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8話

「あはははは、魔法って必中じゃないじゃん? だからもしかしたらカイルを狙った魔法が外れてルミリナちゃんにあたっちゃうかもなーなんて?」

「まぁ、確かに必中じゃないけど別に命中精度自体悪く無いだろ」

「そうだけどねー? 聖者ちゃんに危害を加えるのはちょっと心が引けるのよねー?」

「俺に魔法をぶち当てるのは良いのかよ」

「うん。だって君は私の魔法を受けても痛いで済むからね」


 平然と言いのけるルッカさん。

 確かに俺はルッカさんの魔法を受けても俺は痛いで済むが、俺の同級生でルッカさんの魔法を受けて病院送りにならない人は多分居ない。

 あぁ、でも、ファイターのデビッドなら気合と根性で耐え抜いて痛い、で済ませられるかもしれない。


「カイルさんとルッカさんって、仲良いんですね」


 俺とルッカさんのやり取りを聞いている、ルミリナさんが俺とルッカさんをチラチラと見ながら小声で言った。


「ま、まさか!? 俺に対して平気で魔法をぶち当てようとする脳筋ウィザードと仲が言い訳無いって」

「こんな、女の子に対して気遣いの欠片も無い勉学や鍛錬しか能の無いナイトと仲が良いなんて有り得ないよ?」


 俺とルッカさんが、ルミリナさんに対して同時に言う。


「何だかルッカさんが羨ましいです、同じ学園でしたから仕方が無いんですけど」


 ルミリナさんが、少しうつむきながら、やはり小声で言った。


「ルミリナちゃん? もしかして、ナイトの癖してガサツでデリカシーの無いカイルが好きだったりしちゃうの? ナイトにあこがれるなら、もっとカッコ良くって白馬が似合いそうな人は沢山居るよ?」


 ルッカさんがきょとんとした表情を見せた後、捲し立てるかのような早口でルミリナさんに言う。

 確かに俺は女の子に対して、世間一般で言われるモテ男の様な事を一切していない以上ルッカさんに反論できないが、でもなんかやっぱりムカついて来るな。


「わ、わ、わ、す、好きなんて事無いですよ!? カイルさんとは今日初めて会った訳ですし、初対面の人を好きになるなんて有り得ませんよ」


 ルミリナさんが両手の平をルッカさんに向け左右に大きく振り否定の仕草を見せる。

 確かにルミリナさんの言う通り初対面の異性を好きになるなんてまず有り得ないけど、だからと言ってここまで露骨に否定されてしまうと俺の心から何か傷を受けた様な悲鳴が聞こえた気がした。


「ほんとぉー? この鈍感君、こう見えてセザール学園外の女の子から評判良いのよねー? 実はルミリナちゃんもとっくにカイルの噂を知ってたりしてー?」


 ルッカさんが、悪戯な笑みを見せながらルミリナさんの頬を人差し指でツンツンと突きからかって見せる。


「そ、そんな事ありません、カイルさんの事は今日初めて知りましたから」


 ルミリナさんは、少々目を見開きながら頭を左右にぶんぶんと振り否定する。


「は? 俺がセザール学園外の女の子から評判が良い? 何の間違いだ?」


 そんな話セザール学園に居た時に聞いた記憶が無い。


「知らなかったの? セザール学園の女の子達もそれ位の噂話はしてたと思うけど、君って鈍感過ぎない?」

「いつ? 何処で?」

「最低でも数日に1度、クラス内、食堂、ってところかしら?」


 つまり、日常的に聞けると言う訳だが、残念ながら記憶に存在しない。

 多分、勉学や鍛錬の事ばかり考えていて周囲の話なんて一切興味関心を持っていなかったからだと思うが。


「記憶に無いな、そもそも高々セザール学園の1生徒如きである俺なんかがセザール学園外の人間に知られるなんて考え難いが、誰かが流したデマとかじゃないのか?」

「ホント、君は女の子に対して鈍感なんだね。君の友達のデビッドなんて周りの誰かが女の子の話題をしようものなら我関せずとその話題に入ってたじゃん?」


 確かに、ルッカさんが言う通りデビッドは女の子の話題となれば食い付いていた、俺に対しても、昨日はあの子に振られた先週はこの子に振られた、どうすれば恋人関係になっているあいつ等と同じ様に俺に恋人が出来るのだと、常日頃言っていた気がする。

 あー、そう言えばデビッドが俺に対して、お前はセザール学園外の女の子からも人気があって羨ましいと言われた様な気がする。

 だがしかし、誰かから俺に対して直接恋人になってくれと言われた覚えはないな。

 

 まぁ、そういう事も手伝って周りが言う、俺が女の子に人気があると言う話に対して話半分以上に聞く気は湧かなかった。

 でも、そう言えばレンジャー学部に居たルッド君が、俺を取ろうとする女の子同士の妨害合戦が凄いって話を聞いた事があったな。

 何やら、抜け駆けをして俺に想いをぶつけようとした女の子は、周りの女の子達から主に精神面でぼっこぼこにされ立ち直れなくなるとか。

 だから誰も俺に手出しができない、なんて言ってた様な。

 真実がどうであれ、俺は鍛錬と勉学以外大して興味が無い以上割とどうでも良い話なんだけども。


「あー、そう言えばそうだったなぁ、一人に狙いを絞らないのに上手くいく訳無いって思いながらデビッドの話を聞いてたな」

「ほんっと、そうよね、私も見聞きしていて呆れたわよ。別に容姿も悪く無いし女の子によってはアレが良いなんて娘もいて、それに彼、国王軍に入った訳だから将来性もあるのに、女の子ならなりふり構わず攻め込む事さえなければ今頃恋人の1人位出来てたって思うわ」


 ルッカさんが、額に手を充てながら大き目のため息をつく。


「そう言えば以前、デビッドなんて止めた方が良いって友達に話たって言ってたっけ」

「そうよ、友達が女にだらしない男とくっついて飽きたら捨てられる様子なんて見てられないじゃない? 友達として助けれる範囲で助けるのはとーぜんよ」


 俺なら、その友達に最低限の情報を教えて後は好きにすれば良いと言うかそもそも関与しない。態々友達が傷付かない様な行動をするルッカさんは友達想いと感じる。

 まぁ、その辺他人の意思を尊重するかどうかの差だけなのかもしれないが。


「ルッカさんって優しいんですね」

「まっさかぁ、私はとーぜんの事をやってるだけよ」


 ルミリナさんに褒められ謙遜しているルッカさんだが、何処か嬉しそうな空気を隠し切れないでいるみたいだ。

 大体10秒位か? ルッカさんがルミリナさんに褒められた余韻に浸らせた後で俺は話を本線へ戻すべく、口を開く。


「それで、強行策で行けば良いのか?」

「とーぜんじゃん? カイル、結界系の魔法も扱えるよね? あれって神聖魔法でしょ?」


 ルッカさんは、ご機嫌な空気のまま気安く言う。

 確かに、俺が扱える神聖魔法の中には野営を行う際魔物達が近付けない様にする為の結界魔法位はあるが。

 その結界が見習いオークを押し返させる力があるかと言われたら絶対じゃない。

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