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38話

『そういう事だ、今日は休むのだ。うぬの魔力は消耗し切っている』

「ああ、そうさせて貰うぜ」


 ダストはまるで魂が抜けたかの様に地面に崩れ落ちると、そのまま寝息を立て始めたのであった。


―カイル宅―


 翌朝、いつも通りの朝を迎える。

 鳥のさえずりも聞こえ、柔らかな朝日を身体に受け心地の良い目覚めになったと言いたいところだが、昨日みたダストさんの戦闘を思い出すとどうにもこうにも心が沈む様などんよりとした気持ちにさせられてしまう。

 俺に出来る事なんか何も無いからそんな事は気にせず、せめて気持ちだけでも前を向かせたいところだが、逆に俺が何も出来無い事に対して歯がゆい思いを出だしてしまう。

 俺はザナッツ・レヴィンの子孫なのに、近くで起きた戦闘に対して戦力にしかなれないと言うのは案外心苦しい気持ちにさせられてしまうのであった。


「入るわよ」

 

 俺がベッドから出た所でルッカさんの声が聞え、俺が返事をする間も無く家の中に入り、俺の目の前にやって来た。。

 今日も朝ご飯を作りに来てくれたのだろう。学生の時からちょくちょくとルッカさんが朝ご飯を作りに来てくれたのだけども正直有難い。


「もう入ってるじゃん」

「いーの、細かい事気にしてたら将来ハゲになるわよ」


 ルッカさんはキッチンに向かうと鞄の中から卵とソーセージを取り出す。


「いや、人の家の中に勝手に入るのは細かい事じゃないと思う」

「うるさいわね、そんな事言ってると朝ご飯作らないよ?」

 

 ルッカさんはかまどに向け炎の魔法を使い、加熱調理に必要な火を起こす。


「それは少し困る」

「ふーん、少しだけ? あっそう」


 ルッカさんは少々不機嫌になりながらも割卵しフライパンの上に卵を乗せ、フライパンの空いているスペースにソーセージを乗せ過熱をする。


「まぁ、最悪朝ご飯はお店で買えば良いし」

「ねぇ? カイル? 私たまに魔法の威力調整ミスしちゃうんだよね」


 少しばかり意味深に言うルッカさんだ。


「なら練習すれば良いんじゃないの?」

 

 何も調理中に魔法の話をしなくてもいいじゃないか。


「素直になれって、無理じゃないの?」

 

 ルッカさんが何か呟いているみたいだ。


「うん? どうかした?」

「何でもないわよ、な・ん・で・も」

 

 ルッカさん? 何で怒っている? 俺、何か悪い事言った?


「そ、そっか」

 

 ルッカさんは、調理が終わった卵とソーセージと鞄の中から取り出したパンを皿の上に乗せる。


「全く、パンを自分で作れとは言わないけれど、加熱調理位まともに出来る様になってよね」

 

 ルッカさんは、朝ご飯が乗せられたお皿をテーブルの上に置いた。


「良いじゃん別に、男が料理出来ても意味無いしさ」


 俺は料理が置かれている手前の椅子に座り、フォークを手に取り目玉焼きの黄身を潰す。

 中からはとろりとした黄身が流れださせたところでフォークを使いパンの上に乗せ、口に運ぶ。


「否定はしないわよ、けれど私が出来て君が出来ない事を見ているとなんかムカついて来るのよ」


 ルッカさんは俺の対面に座りながらムスッとした表情をしている。

 相変わらず、自分の朝ご飯はは作らないみたいだ。


「ふーん、それは意外だね」

「セザール学園での勉学や鍛錬をバカみたいにやる癖して、料理って簡単な事すら出来ない事を見ているだけで何かムカつくのよ」

「そんな事言われてもなぁ、俺が料理出来ても何か意味ある?」

 

 自分が食べる分と言われても、そんなのお店で買えば良いだけだし。


「あるわよ」

「そうなの?」


 ルッカさんが視線を外し、少しだけ間をおいて、


「君が作った料理を私が食べられる」

「へ? でも美味しく無くない?」

「良いの、私が作った分が返って来るだけでも重要なのよ」

 

 少しだけ言葉が強い。

 ルッカさんが何か強い感情を抱いた気がするけど、それが何なのかまでは分からない。

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