41話
「上等じゃない! アンタの魔法位受け切ってやるんだからっ!」
ダストさんの話を聞いてもルッカさんが引き下がる気がない! このままではルッカさんが危ない!
「無茶だ! ルッカさん!」
俺は、ルッカさんの目の前に立ちはだかると、ダストさんの魔法を受け止めるべく鉄製の盾を身構える。
自分の魔法抵抗のお陰で炎の魔法を受けても一瞬で溶けると言う事は無いが、ダストさんの魔法を前にはその一瞬が数秒に変わるだけかもしれないが、それでも何もしないよりはマシだ!
「間抜けな奴め! 女にうつつを抜かし自ら死にに来るとはな!」
「そんなんじゃない! 俺は、大切な人すら守れない情けない人間で居たく無いだけだ!」
「カイル!? 魔法防御力なら私の方が上なのにどうして!」
自分の前に立ち塞がった俺を、ルッカさんが跳ね除けようとするが間に合わず、ダストさんが放った巨大な炎の玉が俺達の目下に迫り、紅蓮の業火が俺を包み込む。
「ぐっ、ぐわああああああ!!!!」
俺の魔法抵抗程度が施された鉄製の盾なんて、ダストさんが放った業火の前では雪が溶けるかの様にあっけなくドロドロに溶けてしまいその威力は減衰しないよりはマシ程度でしかなかった。
盾がダメならばと、とっさにホールス・ソーラを盾の代わりにした結果今度はこの炎の玉の威力を大きく減衰する事に成功、自分を包み込んだ紅蓮の業火は俺の水魔法で消火が出来、この攻撃で受けた傷は治療術を使い治す。
「カ、カイル?」
ダストさんが放つ魔法を俺が受け止めたお陰でルッカさんへのダメージは比較的軽く済んでいる様だ。
それでも、治療術をかけないと良くは無いだろう。
「つっ大丈夫だ」
俺はルッカさんに対しても治療術を施しルッカさんが受けたダメージを癒す。
「ね、ねぇ? カイル? 魔法力」
心配そうに尋ねるルッカさん。
ルッカさんが指摘する通りそれなりに魔法を使って来た今、それなりに消耗している。
今はまだ余力があるが、いつかどこかで俺の魔力が底尽きる時は来るだろう。
「心配するな、大丈夫だ」
俺は、ルッカさんを不安にさせないよう少しだけ嘘を付く。
「カイル……」
「今度こそ、逃げてくれ。ルッカさんが逃げないなら代わりに俺が迎え討つ」
俺はホールス・ソーラを両手で握り締め身構える。
ルッカさんが数秒押し黙り、
「分かった、さっきの攻撃だって君が盾になってくれなかったら私も致命傷を受けていた」
ルッカさんはダストさんに背を向け走り出した。
「ありがとう」
撤退の決断をしてくれた。けれど、逃げ切れるかどうかは分からない。
いや、そんな事考えている場合じゃない、逃げ切るしかないんだ!
「けっけっけ、逃げても無駄だぜ!」
ダストさんは、目の前にいる俺を無視しルッカさんの方目掛け雷魔法を放つ。
ルッカさんの頭上付近に暗雲が立ち込め、ルッカさん目掛け1筋の雷撃が放たれる。
が、ルッカさんは咄嗟に横方向に飛び込む事でその雷撃を回避、雷が直撃した地面には狭いながらも人一人が潜れそうなクレーターが発生していた。
もしも直撃していたのならば無事では済まなさそうだ。
……ダストさんの狙いはルッカさんか? でも、どうして? 理由は分からない。
けれど、ルッカさんが狙われている以上、ルッカさんと離れない様にしなければならない。
俺はルッカさんに追いつき、走る速度を合わせながらヴァイス・リッターに向け駆ける。
最初の風魔法で崩壊したエリアを抜けるといつも通りの街道が視界に広がる。
さらにその遥か先には今さっきから始まる戦闘を見た人達が避難をしている姿目に映る。
このまま真っ直ぐ逃げてしまえば彼等を巻き込んでしまうかしれない。
……どうする? 今はこんな事を考えている余裕はないのかもしれないが、可能な限り犠牲は減らしたい。
「こっちだ」
俺は路地裏に向ける街道を見付け、ルッカさんと共に路地裏の中へ逃げ込む。
ここでダストさんから魔法を放たれてしまえば建物に被害が発生してしまうが、それでも人的被害が出るよりはマシだ。
「そうだね」
ルッカさんも俺と同じ事を考えているのか、特に反対する事無く路地裏へ向かい駆ける。
「けっけっけ、無駄無駄ッ!」
頭上から俺達を追いかけるダストさんが俺達目掛けて魔法の詠唱を始める。
走って逃げながらダストさんの方をチラ見すると、どうやら爆裂系の魔法を産み出そうとしている事が分かった。
俺はその魔法に対し、多少なりとも受けるダメージを低減させる為、水防壁を自分とルッカさんに掛ける。
自分達の身体に水の膜を張る事で、炎と風の混合属性である爆裂魔法の内、炎部分のダメージを低減させる為だ。
「来るぞ!」




