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6話

「いや、俺の方こそ初めてで上手くいかないかもしれないから気にしなくて良いよ。えっと、リンカさん? 俺とルッカさんとルミリナさんの3人で依頼をこなしたいと思うんだけど、大丈夫ですか?」


 俺は、ルミリナさんの返事を待たず勢いに任せリンカさんに尋ねる。


「特に問題ありません。もしもルミリナさんが一般的なプリーストでしたら人生の経験者として忠告位は致しましたが。そうですね、ルミリナさんがカイル様とルッカ様と同行するのでしたら、Eランクの依頼をあっせんしますね」


 リンカさんは、俺達に適任な3枚の依頼書を見繕い机の上に並べた。

 それぞれの依頼書の内容は大雑把に、次の通りだった。


・ホブゴブリンの討伐


『セザールタウン近郊の平原にて、ホブゴブリンを確認した。奴はゴブリンを束ね周囲の農作物を略奪する。農作物への被害が深刻化する前に討伐を願いたい』


・ワーラットの討伐


『セザールタウン下水エリアにてワーラットが巣を作っている所を発見した。このまま放置し数が増えてしまえばセザールタウン内に現れセザールタウンを荒らしに来るだろう。そうなる前にワーラットを討伐して頂きたい』


・見習いオークの討伐


『セザールタウン近郊にある森林エリアに手見習いオークを確認した。こいつ等を放置すればゆくゆくはオークとなり近隣の村に対し人的被害を及ぼす存在になりかねない、そうなる前に見習いの内に討伐を願いたい』


「何だか弱そうな魔物ね」


 依頼書の内容を眺めたルッカさんが、不満そうに呟く。

 ルッカさんの言う通り、俺とルッカさんどころか1人でも討伐出来てしまいそうな魔物だが、これはパーティ戦闘の実戦練習と割り切れば問題無いな。


「でしょうね、それは仕方がありませんが弱いと感じる魔物を討伐しても依頼達成時の報奨金は出ますのでご安心下さい」


 リンカさんが言うその報奨金ってのは、装備品の修繕や消耗品に掛かる経費を除いた上で一般人が普通に生活する為に必要なお金、10日分程だった。

 俺としては、随分と弱そうな魔物を討伐するにしては高い報奨金が手に入ると感じたが……。


「分かりました。見習いオークの討伐でお願いします」


 俺は、3つの依頼書に書かれている討伐対象の中で最も強そうに見える、見習いオークの討伐を選んだ。

 俺の返事を受けたリンカさんはこの依頼に対する手続きを済ませ「少々お待ちください」と俺に告げ席を立ち何かを取りに行った。

 3分程経った所で、リンカさんは2枚のカードを手に持ち戻って来た。

 そのカードは掌に納まる程の大きさで、白に近い灰色をしており金属光沢みたいな光を放っている。

 どうやら鉄ではなさそうで、何か特殊な魔力を秘めた金属なのかもしれない。


「これが冒険者カードで、冒険者の名前とランクが書かれています。また、魔物を討伐した際出現する魔石に近付ける事で冒険者カード内にその魔石を吸収させる事が出来ます。冒険者ギルドは、その魔石を討伐の証拠とし冒険者の方が請け負った依頼を達成したかの判断を致します」


 リンカさんは、俺の名前が書かれた冒険者カードを俺に、ルッカさんの名前が書かれた冒険者カードをルッカさんに渡した。


「御武運をお祈りいたします」


 リンカさんに見送られ、俺達は冒険者として初めての依頼をこなすべく冒険者ギルドを後にした。

 さて、今の時刻は大体14時位と言った所だ。

 セザールタウンを出て、今回の依頼での討伐対象である見習いオークが生息している森林エリアとの距離は大体20kmで、馬車を乗りそのエリアの近くに行くだけでも2時間位は掛かりそうだ。

 そこから森林エリアの内部に入り討伐対象を捜索するとなれば、更に数時間の時間が必要になりそうだ。

 今からセザールタウンを出たら間違い無く日が暮れてしまうだろう。

 一応、神聖魔法である『照明ライティング』の魔法を使えば周囲の明かりを確保する事が可能だが、俺の魔法では昼間と同じレベルの視界を確保する事は出来ない。

 神聖魔法だから、ルミリナさんも扱える可能性は高いが、それでも厳しいだろう。

 視界を十分に確保出来ないのは危険だろう、ならば今日は準備だけ済ませセザールタウンは明朝出発する方が無難か。

 俺の考えはまとまった。ルッカさんやルミリナさんの意見はどうだろうか?


「これから初めての依頼をこなす事になるけど、どうする?」

「討伐対象は弱そうな魔物だよね? じゃ、パパっと行ってササッと終わらせよ?」


 つまり、今日中に終わらせようと言うのがルッカさんの意見だ。

 ウィザードにも拘らず接近戦を好んだり、割と脳筋な一面を持っている彼女からしたら妥当な判断か。


「ルミリナさんはどう思う?」


 俺の問い掛けに対し、ルミリナさんは少し目を見開き、両手をぱたぱたとさせあたふたした仕草を見せる。

 特に自分の考えを言うつもりは無く、俺達に合わせるつもりだったのだろうか?


「あ、は、はい。私はカイルさんとルッカさんが決めた事に合わせます」


 やはりそうか。

 しかし、そうなると俺とルッカさんで意見が真っ二つに別れてしまうところだ。

 さて、どうしたものか。


「で、カイル? 君の意見はどうなの?」


 この流れだと、当然ルッカさんは俺の意見を聞くよな。


「そうだな、俺としたら今日は準備だけ整えて明朝目的の場所へ向かいたい」

「どーして?」

「目的地に辿り着く頃には日が暮れてしまい、見習いオークの討伐を始める頃には暗闇の中闘う事になる上に帰り道も暗闇の中歩かなければならなくて危険だ」


 一応、理由を説明したが、ルッカさんが納得するとは思えない。


「ふーん? そーなの? 天下のセザール学園主席のカイル君って意外に憶病なんだねー?」


 ルッカさんが両手を腰の後ろで組みながら、俺を見上げ言う。

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