初めての王都へ
私がこの世界で目覚めて、3カ月が過ぎた頃ー。
父:ヴィクトルと私は馬車で、片道半月はかかる王都へと向かったいた。
父一人ならば、転移魔法を使い、一瞬で王都に来ることができるが、行ったことがない者は転移先に行くことはできない。
そのため、私を王都に連れていくためには、初めは馬車を使うしかなかった。
また、魔力のない者も転移魔法は使うことができない。
その制限のため、王都にはほとんどの貴族の別荘があり、王城での集まりがある場合は皆馬車でくることが一般的だった。
そんな長い道のりを、父がわざわざ私を連れて王都に向かうのには理由があった。
魔力持ちの子供は、国で管理されることが法律で決まったいた。
能力を把握することで、犯罪の防止や乱用を防ぐ目的もあるが、一番は友好関係を築き、領地を安定させたり、王太子を始め、婚約を有利に進めるためだった。
私の髪は銀色で、父と母共に全属性の魔法使いだった。
2人の子供である私も全属性であることが期待されているが、魔力が実際につかえるようになるのは12歳以降になってからだという。
王都では私の属性と魔力量をはかり、王家に挨拶するのが今回の目的だった。
モブである私の属性もさることながらー。
この均衡した魔道王国で、国内の貴族と友好関係を築くことができるのかわからない。
この世界に来て、基本的なマナー・必要な勉学などを身に着けてきたが、公式の場でのお披露目は初めてのため緊張していた。
「アリア、元気ないね?どうしたんだい?」
父が馬車の中で声をかけてきた。
私が不安な顔をしていたからかもしれない。
「少し不安なんです・・・」
馬車での移動には、大量の護衛と隊列を組んで順調に行わていたが、それでも魔獣には襲われ、危険な場面がいくつもあった。
父がその度魔法を使うのだが、その凄まじい威力には圧巻しかなかった。
一瞬で大量の魔獣を炭にし、森は焼け野原になった。
もともとただの凡人に、その魔法を扱うことができるのかイメージがわかなかった。
「何がそんなに不安なんだい?」
父が不在の場合、我が領地は母が守っていた。
この国の魔法使いは性別に関係なく、皆戦うすべを身に着けていて、私は実際父よりも母が戦う姿を数多く見てきた。
その姿は勇ましく、美しいとも感じ、最初こそ感動していた・・・が。
(これっ、私にできるのかな?)
今までやったことないものへの、未知なる不安が立ち込めていた。
「私が能力が大したものじゃなかったら・・・がっかりさせてしまうのではないかと・・・。」
他の貴族の顔色も気になるが、それよりも、自分の能力がただの平凡な者だったら、両親に失望されてしまうのではないかと心配だった。
異世界転生ものでも、子供の能力を知り、落胆した両親が手のひらを反す話はたくさんある。
人として今までやってきたことは、それなりに自信があった。
でも、この異世界ならではの魔法という概念はわからない。
「おいで、アリア。」
そうして父は私を懐の抱え、頭を撫でてくれた。
29の父はそれ以上に若々しく見える。
父というよりも、年の離れた兄ー、社会にでたばかりの青年のようだと思った。
銀髪がサラサラと風になびいていた。
逞しくて、大きな体が暖かかった。
「心配しなくても良い・・・。
能力はおまけみたいなものだ。
まぁ、正直・・・カレンも私も期待していないといえば嘘になる。」
父は、少し困った顔をしていた。
でも、子供に心配させないように、言葉を選んでくれているのかもしれない。
「でも、例えアリアの能力が平凡なものでも、私たちの子供であることにわかりはない。
今回は初めての公式の場だから、緊張するだろうが、全部この父に任せて、君は何も心配せず遊んでいたらいいんだよ。」
「はいっ、お父様・・・。」
父の言葉に気持ちがやや軽くなり、期待半分不安半分となった。
徐々に道は整備され、馬車が揺れなくなっていった。
いよいよ、王都についてしまったのだ。




