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39話

「そこまで言うなら考えなくもないけど、確かに借りを作るのもなんだしね」


 ルッカさんが深いため息をついてまたしても小声で、


「どうしてそうなるのよ」

「うん? 何が?」

「何でもないわよ! ほら、さっさと食べて、食べたら私が食器片づけるから終わったらヴァイス・リッターに行くわよ!」

 

 少々早口でルッカさんが捲し立てて来た。


「あ、ああ」

 

 俺は皿の上に残っているソーセージとパンを急ぎめに食した。


「食べた? 食器片づけるわよ」

 

 俺が食事を終えた事を確認したルッカさんは、空いた食器をキッチンへと運んでいった。

 それ位自分でやるのにと毎回思うのであるが、言った所で結局止められるだけだからまぁ良いかと結局思う様になった訳だったりする。

 …………あれ? 何だろう? 血が騒いでいる気がする。

 

 突然、俺の身体から異変を感じた。

 賢神の石が安置されている部屋に設置されていた魔法陣に一人で踏み込んだ時の、それよりも弱いけれども身体の奥底から悪寒を感じる、何とも言い難い嫌な感覚が。

 何だ、何かを、何者かの魔力を感じる。

 

 ―――嫌な予感しかしない。

 俺の頬を1筋の汗が伝う。

 俺は立ち上がり、ホールス・ソーラを抜刀し身構える。


「ねぇ、カイル? どうしたの?」

「嫌な予感がする! キース・クレッセントを身構えて!」

 

 俺はルッカさんに対し強い口調で告げる。


「なんで?」

 

 俺の言葉に対して訳が分からないと感じているルッカさんはキョトンとした表情を見せる。


「良いから早く!」

 

 よく分からない、いや何と無く賢神の石の魔力かも知れないと感じる俺は魔法抵抗レジストを自分とルッカさんにかける。

 ……もしもこの魔力の主が賢神の石、ダストさんだった場合はこの程度の魔法抵抗レジストなんて掛ける意味すら無いのかもしれないが、それでもこれのお陰でギリギリ死なない可能性だってある。


「分かったわよ」

 

 ルッカさんは、渋々キース・クレッセントを手に持った。


「来る、伏せろ!」

 

 直感的に何かが来ると感じた俺は叫び、身を屈める。

 と、ほぼ同時に建物の外から凄まじい暴風が吹き荒れる音が聞こえる!

 多分賢神の石が強力な風魔法を使ったのだろう。

 

 昨日見たダストさんの魔法を見る限りこんな建物は一瞬で破壊されてしまうだろう。

 俺は身を屈めながら建物が倒壊した時に備え防御障壁プロテクションを自分とルッカさんにかける。

 ゴォォォォォォ、空を切る、凄まじい音が聞こえる。


 その直後、グラグラグラと自宅が激しく揺れたかと思えば、ゴゴゴゴゴゴと激しい轟音を立てながら崩れ出した!


「カイル!」


 ルッカさんの叫び声が聞こえる。


「ルッカさん!」


 俺もルッカさんに対し叫び声を上げる。

 ガラガラガラガラ、崩れ出した建物が俺達の頭から降り注ぎ埋められてしまう!

 幸いな事に、予めかけておいた防御障壁プロテクションのお陰で建物の素材であるレンガが全身に当たっても少々痛いで済んだ。


 どうやら生き埋めになってしまったみたいだけど、これ位なら何かしらの魔法を使えば脱出する事は容易だ。

 とりあえずは風魔法を使って俺の周囲に積みあがっているレンガをどかそう。

 そう思ったのも束の間。


 ゴォォォォォォォォ! 再び激しい風の音が俺の耳に入る、かと思えば俺の周囲に積みあがっているレンガが宙を舞い、突然俺は太陽の光を視界に認識する事が出来た、なんて思った次の瞬間には俺の身体は宙へと舞い上がる、いや天高く吹き飛ばされていると言うべきか。

 全身が激しく回転している!? 世界がぐるぐると回っているみたいで何が何だか分からない! これはダストさんの魔法が直撃しているのか!? 俺の身体を暴風が切り裂き少しばかり痛い。けれど、何故か痛いで済んでしまっている。昨日マジックビジョン越しに見たダストさんの魔法の威力はもっともっと高かった何故だ?


「カイル!」


 ルッカさんが再度俺の名前を叫ぶ。

 激しい風に吹き飛ばされながらもルッカさんが地面に踏み留まっている事が確認できた。

 ルッカさんがこの激しい風で吹き飛んでいないのはキース・クレッセントが魔法防御力を上げてくれたお陰だろうか?


「俺は大丈夫だ!」


 俺は激しい風に吹き飛ばされながらもルッカさんに返事をする。

 10秒位だろうか? 激しい風により上下左右激しく身体を宙で舞わされたところでダストさんの風魔法が収まったのか俺の身体は純粋な落下運動へと移行し、地面に叩きつけられる事でようやく地上へと帰って来る事が出来た。

 物凄い音を立て、地面に叩きつけられたが防御障壁プロテクションを掛けていたおかげで、立ち上がる事が厳しい位の激痛程度で済んだ。

 恐らく骨は折れていないが、滅茶苦茶痛い。

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