華麗なる決着
蛇蝎城から、空を赤く染めるほどの激しい炎が上がった。
それは、一瞬のうちに起きた。
周囲数十キロにも響き渡るものすごい爆発音を伴って、悪の巣窟全体が瞬時に炎に包まれたのである。
城に巣食っていた魔物たちには、脱出・逃走する隙も与えられなかった。それほどまでに、炎の魔女アカーシャの怒りは凄まじかったのだ。
「うお!?」
魔少女の上げた見事な勝利の狼煙を見て、最初に声を発したのはヴォロスだった。
「みんな見ろ!やっぱり、やってくれたぜ。アカーシャはよう!!」
歓喜する大地の戦士につられて、魔王は満足げに腕を組み二度ほど頷いていた。そばに立つディーネも表情が明るい。
だが、誰よりも嬉しそうに興奮していたのはルナだった。少女は、リュネシスたちをかき分けるようにして最前列にまで駆けていった。
「すごい……」
燃え盛る城を見つめるルナの目が輝いている。
「本当に一時間で倒しちゃった……つか、まだ一時間も経ってなくない?」
すでに敵軍を完全に撃退し終えたライガルとベテルギウスも、体のホコリを振り払いながらはしゃぐ少女の近くに歩み寄ってくる。
「ねえ、まだ絶対一時間も経ってないよね!?ねえ?」
ふたりの漢に目を向けながら、ルナはウキウキと弾んだ声で訊いた。
「そうですね。アカーシャさんの圧勝だ」
ベテルギウスは同意するように微笑んだ。
ライガルは何も応えないが、やはり彼の表情も、若干の疲労を伴いながら普段にない充実感と穏やかさに満ちている。
そのライガルが、ふと何かに気づいたように前方遠くを指さした。闘神の指差す方──今や巨大な松明と化している魔城を背景にして、華奢な影が揺らめいていた。
まだそれなりの距離を残し、目を凝らさなければ判然としないが、それがこちらに近づきつつある漆黒の魔少女の姿であると、その場にいる誰もがすぐに察した。
「みんな行くよ!何ぼーっとしてんの!?アカ姉をあたしたちで迎えに行くんだ!!」
最初にルナが、嬉々として馬を走らせた。すると、それをきっかけにして全員が馬を前方に向かって進ませる。
「アカ姉だってよ」
途上ヴォロスが、どう思うよ?と言わんばかりにリュネシスに視線を送って、口元を〝にっ〟と吊り上げた。
それを受けて魔王も、少しばかり困惑したように首を振ってはにかんで見せた。
「あら……でも、なんかよくないですか?ルナさんみたいな素敵な子に慕われて、そんなふうに言われて……アカーシャさんなら普通に喜ぶんじゃないかしら」
いたずらっぽく笑って片目をつぶるディーネに対して、ややあって、リュネシスも気持ちよく賛同していた。
「だな」
戦士たちの一団はすでに、大いなる炎の塊となった城の間近にまで迫っている。
その中間地点では漆黒の魔少女アカーシャが、得意げな笑みを浮かべながら、赤々と炎上する魔城を背に皆を迎えて佇んでいた。
あけましておめでとうございます。
今日は少し体調がいいので、明日の投稿を前倒しにさせていただきます。
皆様にとって、良い年となるようお祈り申し上げます(*^^*)




