表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/13

007 洞窟



 【エルクハーデ村】



 叶人とエニャは、村長の家に行って話を聞いてみた。ポン吉の言っていたことは真実のようで、洞窟のドラゴンを倒すと次の町への地図をもらえるらしい。


 何でも、ドラゴンはファブリオンという名前であり、時々洞窟から出てきては村の女性を襲って食べるのだとか。だから村民は困っているらしい。それはもちろんゲームの設定なのであろうが。


 叶人とエニャは話し合い、グリムレイパーに加入することに決めた。仲間は多いに越したことはない。二人は戦いに向けて、道具屋で回復アイテムや帰還アイテムなどを買いそろえた。


 午後一時。二人がまた広場に行くと、6人の男女がドラゴン退治に行くために集まっていた。ポン吉の仲間たちや叶人とエニャを含めると、総勢13人のメンバーが集まったことになる。


 ポン吉は両腕を胸に組んでぐるりと眺め回した。彼は今回、ベンチの上に上がっていなかった。



「これで全員か!?」



 集まった面々がポン吉の顔を見て小刻みに頷く。するとポン吉は歩き出した。



「それじゃあここにいる全員はグリムレイパーの団員とする! みんな着いてこい! 山の洞窟へ案内するぜ! あと、途中に出てきたモンスターは倒してくれよな!」



 ポン吉の背中を追って、集まった人間たちがぞろぞろと歩き出した。その後ろから、ポン吉の仲間たちが着いてくる。


 叶人はこれから戦うことになるのであろうファブリオンを想像して、表情が歪んだ。勝てるだろうか? 負けそうになったら帰還の札を使えば良いだけの話ではあるのだが。



 ……初心者の渓谷のボスだから、強すぎるということはないだろう。

 ……だけど、死にたくはないな。



 村の北出口を出て、山を登っていく。途中、オークやホブゴブリンのような強敵が出た。しかし、こちらは人数で大きく(まさ)っている。


 ポン吉がモンスターのターゲットを取って逃げ、遠距離職の人間が一斉に攻撃を仕掛けた。モンスターはたまらず地面に伏せり、赤い光となって消えた。



 全員がこの数日間で狩りをし、レベルを上げているのだろう。安心の火力であり、危なげなく山を登っていくことができた。途中、叶人とエニャはこんな話をした。



「何か余裕ね」エニャの表情は明るい。


「そうだな。これだけ人数がいれば、案外ドラゴンも簡単に倒せるかもな」


「うんうん。私たちが一番にやっつけて、まだ倒してない人に教えてあげようよ。ボスがどんな攻撃をするか、とか」


「お前優しいな」


「いま気づいたの?」


「初めて気づいた」


「ひっど。これからは優しいエニャ様を崇めたてて、溺愛しなさいね」


「それはどうだろう……」



 叶人は苦笑しつつ、山道を登っていく。やがて、切り立った崖の下に洞窟が見えてきた。洞窟の近くまで来ると、ポン吉が振り返って言った。



「着いたぞ! この洞窟がドラゴンのいる洞窟だ! 俺は明かりを照らすから、タンク職が先頭に来てくれ! 火力職や、遠距離火力、ヒーラーは後ろだ!」



 叶人はそこで考えた。自分は盾持ちの剣士ではない。しかしプロテクトシールドを覚えている。



 ……俺はタンク職なのかもしれないな。

 ……前に出た方が良いだろう。



「エニャ、俺は前に行く」


「分かった。後ろは任せて」エニャが親指を立てて生きの良い笑顔をくれた。



 ポン吉がランタンを持って洞窟に入っていく。叶人はその隣に並んだ。ポン吉が声をかけてきた。



「お前が先頭か」


「ああ、よろしく頼む」と叶人。


「名前は何だ?」


「叶人だ」


「よし叶人、良く聞け。俺たちは一度、この洞窟に来たことがある。だからボス部屋までの道順も知っている」


「ボスと戦ったことがあるのか?」


「それは無い。だが見たことならある。赤い竜だ」


「竜がどんな攻撃をするかとか、分からないか?」


「知らん」


「そ、そうか」


「ボスの攻略は頼んだぞ! 叶人!」



 ポン吉が勢いよく叶人の背中をはたいた。ちょっと痛かった。


 洞窟内に出てくる敵は、ゾンビ、スケルトン、ゴーストなど、アンデット系のモンスターばかりであった。叶人は先頭で戦い、ダメージを受けるとエニャがすぐにヒールをかけてくれた。火力職の双剣の男性が頑張ってくれたことや、後ろから攻撃魔法、弓矢が雨あられと飛来したので、モンスターたちはすぐに力尽きた。


 一向は着実に歩を進め、やがてそのボス部屋へと続く下への穴に辿り着いた。ポン吉は立ち止まってみんなをぐるりと見回した。



「この先にドラゴンのファブリオンがいるぞ!」


「マジか! どうすればいい?」叶人の声は緊張で震えていた。


「叶人、お前が先頭を行ってくれ! 後ろからみんなが続く!」


「……分かった」



 叶人は勇敢な男であった。先頭を務めて危険な思いしたい者などいないだろう。だったら自分が先陣を切ってやる。


 叶人はゆっくりと穴を降りて行った。後ろからみんなが着いてきていた。やがて、緑色に光る池が見えた。


 その緑の池の水際で、大きな赤い竜が寝そべっている。竜の頭に表示されているHPバーに目をやった。名前が表示されている。



 ――ボス、ファブリオン。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ