表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エテルネル ~光あれ  作者: 夜星
第四章 双頭守護神
52/91

待ち受ける賢者

 クレティアル城は閑散(かんさん)としていた。


 城内で(ちぢ)こまっているであろう人々の姿はなく、ましてや死に物狂(ものぐる)いで迎え撃ってくるはずの兵士たちも全くいない。


 外より見えた人の姿らしきものは、規則性をもって動き回る()(ほう)()()けの人形、それに加えて賢者の操る式神のたぐいであったのだ。


——やはり罠、か……。


 先陣をきって踏み込んだケルキーの(ほほ)が、いらつきにぴくりと(みゃく)()った。


 彼女の目前で、よくできたからくり人形が周期的に城内を徘徊はいかいしている。そして式神とおぼしき者も、一瞬ちらりと屋内の片隅に姿を見せた気がしたが、すぐにどこぞに姿を消してしまった。


 だが、あえてそれらを無視するように顔を伏せて思考を巡らせていたケルキーは、突然サッと()(じょう)を持つ片手を()ぐ。

 背後から()(たけ)びを上げて城内に雪崩(なだれ)れ込んでくる第三魔軍突撃部隊は、指揮官の指示にぴたりと動きを止めた。


 妖術師ケルキーは慎重に片手を上げたまま、もう一度、辺りを見回してみる。


——(いま)だ帰らぬ斥候(せっこう)たちは、どうなったのだ?まさか、そう簡単に始末されたとも思えぬが……。


 妖女は瞑目(めいもく)し、()()ました六感で城内を探った。紫色をイメージした思念波が広がり、水面に落ちた波紋のように、城の隅々にまで浸透(しんとう)していく。


 ケルキーは目を閉じたまま、にやりと嗤った。


——いるな。ベテルギウス……ククク……。


 彼女はまぶたを開くと、ゆっくりと息を吐き出した。


——そうだ……ここからは、さくろうする局面ではない。力と力の戦いなのだ!真の強者としてゆうを決するときなのだ!!


 己の内心だけに存在する魔物としての——否、この地上にとなえんとする魔王軍の大幹部〝五妖星〟としての美学に思いをせ、非凡な妖術師は、重みを()めて配下の軍勢に命令を下す。


「今より最後の作戦に移る。おそらく、これで決着が付くだろう。否──つけてみせる!突撃部隊は精鋭十名だけを残し、城外で(たい)()せよ。だが待機中は一切、領民どもには構うなよ。よいか?必ず私の指示があるまで静かに待つのだ」


 行け、とケルキーが再度片手を()ぐと、階下を()()くさんばかりの軍団は、整然(せいぜん)と城外へ移動していく。


——いいだろう。ベテルギウス……あえて、お前の策に乗ってやろう。


 後に残ったほんのわずかな()(ぜい)だけを従えて、ケルキーは靴音高く、王の広間へと向かっていった。


 そこには確かな……〝人の気配〟が、ある——。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ