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5話

「ダメです。これもカオス学長からの命令ですので、そもそも私の裁量で貴方達の冒険者ランクを変える事は出来ません」


 リンカさんがカオス学長の名前を出した。

 ルッカさんは我の強い性格である事を見極めたのだろうか? いや、それ位の情報はカオス学長が伝えていても何の不思議も無いか。


「カオス学長の命令なら仕方ないよ」

「そうだけど」


 俺がルッカさんをたしなめるも、ルッカさんは何処か不服そうにしている。


「ですが、Dランクの依頼を率なくこなしていけば直ぐにでもCランクに上がれますからご安心下さい」


 リンカさんがすぐさまルッカさんに対するフォローを入れた。

 そのフォローは随分と的確と感じるが仕事柄、冒険者の性格を予想する技術が高くなるのだろうか?


「なら問題無さそうだね」


 俺は、リンカさんのフォローに合わせルッカさんに言う。


「君がそう言うなら合わせるよ」


 ルッカさんは渋々としながら、まるでリンカさんに従った訳じゃないと言いいたげだ。


「あ、あの……カイルさん、ですよね?」


 ルッカさんが渋々納得した際に生じた数秒の沈黙に対し、先程リンカさんから突っぱねられ俺の左側でおろおろとしていたプリーストの女の子が俺に話掛けて来た。


「そうだけど、君は?」


 この娘の聞き方から俺の事を知っている様だけど、当然ながら俺はこの娘の事を全く知らない。


「その、わ、わたし、ルミリナ・ルーツって言います」

「ルーツ?」


 が、彼女の苗字を聞いて少しばかり思考が停止してしまう。

 ルーツ家、確か俺の祖父がその家の事を度々語っていた。

 何だったか、確か聖者の血を引く家がどうたらこうたら、俺の父(つまり曾祖父)はその聖者と凄い冒険をしてセザール国を救ったとかどうたらこうたら。

 まだ幼少だった俺は祖父の話を興味本位にしか聞いていなかったのだが。

 いや、それだけじゃなく確か5年位前だろうか? 両親が強盗だったかに惨殺される事件があって、それがルーツ家だった様な気がするが、如何せん5年も前の話で記憶があやふやどころではない。

 だからと言って、間違い無く思い出せば心の傷を抉るであろう質問内容になるはずなので、目の前のルミリナさんに聞く事も出来ない。


「どうしたの? カイル? この娘の事知ってるの?」


 ルッカさんが、この娘は初対面のハズなのにと言いたげに尋ねる。


「いや、知らない。けど、ルッカさん。さっき学長の前で言っていた聖者について詳しく知っている事ってない?」

「学長に言った事以上知らないよ」

「だよな、俺も祖父からルーツ家が聖者の血を引く家系って話を聞かされた事位しか知らないんだ」


 俺の言葉を聞いたルミリナさんが、何かを言いたげにそわそわとし出している。


「えっと、その、カイルさんの言う通り、私……」


 ルミリナさんが恥ずかし気に、自信無さそうに言う。


「やっぱり、そうだったんだ」

「は、はい、でも、私はその、聖者の血は引いていますけど神聖魔法は普通でしかなくって、あはは……聖者の力は全部お姉ちゃんが引き継いじゃって、で、でもお姉ちゃんは凄いんですよ」


 自信無さげに言うルミリナさんだけど、姉の話になると急にハキハキとしゃべり出した。

 ルミリナさんの姉は余程強力な神聖魔法使いなのだろうか? もしも、聖神の杖との因果関係があるとするならばルミリナさんの姉と言う事になりそうだけども。

 さて、確かルミリナさんはお金に困っているみたいだったな。

 聖神の杖の入手に近付く為にもルミリナさんとの関りを持つべきだな。


「そうなんだ、ルミリナさんって凄いんだね」

「え?え? 私じゃなくって凄いのはお姉ちゃんですよ?」

「ははは、俺もセザール学園を首席で卒業したけど自分の実力は普通としか思って無くってさ、だからルミリナさんも普通と言っても実は凄いんじゃないって思ってさ」


 俺の言葉を聞いたルッカさんが何故だかムスッッとしている。

 出来る事ならルミリナさんとの関りを持つ為に援護して欲しい所だけど。


「はわわ!? そ、そんな事無いです」


 俺の言葉に対し謙遜するルミリナさん。

 本当に一般的な駆け出しプリーストと同じレベルの神聖魔法しか扱えないかもしれないが、彼女の姉と接点を持てるならば全く問題無いだろう。


「それは俺が決める事だから問題無いよ、ね、ルッカさん? ルッカさんって困っている人を見たら放っておけないよね?」


 俺はルッカさんを味方につける様に促す。


「そうね、君の言う通りよ」


 少しばかり不機嫌そうに返事をするルッカさんだ。

 今のやり取りでルッカさんが不機嫌になる事を行ったとは思えないが、まぁ良いや。


「それで、俺達は今日初めて冒険者としての依頼を受けるんだけど、よかったらルミリナさんも一緒にどう?」

「カ、カイルさんは最初からDランクじゃないですか!? 私はFランクですからカイルさん達の足を引っ張っちゃいます」


 謙遜して見せるルミリナさん。

 これならば聖者の血が無くても性格の良さを考慮して一緒に依頼をこなしたいって気持ちにさせてくれる。

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