私の婚約者は転生者であることをひた隠しているようですが、残念ながらバレバレです。
手応えがあれば、プロットを練り直して連載版を発表させて頂きます。
お願い 本文は諏訪部順一さんの声で脳内再生していただけると嬉しいです。
はじめまして、私はコモドア魔導王国の第三王子、名をライオネル・リッチャーと申します。――ふふ、別に名乗らなくても、国民なら私の顔と名前を知らない訳はないですよね。本日はお時間を頂き誠にありがとうございます。
突然ですが、あなたは前世や異世界や転生といったものを信じておりますでしょうか? 魔法で海を渡り空を飛び宇宙を観測することも可能になった現在でも、それらは未だ存在を証明できない一種のオカルトである訳ですが、私は自信を持ってそれらが存在すると口にすることができます。何故なら、私自身がその生きた証人だからです。私の前世は、こことは別の世界の日本という国でキャラクターデザイナーの仕事をしていた女の子だったのです。
あの、そのような憐れんだ顔をしないでください。1国を担う重圧に潰されて頭がパーッになってしまった訳ではないのです。これは神に誓って紛うことなき真実なのです。私は産まれた時からその前世の記憶を保持しているのです。
そして私の身近にも、少なくとももう1名同じ境遇の人物がいます。なんと私の婚約者であるローズ公爵のご令嬢、ダイアナ・ローズも、同じ日本からの転生者なのです。彼女は私や皆に対してそれを隠しているようですがね。まぁ、私も普段は隠している訳ですが。
これから、彼女も同じ転生者であると知った経緯及び同じ世界同じ国で生きていた私たちの魂をこちらの世界へ呼び寄せるファクターとなったとあるゲームついて、あなたに特別にお話ししたいと思います。
では私の前世について、かいつまんでご説明致ししましょう。
まずはあちらの世界の在り方についてです。あちらは私たちが普段親しんでいる魔法という技術が存在しない代わりに高度な科学が発達した世界でした。あなたも知っての通り、魔法は使用者を差別します。才能を必須とした技能であり、国家の権力闘争や王位継承争いでも血統と並んで魔法(魔力)は最重要視されます。しかし、科学は差別をしません。熱意と努力に比例して、私たちに恩恵を与えてくれます。このように聞くとこちらよりもよほどよい世界に思えますが、悲しきかな現実はそうシンプルではありません。あちらの世界では本来平等なはずの科学へのアクセスを多くの人民が制限されているのです、お金によって。ご存じの通りこちらの世界では、魔法の才能があれば平民でも無償で高等教育を受けられることが保証されています。王族・貴族・士族・平民が13歳から20歳まで同じ教育機関で学び、その大いなる力を力なきものたちに還元する術を学びます。私もダイアナも、ここで学んで来週で4年目に入ります。しかし、あちらの世界は日本も含めたほぼ全ての国において、どれほど才能があってもお金がなければまともな教育を受けることができません。医者の才能があっても、お金がなければ医者になるための教育を受けることすらできないのです。逆に医者の才能に乏しくても、お金があれば医者になれてしまうこともあるのです。ごく稀に極貧から這い上がって国や世界の重要な位置につく人も出てくるのですが、それはたまたま運も味方してくれただけなのです。もちろん私たちの世界にもお金、つまり通貨が存在し、それによって不正が働かれることもある訳ですが、私のもといた世界はもっと根本的に、お金こそが世界の支配者だったのです。
とまぁ、ここまでもといた世界を厳しく批難してきましたが、魔法の才能のない平民の高等教育の道を閉ざしているこちらのシステムも、私は正しいと思っていないのですがね。――いや、王族の私がこんなことを言っては危ういですね。別に父上の寝首を掻いてクーデター起こそうと思っている訳ではございませんので、ご容赦を。
話を戻しますね。
私はその世界では、お金持ちでもないし特別な才能もない女の子だったのです。いまとまるで正反対ですね。その世界で私が衣食住を手に入れるためにやっていたことが、ゲームのキャラクターデザイナーの仕事だったのです。
ゲームといいますと、こちらの世界ではトランプや盤上遊戯といったある種の現実の延長のような代物しか未だありませんが、あちらの世界では物語のような仮想の世界を創り出し、それを専用の機械に投影してその世界のキャラクターを自由に操作するゲームが主流となっているのです。俗にコンピュータ・ゲームと呼ばれています。私は主にそのコンピュータ・ゲームのキャラクターの容姿をデザインする仕事をしていたのです。私のいた日本という国は、そのコンピュータ・ゲームのメッカでした。
え、メッカとは何かですか? そうですね、中心地という意味で捉えてくださると理解できるかと思います。
私も小さい頃から様々なコンピュータ・ゲームに魅せられて、プレイしてきました。家が裕福じゃないからと様々なお願いに夢まで我慢させされて、そのうえ運動も勉強も恋愛も不得意だった私にとって、その仮想世界が数少ない心の拠り所だったのです。様々な魅力的なキャラクターたちが、私に夢を見せてくれる。そしていつしか、私自身ももその夢を送り出す側の人間になりたいと思いました。個人的に絵やデザインの練習をし、自身でお金を貯めて専門の教育機関に入って勉強しました。そうやって、私はその送り出す側の人間になることができたのです。幸いなことにキャラクター・デザイナーという仕事は、就くだけなら比較してお金のかかる職業ではなかったんですね。まぁ、もらえるお金も少ないのですが。
何事も、最初は希望した仕事はできないものです。先輩の下についてゲームのNPCやアイテムの作成、企業のイメージキャラクターのデザインに、女性向けライトノベルのイラストを担当したこともあります。
すみません、立て続けに知らない言葉ばかりを並べ立ててしまって。ただこれらの用語をこちらの世界に合わせて咄嗟に分かりやすく変換することは容易ではないのです。ですので、いま言った部分は意識から飛ばしていただいても問題ありません。
そしてキャラクター・デザイナーになって5年目、ついに私はとあるコンピュータ・ゲームのメイン・キャラクター・デザイナーになることができたのです。それは『マイ・エンドレス・ラブ』というゲームでした。舞台は魔法の世界、平民ながら魔法の才能に恵まれた女の子が、上流階級も通う学校で王族・貴族・士族の美男子たちと恋をする、女の子の夢を叶える所謂「乙女ゲーム」です。
ふふ、ここまで言えばお分かりでしょう。いま私たちの住むこちらの世界と、あちらの世界のゲーム『マイ・エンドレス・ラブ』は同一の世界なのです。
いえ、そういうと語弊がありますかね。私たちは前世の私とその制作チームが産み出した架空の存在、という訳ではないと思うからです。あちらの世界の有名なアーティストが、こんな言葉を残しています。『アイデアは考えるんじゃない、降ってくるんだ。まるで別世界の出来事を受信するように』。つまりはもともとこちらの世界があり、あちらの世界にいた私たちがこちらの世界観を無意識裡に受けとって、ゲームというかたちで投影した、というのが真相なんだと思います。……ふふ、自分で言うのもあれですが、よりいっそうオカルト地味てきましたね。申し訳ございません、私の本性はオタクでして、こういう想像をするのが元来好きなのです。あ、想像と言いましても、私がこれまで話したことが全て想像だということでは勿論ありません。前世の話は真実であるということは改めて留意してください。
さて、『マイ・エンドレス・ラブ』というゲームのメイン・キャラクター・デザイナーを任されたというところから話を続けます。当時の乙女ゲームの流行として、魔法・学園・身分違いの恋というコンセプトはもはややり尽くされたといっても過言ではない状況でした。しかしその勢いは留まることを知らず、需要も十二分でした。ただし、流行に則れば必ず売れるというわけではないのがゲーム制作の難しいところです。何かしら頭ひとつ抜けた武器が必要なります。私たちはその部分を、純粋な質で勝負することにしました。奇を衒わず、王道のストーリーに王道のキャラクターを美麗のグラフィックにボリュームのあるシナリオで表現する。攻略対象の美男子も総勢10名、その恋のライバルとなる女の子も12名、そして主人公の女の子、合計23名、全て私1人でデザインしました。――ええ、そうです。その攻略対象の男子の1人が、このライオネル・リッチャーだったのです。私が描いていて1番のお気に入りキャラクターでした。182cmの長身、透き通るような白い肌、鳶色の髪にブロンドの瞳。そして何よりも、ラフ画に声のイメージとして何気なく名前を書き留めていた大人気声優の澤部 順二さんがそのままアテレコしてくれたイケメンボイス。ああ、これが何よりもたまりませんでしたわ、澤部様が私の描いたキャラクターの姿かたちで愛の言葉を囁いてくれる、そのボイスを聞く度にもうなにかしらの汁がブッシャーって脳天から飛び出してしまいそうで、この体に生まれ変わって変声期を終えたあともやっぱり声は澤部様で、誰もいない場所でゲームでは禁止コードに引っ掛かって収録できないような言葉をしゃべってみたりしてああもう無理死ぬ! みたいな、…………申し訳ございません、取り乱しました。いけませんね、もっと落ち着いてお話ししたいと思っていたのですが、どうしても澤部様のことを頭に浮かべるとキャラ崩壊を起こしてしまいます。実を申しますと、これこそがあなたに秘密を打ち明ける理由でもあるのです。オタクというものは、定期的にアウトプットをしないとバグを起こしてしまう憐れな生き物なのです。こんなことを公で、とりわけダイアナの前で爆発させてしまった日には、私は割腹による自害を選択する他ないことになってしまいます。そうならないためにも、是非ご協力のほどよろしくお願い致します。
話を戻します。そして申し訳ないのですが、あちらの世界の、特にゲームの用語を噛み砕いて説明するという作業はいまから省かさせて頂きます。バグりっぱなしになりますと、あなたに申し訳ないですからね。
ゲームは無事に完成して発売されました。初日の販売数や評価も上々、私たちチームは大喜びし全員でお酒を飲みにいくことになりました。そしてそれこそが、異世界転生という事態を引き起こした原因になってしまったのです。その日、私はそれまでの人生で1番お酒を飲みました。呂律も回らず、まっすぐ歩くこともままなりませんでした。酒の席がお開きなると、私は同僚に懐抱されながら帰路につきました。そして大きな道路を横断しようとした時です。私の被っていた帽子が風に飛ばされ道路の真ん中に落ちてしまいました。私はそれを取りに行こうと体を支えてくれていた同僚を振り払ってしまったのです。車という、大きな鉄の馬車が高速で接近している最中に。そこで私の意識はブラックアウトし、気が付くと男の赤ん坊の体で母上の乳房を吸っていたのです。
ここまでが前世のお話になります。続いてダイアナも転生者であると知った経緯を、順を追ってお話ししたいと思います。
私はライオネル・リッチャーになっていると気が付いた時は、本当に天にも上るような気分でした。第三王子でありながら魔力量が兄弟の中でトップであるために王位継承候補の筆頭として期待されて、美しい容姿と大人になれば澤部様風のイケメンボイスが確約されている。重い生理からも解放されて、女だから弁えろと言われることもない。ヴィヴァラビダ! まさに世界の全てを手にしている、前世の私とは大違いだわ、とね。しかし何もない女の子の不条理があるように、全てがある男の不条理もあるのだと後々気付かされました。王族だから尚更なのでしょうけど、大勢の他人の命の責任を常に追求されそのためのステータスアップを強制され続ける、それは実に窮屈なものでした。前世の私には2歳歳上の兄がいたのですが、正直に申し上げて嫌いでした。父と母も、子供に投資するとなったら概ね兄の方を優先させていたからです。兄をよい塾よい学校に通わせるために、私がピアノやバレェをやりたいと言っても全て断られました。そのうえ私にも塾に通わせるという話もありません。その諸々の不公平を1度母にぶつけたことがあるのですが、「女の子に教養なんて必要ない」と言われてしまったのです。私は悔しくて仕方ありませんでした。そしてその感情は、母よりむしろ兄に対して向けていました。ただ、今世で男性の不条理も味わうとまた考えが変わりました。スキルを磨かずに他人の人生に責任を取れない男に価値はないのです。それはあちらの世界でも、こちらの世界でも変わりません。母はそのことを知っていたから、兄へ教育の投資を優先していたのです。かくいう兄も、けして妹なんてほっといて俺に金を使えなどと自ら言っていた訳ではありませんでした。いまの私と同じように、それが当然だと幼少から押し付けられていただけなのです。そのことを、前世のうちに分かってあげられればと、今になって思ってしまいますね。まぁ、だからといって赦した訳でもないのですけどね。
ダイアナとの邂逅と婚約は、まさにその男性の不条理によって結ばれた縁でした。私の王位継承を確実にしたい父上は、公爵のご令嬢で高い魔力を持つダイアナとの婚約の話を持ってきました。持ってきた、と拒否権があるような言い方ですが、実際は強制なのですけどね。季節は春で、後数日でこの学校へ入学するという日でした。私とダイアナは、その入学式ではじめて顔を合わせることになったのです。私は内心気乗りがしませんでした。お察しの通り、ダイアナは『マイ・エンドレス・ラブ』において主人公のライバルになる女の子なのです。そして、あなたには想像もできないと思いますが、ゲームではとても卑劣な性格であると設定されていました。私に対しては猫を被り、影で主人公の女の子をいじめる、あちらの世界ではそのようなキャラクターのことを「悪役令嬢」と呼ぶのです。私は嫌々ながらも、入学式に学校でダイアナと顔を合わせました。願わくは『マイ・エンドレス・ラブ』と同じようにいつか主人公の女の子が私の許に表れて、私を悪役令嬢から解放してくれると信じて。
しかしダイアナは、『マイ・エンドレス・ラブ』の彼女とはまったく違っていました。あのつり上がった状態で固定してしまっていたきつい目許は柔らかく、どこにもゲームで表現された攻撃性を見て取れない容貌になっていました。すらっとしたスタイル、新雪のような白肌、セミロングの茶髪、小さな鼻、ラピスラズリ瞳。驚く私の顔を見て、ダイアナは大丈夫ですか? と心配してくれました。その声音にも、勿論攻撃性は微塵も伺えませんでした。
当初、私は全てが同じな訳がないよねと一先ず納得していました。現に全てが同じではないということは、私自身が証明していることでもあったからです。むしろ、喜ばしいことだと思いました。私はデザインとして描き出したキャラクターは等しくとは言えませんが愛していたので、特別なきっかけによってある種の改心をして私の前に現れたと思えば、とても素晴らしいことように思えたのです。そして13年と男の体で過ごしてきたせいか、異性としてとても魅力的で美しいと彼女を捉えることもできたのです。
ダイアナも転生者であると気が付いたのは、それから1ヶ月が経ってからでした。ゲームでのダイアナはすぐに多数の取り巻きを作ってその中心にいたのですが、こちらのダイアナは1人もしくは数人で慎ましく過ごしていました。私はたまたま学校の中庭で1人でいるダイアナを見かけたのです。近づいてみると、紙に何かをしたためていました。さらに近づくと、その内容が確認できました。それは相関図でした。そこには私を含め馴染みのある複数の名前、そして『マイ・エンドレス・ラブ』と書かれていました。あちらの世界の文字で。
私は彼女も転生者であり、『マイ・エンドレス・ラブ』をプレイしてくれたユーザーだったとすぐに理解しました。そしてそこから浮き彫りになる事実に、私は胸を締め付けられる思いになりました。ゲームでのダイアナが卑劣な性格になったのは、一重に全てがある女性の不条理によってねじ曲げられたが故でした。王族の、それも王位継承の筆頭の男性の許に嫁ぎ男子を産むこと、それだけを唯一の価値として教育・洗脳されたがために生じた攻撃性でした。それはストーリーでも明かになり、主人公の女の子や私に憐れまれ赦しを与えられるも、結局彼女は変わることができませんでした。ライオネル・リッチャーのルートは、そういう悲しいお話でもあったのです。いまダイアナの中にいる女の子、いえ、前世が女性であるという確証はないのですが、乙女ゲームのユーザーなのですから女の子で間違いないと思います、その彼女だって、同じような教育や洗脳を受けたはずです。それはあちらの世界の価値観を保持した状態では到底耐えられるようなものではないと思います。しかし彼女はそれをはね除けて、慈悲と公平性のある人間として、いま私のすぐ目の前にいるのです。それは、私がゲームの中の彼女に求めたIFの姿でもあったのです。
ダイアナは当然、私の存在に気付き驚きました。「ど、どうしたのですか?」
彼女は驚いて聞きます。私は答えます。「1人で何をしているのか気になりまして」
もちろん最初の動機はそうでしたので。ダイアナは答えます。「古代の文字の勉強をしていたのです」
どうやらいまの状況を誰かに見られた際は、こうやって誤魔化してきたらしい。私も同じように騙されてあげました。「なるほど。ふふ、何て書いてるか全然分からないですね」
ダイアナは微笑む。「ふふ、そうでしょう」
それ以後、私は学校でダイアナが1人で何かをしているのを見かけると、透明化の呪文を使用し彼女が相関図を書いてまで成し遂げたい何かについて探りました。どうやらダイアナは、私とこのまま結ばれたうえで『マイ・エンドレス・ラブ』のメイン・キャラクター全員の恋が恙無く成就するルートを開拓しようとしているのです。――ええ、それはとても大変なことですよ。選択肢に対して決められた行動しかしないゲームと違って私たちは自身の自由意志で動くわけですから、普通に考えたらうまくいくはずがないのです。しかし、ダイアナの気持ちもとても分かるのです。全てのルートではないのですが、『マイ・エンドレス・ラブ』は外的要因によって心に問題を抱えてしまった女の子に振り回される男の子を、主人公の女の子が解放してあげるのが基本的な流れになっていました。そして相手側の女の子は基本的に救われない。この手の乙女ゲームをやっている女の子は、現実では問題を抱えた周囲の人間から理不尽な扱いをされて泣き寝入りをしている子が多いですから、全てを助けようなんてスーパーヒーロー的展開はあまり好まれないんです。私もそうでした。所謂「ざまぁみさらせ」の要素を多分に求められているのです。ただし、ダイアナは違ったようです。きっと主人公の女の子になってプレイしながら、彼女たちに深く同情したのでしょう。そしてこちらの世界の彼女たちの1人として転生し、シナリオに縛られず自由に動けるようになった。ならば全員が幸せになれるルートを探し出したい、それ以外考えられないということなのでしょう。
美しい、と私はダイアナのことを改めて想いました。そして、陰ながらサポートしたいと思いました。きっと彼女は、ゲームそのままのライオネル・リッチャーを好いてるのでしょうからね。それから私はダイアナの根回しを事前に察知して、暗に手助けしてきました。私のことはバレていません。何でこうもうまくことが運ぶのだろうと彼女は思っていることでしょう。そしていよいよ来週、我々の運命が大きく変わることになる。『マイ・エンドレス・ラブ』の主人公にあたる女の子が、我が校に編入してくるのです。待ち遠しいですよ、彼女の計画が遂に花開く、それを間近で見届けることが。すべてがうまくいき、彼女が私に向けて満面の笑み浮かべてくれることが。
ライオネルサマー、ライオネルサマー。
おっと、ダイアナが私を呼んでいるようですね。本日はありがとうございました。おかげで心がすっきりしました。このお礼はまた後日させて頂きます。
っと、失礼するその前に。
『ジップ・ザ・リップ』
本日お聞き頂いた内容を他言できないようにする呪いを掛けさせていただきました。もしあなたが誰かに話そうとすると思考が強制的にフリーズし、なにも口にできなくなります。申し訳ございません。ただ、この処置はあなたを信頼していないからではないのです。むしろあなたの身を守るために必要なことなんです。どうやら、我々がやろうとしていることを妨害してくる個人あるいは勢力がいるようなのです。その妨害者にあなたが捕まってしまったら、どのような拷問を受けるか分かったものじゃありません。そう思わせるほどに、執拗で粘着的な相手なのです。果たしてその正体とは? ありきたりな国家中枢の権力闘争の工作員か、はたまた別の転生者の陰謀か? ねぇ、面白くなってきたでしょう? もし更なる興味が沸いてきたのでしたら、定期的にこれからのことをお話しして差し上げます。私もアウトプットの場は確保しておきたいので。
ライオネルサマー。
流石にそろそろ、ダイアナの許にいかないといけませんね。あっ、最後に伝え忘れたことがありました。もしこの呪いを無理やり解呪しようとしたら、記憶が全てふっとんで頭がパーッになってしまいますので、悪しからず。――ふふ、ではでは、アスタラビスタ、ベイビー。
本作は諏訪部順一さんが限界女オタクみたいな喋り方をしてるところをみてみたいという気持ちで書き殴りました、後悔はありません。
また本作が気に入っていただけましたら、作者の別作品も読んでいただけると嬉しいです。
『異世界はラブソングでできている。~ロックンロールは鳴り止まない~』
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