表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エテルネル ~光あれ  作者: 夜星
第三章 炎の魔女アカーシャ
25/77

邪悪なる者

「リュネシスが消えた」


 (やみ)が、(うごめ)いた。


「アカーシャも——」


 闇が、極度に低い女の声でふっと(わら)った。


 そこは、黒天鵞絨(ビロード)のカーテンで、(がい)(こう)を完全に(しゃ)(だん)した大広間である。


 暗い屋内の所々では、(せい)()(どく)()()(よう)()り込まれた巨大なトーチが(そび)え立ち、その上で人の魂を(かて)()かれた不吉な大火が、ゆらゆらと燃えて大広間を不気味に照らし上げている。


「ならば動きますか?魔女王様。アルゴスごときを(ほろ)()くす用意は、いつでもできておりまするゆえ」


 (ちゅう)(くう)の闇から、別の何者かが薄気味悪い声を発した。


「待て——」


「?」


「あのふたりを(あなど)るな。うかつに動けば墓穴を掘ることになるぞ」


 あるじのつよい口調に宙空の者が思わずかえりみて退いたゆえに、巨大な(ひと)(だま)(かがり)()に赤々と照らされて、闇の──女の姿が(あら)わになる。


 それは玉座に座る、恐ろしいまでに美しくも、とてつもないきょを有する女であった。身の丈は二メートル半を軽く上回っている。


 女は全身から、常人なら到底とうてい耐えきれぬ気が遠くなるような(きょく)(だい)の妖気を——否、底知れぬ殺気を(ただよ)わせていた。


 夜の闇よりなお黒い漆黒の長髪と、対照的に輝くばかりの白い肌。

 長い(まつ)()(いろど)られた双眸(そうぼう)は激しく(まが)(まが)しい光を放ち、邪悪な微笑をたたえる唇は毒々しい紫。

 その身も(あで)やかで、魔界の貴石を散りばめた()(むらさき)のドレスに包まれている。


 見る者に恐怖と絶望を与え、なおも()(りょう)すらさせるこの魔性の女こそ、神話の時代より生き、世界の影に君臨する闇の覇者〝魔女王ラド―シャ〟であった。


 魔女王の周囲には「死霊の影」や「闇の精霊」などが飛び交い、(あるじ)を守護し、また、その言葉を待っていた。


「真相の(つか)めぬアルゴスよりもまずは——」


 ラド―シャは立ち上がり、赤い蛇の像がヌメリと先端に(から)みついた、魔界の(おう)(しゃく)を持つ片手をサッと()いだ。


(なん)(こう)()(らく)の竜の王国ルスタリアを()とせ」


(おお)せつかりました。では——」


 影は言い、たちどころに気配を消した。


 ラド―シャは、(ゆが)んだ(ちょう)(しょう)を浮かべながら玉座に(ひじ)()く。


 魔女王の手をびっちりと飾る(あま)()の指輪が──そのすべてが人の世の王にも()られぬ()(ほう)とされる()(ごく)の宝石が──ギラギラと忌まわしく(きら)めいて、闇の中で輝きを放ち続けていた。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ついに魔女王が動くのですね。 物語が加速してゆく予感にワクワクします。 ヾ(・ω・*)ノ
わくわくして一気に読んでしまいました。 第二部を楽しみにしています。
2025/01/29 10:52 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ