」


柔らかく、だが落ち着いた声。


「……あなたは……」


問いかける少女に、

銃を下ろした少女は、にっと笑った。


「僕は陽菜。

君と同じ――守護者だよ」


「……守護者?」


聞き慣れない言葉に、少女は首を傾げる。


「そう。火縄銃の守護者。

えっと……君は?」

       

「わ、私は…彩葉(いろは)……

バッグの守護者……です」


言葉にした瞬間、

それが“自分の名前”であると、自然に理解できた。


陽菜は少し驚いたように目を見開き、

すぐに優しく微笑む。


「やっぱり。

もしかして、生まれたばかり?」


「……はい」


「だよね。

ここいらじゃ見ない顔だし」


彩葉は少し考えてから、問い返した。


「……陽菜さんは……何をしてたんですか?」


「呼び捨てでいいよ。

同じ守護者に敬語はいらない」


そう言って、陽菜は空を見上げる。


「見回り、かな。

困ってる人間や守護者がいないか、って」


「……すごいです……!」


思わず声が弾む。


「そうかな?

僕は当然のことをしてるだけさ」


照れくさそうに頭をかく陽菜を見て、

彩葉の胸が、少しだけ温かくなった。


(……かっこいい……)


その感情の名前は、

まだ彩葉には分からなかった。


だが確かに、

この出会いが――

彼女の物語の始まりであることだけは、

はっきりと感じていた。


忘れられた物から生まれた守護者と、

使命を胸に歩く守護者。


二人の出会いは、

やがて世界を揺るがす“異変”へと、

静かに繋がっていく――。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


第一話では、

守護者という存在と、この世界の在り方、

そしてバッグの守護者・彩葉の“誕生”と“出会い”を描きました。


守護者は強い存在です。

ですが、その心は決して最初から完成しているわけではありません。

迷い、怯え、学び、選びながら――

少しずつ「自分の存在理由」を見つけていきます。


彩葉はまだ、生まれたばかりです。

守る意味も、戦う覚悟も、

人と関わることの重さも、何一つ知りません。


そんな彼女の前に現れたのが、

使命を当然のように背負い歩く守護者・陽菜でした。


この出会いが、

彩葉にとって「世界を知る最初の一歩」となり、

やがて大きな異変と選択へと繋がっていきます。


次話では、

守護者の使命、想霊との戦い、

そして彩葉自身の力と役割が、少しずつ明らかになります。


この物語が、

あなたにとって「忘れられない存在」の一つになれたなら、

これ以上の喜びはありません。


――物語は、まだ始まったばかりです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ