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【WEB版】迷い込んだ異世界で妖精(ブラウニー)と誤解されながらマイペースに生きていく  作者: 明太子聖人
第三章  砂漠のオアシス・空中都市サヘール編

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第180話 普通に料理をしているだけだよ

 本日の夕食は『採れたて野菜の天ぷら~柔らかいうどんを添えて~お肉もあるよ』にしてみた。

 うどんはコシのない柔らか麺である。こねる時間とゆでる時間を短縮するためだ。

 天つゆに大根おろしを混ぜたものを小皿に入れて並べ、一人用の小さな揚げ物用盛り付け網を乗せたお皿に出来たての天ぷらを順次乗せて行く。

 天ぷらは揚げたてを食べて欲しいので、俺は一気に全て揚げてお皿に盛らない。

 同じ食材を一つ一つ揚げながら、順番に食べてもらう方式である。

 食材によって揚げ時間の違いもあるけれど、盛り付けのセンスが問われないからという理由もあった。

 それに対面式キッチンカウンターだから、こっちの方が|料理をしている気がして《小料理屋ごっこ気分で》楽しいのである。

 よって今夜は全員揃ってからの夕食なのだ。


「あついからきをつけてねー」


 若者組には青茶でグラデーションされたレモンサワー、大人組には冷酒を出す。

 そうしてせっせと揚げながらお皿に天ぷらを置いて行った。


「あ~サックサクでうめぇっ! 冷酒の喉越しもたまんねぇな!」

「ああ、辛口でさっぱりしていて、美味い。天ぷらとの相性も良い」

「確かに美味い。この冷酒とやらは、どうやって作るのだ?」

「それはひみつー」


 今日はアラバマ殿下も一緒に夕食を取っていて、冷酒について問い掛けられた。

 でも日本酒は作れないし出所も教えられないのだ。

 お歳暮やお中元の贈答品の消費をしているだけで常に同じ物はないし。

 そしてこれらの返礼品はアレクサに頼んでいる。俺のセンスだとヤバイからっていうんだよ。酷いよね。


「しろワインもあうよー」

「いいわねぇ。じゃぁ、次は白ワインを頂けるかしら?」

「りょうかーい」


 白ワインをスパークリングにしてアマンダ姉さんには出そう。 ディエゴは冷酒のままだろうけど、ギガンは途中でビールに変更だな。

 揚げたての天ぷらはちょっと冷ましてからシルバやノワル、最近おしとやかになったブランカにカウンター裏で食べさせる。

 俺は揚げながら適当につまんでおこう。もぐもぐ……うんまい!

 

「のう、お前たちはそのハシとやらを使いこなしておるのだな」

「リオっちの料理を食べるなら、おハシの方が便利なんだよね~」

「最初は難しいっすけど、使い慣れると便利っすよ」

「うむ……そのようだな」


 食事の際、ナイフやフォークにスプーンだと洗い物が増える。お箸だと何役も使いこなせるし洗い物が減るのだ。

 なので無理のない範囲で洗脳して行った結果。スプリガンのメンバーは全員お箸を使いこなせるようになったのである。

 ディエゴが一番最初に使いこなしてくれて、器用に食事をしていたおかげもあるんだけれど。カトラリーを変えなくていいし、面倒臭がりだからかもしれないね。

 そうしてみんなからレクチャーを受け、アラバマ殿下はあっさりとお箸を使いこなせるようになった。

 う~む。もっと苦労するかと思ったのだが。やはり優秀。


 食事の締めとしてデザートにバニラアイスと、温かい麦茶を出した。

 この組み合わせは意外と合うのだ。しかも麦茶にバニラアイスを混ぜると、何故かコーヒーの風味がするんだよね。

 そして煮出した麦茶とミルクを混ぜると軽やかなカフェオレ風味になる。

 寝る前にカフェインを摂ると寝れなくなるかもなので、明日のためにみんな早く寝れるように配慮した食後のデザートです。

 うどんの切れ端を揚げて砂糖をまぶしたのを、今度おやつに出すからね。


「ん~、幸せぇ~!」

「明日も頑張ろうって気になるっすよね!」


 うんうん。そう思ってくれるだけで、俺も料理のし甲斐があるよ。


「貴様は本当に、色々と作れるのだな」

「そうでもないよ」


 非戦闘員としてのお仕事なので、出来るようになっただけである。

 簡単で素早くそして栄養面を考慮したそれなりに美味しい料理を提供するのが冒険者パーティの食事係としての役目だしね。


「前々から思っておったのだが、魔道具作りや薬の研究が本職ではないのか?」

「すきまじかんつぶしかな?」


 時々隙間時間潰しにのめり込み過ぎて、報連相を忘れてしまうのを注意しなくてはいけないけどね。


「畑仕事もか?」

「それはしゅみ」


 本業は冒険者パーティのお食事係だよ。

 それに自分一人だと適当に済ませちゃうので、誰かのために食事を作るというのは存外楽しいものだ。

 食事のメニューを考えるのもお仕事なので手は抜いてないし。朝食と昼食は日替わりでメニューは決まってるけどね。


「お前たちはアルケミストがコレで良いと思っておるのか?」


 コレってどういうことだ。

 本職を忘れて、趣味に没頭してしまうことを指摘しているのだろうか?

 遠回しに仕事ができてないって言われているのかな? でも食事はできる範囲で良いって言われてたしな。その言葉に甘えすぎていたのだろうか?

 うんうん悩んでいると、みんながアラバマ殿下をジト目で見ていた。


「リオンはコレで良いのよ」

「むしろ出来過ぎなくらいだぜ」

「本人がやりたいようにやれば良い」

「そうっす。リオリオはいるだけで助かる存在っす」

「十分すぎるくらい働いてるもんね~」

「ほんと?」


 みんなの援護射撃がとても嬉しい。俺ちゃんとお仕事出来てる?


「リオンのお陰ですっかり外食しなくなっちまったしな~」

「家に帰る気分って、こういうのを言うんすっかね」

「至れり尽くせりだからな」

「疲れもほぐれるよねぇ~」

「良い気分で一日が終われるわ。ありがとうね、リオン」

「どういたしましてー」


 俺、このパーティにとっていらない子じゃないみたいで良かった。

 思わずほっと胸を撫でおろす。


「殿下は余計なことを言わないようにお願いしますわ」

「わ、わかった……」

「他の殿下方にもお願いしますわね?」

「お、おう……」


 アマンダ姉さんがニッコリ笑ってそう言うと、アラバマ殿下は口をもごもごさせながら頷いた。 

 残りあと一日なので、みんなには頑張って欲しいからね。魔道具作りや畑仕事はほどほどにして、もっと料理を頑張ろう。

 アラバマ殿下に指摘されたことで、俺は本来の与えられた仕事をおろそかにしないよう心に決めた。こうして忠告されるのはとってもありがたいね。

 ところで本業と言えばだけど、フェスバトルの方はどうなっているのかな?


「フィーバータイムも明日で最後なんすけどね……」

「こっちの陣営は相変わらずだな」

「だがカシムが何故かやる気を出したのもあるが、どうにも様子がおかしい」

「そういや聞いてた話と随分と違う印象らしいが、ありゃどういうこった?」

「インターセプトをした者は、直ちにギルド側で処罰して欲しいって申し入れて来たそうね?」


 インターセプトって、横取りとか妨害って意味だよね?

 冒険者同士のフェスバトルでは、今までそれが平然と横行していたそうだ。

 狩場も先に居た冒険者が優先されるのに、カメムシ王子側の陣営は虎の威を借るみたいに獲物を奪っていた。

 それが許されていたのも、カメムシ王子側がお祭りだからと赦免していたせいだ。

 血気盛んな冒険者たちには、お祭り気分と競争力でマナーが守れなくなっているようだ。


「あ奴は今まで自分の部下がやらかすことを咎めたことなど無かったのだがな。我関せずと放置しておったのに、どういう心境の変化だ?」

「心を入れ替えたとかじゃないの~?」

「騎士寮がぶっ壊れちゃったせいっすかね? 妖精の怒りに触れたとかで……」

「ちょっと、テオ! 滅多なことは言わないの!」


 建物の崩壊を妖精のせいにしたことで、テオがアマンダ姉さんに怒られている。

 ついでにポカリとチェリッシュに頭を叩かれた。


「そんなバカな。寮が倒壊したのは俺様のカーバンクル部隊が地下を掘っておったせいで、妖精の怒りなどではないぞ?」

「あ、そうなの?」

「地下を掘ってたって、殿下は何してたんだ……」

「まぁ、色々あってな」


 なんだなんだ。情報が多すぎてよく判らんぞ。

 ここ最近、寮や宿舎が壊れて追い出された人に遭遇してたけど、全部アラバマ殿下のカーバンクルの仕業だったってこと?

 それもカメムシ王子側に出た被害のようだが……これはもしや妨害行為なのではなかろうか?


「そ、そんなことはともかくとして、妖精の悪戯と思ってくれても構わんぞ」

「悪戯で済まされない被害のようだが?」

「だから怒りなんだろうぜ」


 それは酷い。妖精さんのせいにしちゃダメだろう。人災なのに天災扱いにされる事件が後を絶たないのは、こういうことがあるからだよね。

 この世界では妖精の怒りに触れることは禁忌だし。

 不可解な現象は天罰扱い(妖精の仕業)なんだよな。


「どうしてそういう話になっちゃったんだろうね~?」

「誰かが噂を流しているとかじゃないかしら?」

「不満が溜まっていたのもあるのだろうな。ああ、だが俺様はそういう情報操作はしておらんぞ。そこまで暇でもないしな」


 アラバマ殿下が地下を掘っていたのも嫌がらせではなく、発掘作業みたいなものだとすっとぼけた。

 どうせ秘密の地下通路でも作っていたのだろう。遊び心もやり過ぎると他への被害が出ちゃうんだから、気を付けなよね。


「まぁ、何を企んでいようが今更だな。自分の管理区域の警備にしても、やっとまともにし始めたところで既に遅いわ」

「美味しい野菜はアラバマ殿下の農地と、シエラ殿下の管理区域からしか収穫できないもんね~」

「そりゃそうだな。ギルドに出した依頼も、まだどこも受けてねぇみたいだしよ」

「それなんすけど。何件か野菜の提出はされてたみたいっすけど、合格じゃないみたいっす」

「どういう意図で依頼を出したのだろうな?」

「アタシもそれ聞いたんだけど、カシム殿下の美味しい野菜の基準を満たしてないって言ってたよ」

「どうも探している野菜があるらしいのよねぇ」

「飛竜隊の騎士にも、警備がてら農地で色々探させてるみたいっすよ?」

「ふうん?」


 あれかな~。シンデレラの王子様みたいに、ガラスの靴を落としたお姫様探しでもしているのだろうか?

 野菜のお姫様ってことはベジデレラかな? そんな名前の野菜ってあったっけ?


「まさかな」

「そのまさかだけど」

「ちがうよな?」

「ん?」


 何故みんなこっちを見るのだ。


「俺様の実験農地は、カーバンクルの幻覚で職員や許可した者以外、辿り付けぬようにしたぞ? 数日前に侵入者がおったと農民から報告があったのでな」

「そうなんだ」


 すぐさま対応したのか、やはりアラバマ殿下は優秀である。


「じゃぁ、野菜泥棒も侵入できなくなったね!」

「よかったねー」


 侵入者って、家なき子君じゃあるまいな?

 あの子は迷子であって、侵入者じゃないと思うのだが。

 そもそも目があんまり見えてなかったし、偶然辿り着いただけだろう。

 目が見えるようになったから夜の内に出て行ったみたいだしね。

 ということは、もう二度と会うこともなかろう。

 卑屈で根暗な性格も治って、元気にお仕事に復帰できてるといいね。


「もっとそれに早く気付けば、飛竜の落下被害も防げたのだがな……。ムスタファに提案されるまで思いつかなかった俺様の責任だ」

「それはいいよー」


 まだまだカーバンクルの能力の把握が出来てないのもあるし。

 幻覚で建物を隠す程度の範囲かと思いきや、広大な農地全体を幻覚で隠すことができるとは思わないじゃないか。

 それにそこまでやるにはかなり魔力を使うみたいだしね。


「貴様の作った野菜や料理を食すことによって、カーバンクルの魔力も増えてきたからこそ出来ることだがな」

「そうなんだ」

「ムスタファたちがそう言っておる」

「へぇ」


 役に立ったなら良かったね?

 でもみんなしておかしな表情をしているのは何故だろうか?

 怪しい薬やローヤルゼリーは混入させてないよ?

 いたって普通に料理をしているだけだから、そんな目で見るのは止めろ下さい!



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― 新着の感想 ―
グフッ_:(´ཀ`」 ∠): 脳内に金髪碧眼のベジー〇様が、スーパーなドヤ顔でガラスの靴に白いドレス、豊満なバスト(胸筋)を強調する腕組みをして現れた(腹筋崩壊)
無理・無駄・無評価をしないアラバマ殿下は、理想の上司として、確かに推せる。 アラバマ殿下は、食品加工場や工房や畑やらで忙しくなったのと、弟妹との確執ストレスが無くなったり、ムスタファ&カーバンクル軍…
作者様と読者の推しが一致するのは珍しいのだけどアラバマ殿下は推せる。
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