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エテルネル ~光あれ  作者: 夜星
第四章 双頭守護神
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形勢逆転

 戦いの場は極限の緊張状態にあった。


 おそらく、これが最後の幕となるであろう。


 一帯には、ライガルが拡大させていくエネルギーの爆流が巻き起こり、巨大な気流が渦を巻いている。


「おまえは龍の逆鱗(げきりん)()れたのだ——」


 降臨した闘神には、(おご)りも気負いもない。

 ただ猛然(もうぜん)たる構えと共に、山が崩壊したがごときとどろこえを告げていた。


「我が拳はこの世の邪悪を滅する神の拳……我が奥義にふれる今こそ、おまえが死滅する時となるのだアカーシャ」


 大地の底からき上がるような闘神の気迫に、さしもの魔少女も一瞬だけまれ、わずかにその身をらしたかに見えた。


 だが——。

 アカーシャは気を(しず)めるがごとく目を閉じ、数刻後——魔性の目をゆっくりと開いた。


 そのひとみには、紅くはげしい炎が、らんらんと燃え盛っている。


「この世界の原初の(とき)は炎。そして終末の(とき)も炎で終わる——」


 (つや)っぽい(こわ)()と共に、アカーシャの体から膨大な魔の力が噴き上がった。


「この世界で最も偉大なるは炎の力。あなたこそ我が魔力の威を思い知るがいいわ」


 漆黒の魔少女は、両腕を斜め下に大きく広げながら、全身を燃やして(ほほ)()んだ。



 ―――― § ――――


 

「フハハハハハ!!殺せ!燃やせ!!破壊しろーっ!!!」


 妖術師ケルキーの(こう)(しょう)が、けたたましく響き渡る。


 崩れかけた城壁の上に立ち、すらりとした指をあちらこちらに差しながら、配下の者たちに次々と恐ろしい指示を飛ばしていく。


 本来なら落とせぬはずの、(なん)(こう)()(らく)の大要塞エルシエラに(あま)()の犠牲を果たして侵攻した第三魔軍は、巨大な嵐のような勢いでもうを振るっていた。


 抵抗する人間の兵力も十分にあったが、槍を持とうと弓を引こうと、強大なる第三魔軍の魔物・魔獣たちの前にはあまりにも無力だった。


 エルシエラが世界に誇る勇猛ゆうもうな兵士たちが、あっけなく()(たお)され、踏みにじられていく。

 さらには第三魔軍の(とき)の声の中、全長十メートルはあろうかという希少鉱石(レアメタル)の巨人が、凄まじい地響きを立てて後方から姿を現した。


巨神兵(ゴーレム)〟である。


 その姿はあまりにも現実からかけ離れていて、歴戦の勇士たるエルシエラの兵士たちですら、悪夢のような巨神兵の()(よう)を前に呆然ぼうぜんとなり色を失う。


 その巨神兵たちが意外なまでの素早さで、突撃を開始した。


 桁外(けたはず)れの巨体と、がんきょう過ぎるたいに似あわず、野生の獣のように(よど)みのない動きであった。


 ()(たけ)びを上げて暴れまわる怪物たちの力は人間たちの想像をはるかに超え、エルシエラの街並みを(またた)く間に破壊していった。


 その圧倒的な(もう)()をふるう希少鉱石(レアメタル)巨神兵ゴーレムたちですら当然のごとく従え、廃墟と化していくエルシエラの街を睥睨(へいげい)して嘲笑(あざわら)う妖術師ケルキーの姿は、婀娜(あだ)やかでありながらも、凄まじいまでの魔性の影を宿していた。


 だが、やがて妖術師は歪んだ笑みを消すと、一息おいて冷静さを取り戻す。


 すでにほふられた側近からの戦死直前の伝達により、これまで第三魔軍に仕掛けられた大掛かりな方術の数々が、やはりすべて賢者ベテルギウス単独によるものとはっきり知った以上、総力を上げてその対応を急ぐ必要があったからだ。


 そしてそのベテルギウスの所在地も、これで確定した。


「よーし!全軍、速やかにクレティアル城に向かうぞ!まだどこかに息を潜めているはずの賢者ベテルギウスを探し出し、〝精霊の羽衣〟を奪うのだ!!」


 次なる行動を決めたケルキーは、自身の雷撃に大破されたクレティアル城に、ギラつくような(つよ)い視線を向けた。




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