プロローグ 童斬華の少年
ふと、男は空を見た。空がいつもより赤い。夕方に近い時間帯なのだが、やけに赤い。まるで、動物の血のように真っ赤なのである。男は京の都に来たのは初めてなのだが、これほどまでに荒んでいる空を見たことがない。ただ男は気のせいだと言い聞かせ知人の宿にそそくさと向かった。数分には、陽は落ち真っ暗になっていた。まだ、男は宿には着いていなかった。ようやく宿が見えてきたところで、髪の長い二十代後半くらいの妖艶な雰囲気の女に話しかけられた。
「私の簪を知りませんか?とても大事なものなんです。」と。
男はなぜか、探さなければいけないという直感が働いたので、探すことにした。女が透けていることにも気づかずに。数時間探したが見つからない。諦めようと女に言うと様子が変わった。
「どうして見つけてくれないの?ねぇなんで?」
先ほどの雰囲気とは違い、まるで怨念を込めているように男に言い放った。男は金縛りにあっているように身体が動かない。その時、男は女が透けていることに今気づいてしまった。それはもう手遅れだった。
「あなたも見つけてくれないのね」
元の女の姿はなくなり、髪は白く、肌は焼けたように溶けて、目はなかった。それは異形の姿となり、男の元にゆっくりと移動する。異形は男の目の前まで来た。もう終わりだと確信した直後だった。
「"幻影"を発見。直ちに葬る。」
と、声が聞こえた瞬間。目の前にいた異形は数メートル先まで飛ばされていた。男の目の前にいたのは、15歳程度の少年だった。
「ぎゃんざしぃぃぃぃぃ」
「五月蝿い」
少年は脇差を抜き、一気に異形との距離をつめた。
「赫月無斬」
脇差が赤く染まり、異形を横一文字に斬る。その異形は苦しみながら悶えており、最期は水蒸気のように消えた。あの異形は何だったのだろうか、、、
少年は男に話しかけた。
「大丈夫か?」咄嗟に返事してしまった。本当は足が痺れるほど痛い。そしたら「陽の降誕」と唱え、足が痛くなくなった。男はあの異形は、君は、一体なんなんだと聞いたら、
「あれは死んだやつらの未練が具現化してできたものだ。俺たちはやつらを"幻影"と呼ぶ。そいつらを京の都から排除するのが俺たち"童斬華"という組織だ。俺はその組織の一員の出雲瑩だ。」