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p.4

「大丈夫です。あの、勘違いとはいえ、私のこと、心配してくれたんですよね。ありがとうございます」


 ペコリと頭を下げてから、晴彦さんの顔をそっと覗き込むと、彼は罰が悪そうにそっぽを向いていた。


 そんな彼の横顔にドキリと心臓が跳ねたことを、今でもハッキリと覚えている。あの時、私は晴彦さんに恋をしたのだ。


 それから、私は彼らとしばらく話をした。彼らは地元の人で、私よりも5つ年上だということ。夏の間は、近くの海水浴場でライフセイバーのアルバイトをしていること。それから、丘の上に秘密基地があること。


 出会ったばかりの大人の男の人たちと、ひと時を過ごすことに、私は、いけないことをしている気がしながらも、白鳥さんのサラリとしたスマートさと、無口で無愛想な晴彦さんが時折見せる優しさと歯に噛んだような笑顔に、ドキドキとワクワクが抑えられずにいた。


 次の日も、その次の日も、私は彼らと行動を共にした。海沿いの喫茶店で特大のかき氷を食べたり、浜辺でかわいいピンク色の貝を探したり。私のリクエストで、花火もした。けれど、夜遅くなって、親に心配をかけてはいけないと、堅物な大人二人が言うので、まだ明るい夕方に渋々やった。あまり綺麗じゃなくて、そのあと私は不機嫌になったんだっけ。


 彼らとの時間はあっという間で、「また来年必ず遊ぼう」と約束をして、15の夏は終わった。


 翌年の夏、期待と不安を胸に海を眺めていると、彼らは離れていた時間など感じさせない自然さで私に声をかけてくれた。


 高校生になっていた私を、二人が相変わらず子供扱いすることに拗ねると、白鳥さんは持ち前のスマートさで華麗に受け流し、晴彦さんは困ったようにそっぽを向いた。


 白鳥さんはいつだって、大人の余裕で私を見守ってくれていた。それとは対照的に、不器用で無愛想な晴彦さんは、目が離せないと言わんばかりに、いつもブスッと私の隣にいた。そんな不器用な優しさが、私は嬉しかった。


 友人の中には、恋愛で少し先をいく者たちが増えた17の夏。皆がソワソワとしていて、私もそのうちの一人だった。


 その年、私は白鳥さんの目を盗んで、晴彦さんと二人きりになると、思い切って「付き合ってほしい」と胸の内を伝えた。


 しかし、「高校生とは付き合えない」と、速攻で振られてしまった。このことは、白鳥さんは知らないだろう。私は何事もなかったような素振りをして過ごしていたし、晴彦さんもいつも通りだったから。

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