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異世界に迷い込んだ俺は、妖精(ブラウニー)と誤解されながら生きていく  作者: 明太子聖人
第一章 田舎の冒険者ギルド編

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第1話 これが噂の神隠し?


 その日俺は、典型的な山菜取りスタイルで、渓流沿いをのんびり歩いていた。

 耳をすませば聞こえてくる鳥の声、沢から流れる水のせせらぎ。今時流行りの便利なキャンプ地とは違い、少々不便だが穴場と言える人に荒らされていないスポット。何せここは、祖父から受け継いだ私有地である。管理がてら山菜も採り放題だ。

 竹で編んだ籠の中身を見て、俺はにんまりと笑む。

 スーパーで買えばそこそこの値段のする、フキノトウやうどに山菜の王様タラの芽等、てんぷらにして食べるのが今から楽しみになる程沢山採れてご機嫌だった。


 だから油断していたのかもしれない。

 子供の頃から慣れ親しんだ山の中で、最早己が遭難するなどとは考えもせず。

 籠の中身を見てはにまにまするのを繰り返し、辺りの景色の異様さに気付くのが遅れた。


「これが噂に聞く……神隠し現象……かな?」


 もしくは山の怪だろうか?同じ場所をぐるぐる巡らせて迷わせる現象とか。


「にしても、植生が違うんだよなぁ」


 妙に樹木がデカイ気がするし、見たことのあるような、ないような木々や草花。山中に流れる渓流沿いだったはずが、どうやらここは森だったようだ。

 どうしてそう思ったのかといえば、山は傾斜があるが、森は平らで木々が繁っているという違いがある。

 先程から歩けども歩けども傾斜はなく、下山しているつもりが一向に下りている気がしなかったのだ。


「何かのコスプレ集団が、キャンプごっこでもしてんのかな?」


 そうして辿り着いた少し開けた場所に、そのキャンプ集団があった。

 深夜のテレビアニメで見たことがある。冒険者風の衣装を纏い、レトロな野営スタイルで食事の用意をしている風景が目に映った。


「本格的っていうか……ある意味感心するんだけど」


 その手のアニメはながら見していたので、実はそんなに詳しくはない。SNSではもっぱらソロキャン等の趣味関連のフォローしかしていないので、宣伝で流れてくる程度にしかアニメの情報は判らないのだ。

 とはいえキャンプ飯とか、男の料理みたいな内容のアニメはたまに見るので、目の前で繰り広げられている光景も、何をしているのかは何となくだが判る。


「猟友会の人も参加してんのかな?」


 猪のような巨大な肉の塊を解体しているが、衛生的に大丈夫なのかどうか不安になる。

 目を凝らせば弓や剣のような物騒な武器を持っている人ばかりだし。銃刀法違反以前に、不法滞在の外国人である可能性も捨てきれない。こんな山の中―――いや、森?の中でのキャンプというか、野営?をしてもいいのかと首を傾げてしまった。

 私有地の山の中で遭難するという間抜けなことを仕出かしておいてなんだが、目の前の冒険者風コスプレ集団の常識外れな行動に警戒心が募っていく。

 見なかったことにしてしまおうかどうしようか。そんなことを考えつつ、遭難から脱出するために助けを乞うべきかどうか暫し悩んでいたところ、コスプレ集団の中の一人が、俺の存在に気付いてしまった。


「何言ってんのかわかんない……」


 こちらを指さして、やたらと興奮している年若い男と、ちょっとゴツイおっさんがこっちを振り向く。

 俺は思わず目を逸らし、山の中―――ではなく、森の方へと視線を向けた。

 やっぱ外国人かも知れない。だって言葉が判らないんだもん。

 三十六計逃げるに如かず―――いや、別に万策尽きてはいないけど。

 ちらっとコスプレ集団を伺うと、野郎どもがこちらへ走って来そうになるのを、すらりとした体格の女性が止めていた。


「……?」


 そうして俺もぴたりと止まる。

 すると向こうもぴたりと止まった。

 まるで敵意はありませんよとばかりに、彼らは持っていた武器らしきものを落とす。それを確認すると、彼らは少しひきつった表情でにこりと笑った。


「……」


 俺はと言えば、武器になりそうなものと言えば、山菜取りの必需品である、サバイバルナイフや虫よけスプレーぐらいしかないし、それらは全部リュックの中である。手に持っている物は山菜のたっぷり入った籠のみだ。

 そうして再び森の中へ戻ろうとすると、彼らも少しだけ俺に近付く。気付いて振り返るとぴたりと止まる。

 だるまさんが転んだ的な何かかな?


「だから、何を言ってんのか判んないんだって……」


 一定の距離を保ちつつ、身振り手振りで話しかけてくる彼らを見て、俺は深く溜息を吐いた。





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