25話
「何か台座の様なモノが見えます。あくまで感覚ですが、この台座は今の一件で半分ぐらいせりあがって来たと考えられます。つまり、同じ様にレクティーナ・レヴィンのが両手に持ち掲げている三日月に向かいキース・クレッセントの力を照射すればこの台座が僕達の要る場所までせりあがって来ると思います」
「分かりました」
エリクさんの話を聞いて、ルッカさんがキース・クレッセントを両手で持ち、杖先端にある三日月の装飾部と石像の三日月とで軸が合う様に天高くかざした。
程無くして三日月より淡く黄色い光が帯び、先程と同じくゴゴゴゴゴと音を立て俺達の目の前に台座がせりあがって来た。
正方形の台座は、その中心部に剣を刺せる穴が開いている。
恐らくは、この穴にホールス・ソーラを刺せば賢神の石が現れるのだろう。
「エリクさん」
「ええ、恐らくその台座にホールス・ソーラを」
俺は、台座に近付きホールス・ソーラを台座の穴に刺す。
俺が思った通り、ホールス・ソーラは台座の穴に吸い寄せられるかの様にぴったりと差し込む事が出来た。
だがしかし、
「何も起きないわね」
セフィアさんが腕を組みながら言う通り、賢神の石が現れる気配が感じられない。
それどころか周りの何かが動く気配すらない。
「ルッカさん、キース・クレッセントを」
「はい」
エリクさんに言われルッカさんが、台座に近付き突き台座に刺さっているホールス・ソーラにキース・クレッセントを向ける。
だが、
「何も起き無いわね」
「そうですね。ここから何かやらなければならないと言う事ですが、ルッカさんの持っているキース・クレッセントは鍵の形をしていますね、そして、カイルさんの持つホールス・ソーラは太陽の紋章の中央部分に、よく見ると黒い鍵穴があります、つまりはキース、クレッセントをホールス・ソーラの鍵穴に差し込めば何かが起こるかも知れません」
「けど、大きさ合わないわよ」
エリクさんの推察に対し、セフィアさんが指摘する通りキース・クレッセントの鍵部分に比べてホールス・ソーラの鍵穴部分は小さくとてもじゃないけど差し込めそうにない。
「可能性があるとするなら、そうですね、先程カイルさんが石像に当てた光をキース・クレッセントに当ててみて下さい、ホールス・ソーラの力を受ける事によりキース・クレッセントに何かが起きるかもしれません」
「分かりました、やってみます」
俺は、台座に突き刺さっているホールス・ソーラを引き抜き、先程石像が持つ太陽に向け照射した光をルッカさんが手に持つキース・クレッセントの三日月部分に向け照射した。
ホールス・ソーラの太陽の紋章より光を照射されたキース・クレッセントは全体を白い光に包み込むとキース・クレッセントは徐々にその大きさを縮めていき、暫くしたところで俺の手の平程の大きさになった。
「上手く、いった……の?」
ルッカさんは、自分の手の平よりも少し大きいサイズになったキース・クレッセントをまじまじと見つめ、太陽の紋章にある鍵穴に差しむと、キース・クレッセントはまるで吸い込まれるかの様に太陽の紋章の中に吸い込まれ、太陽の紋章にあった鍵穴は埋められた。
「凄い、なんだか身体の奥底から魔力が溢れてくる気がする」
キース・クレッセントが内蔵されたホールス・ソーラは、キース・クレッセントが持つ力も兼ね備えている様な気がして来た。二つを合わせる事でこの武器の真価を発揮するのだろう。
このまま今のホールス・ソーラの実力を試したい気持ちになったが、今はそれどころじゃない。
俺はその気持ちを抑え、先程と同じくホールス・ソーラを台座に差し込んだ。
するとどうだろうか、大体10秒程経ったところで今いる部屋が小さく揺れたかと思うと、石像よりも奥にある壁からゴゴゴゴゴと音が響き渡り新たな部屋が俺達の前に顔を表したのだった。
「この先に賢神の石が」
いよいよ、探し求めていたアーティファクトと対面できるのか、と俺はゴクリと生唾を飲み込む。
「そうですね、さぁ、皆様行きましょう」
エリクさんの合図を元に、俺達はゆっくりとした足取りで新しく現れた部屋に向った。
新しく表れた部屋は、今居た部屋よりも二回り程狭い。
部屋中央部分には怪しげな黒いオーラを放つ六芒星の魔法陣が描かれており、その中心には漆黒の光を放つ拳程の大きさである石が置かれている台座があった。
「こここここ、こ、これは!?」
エリクさんが目を見開き、内から溢れる興奮を必死に抑えながら台座の元へと近付く。
「賢神の石でしょうね、私が知っている物と酷似しているわ」
「そうですね」
「ほ、ほんと? 本当にあれが賢神の石なの!?」
ルッカさんも興奮気味な様だ。
「間違いありません。ウィザードならば誰しもが憧れるアーティファクト、賢神の石です。これを手にするだけで凄まじい魔法力を手に入れる事が出来ます。ただ、この魔法陣が怪しいですね、これを解かなければならなさそうですが……」
エリクさんが、足元の魔法陣を睨みながら顎に手を充て思案を始める。
と、ほぼ同時に突然、
『よくぞ参った我が子孫よ』
男性老人の声が部屋に響き渡る。
「誰ですか!?」
ここに男性老人等いない、もしかしたら俺達をつけて来た誰かなのか!?
「カイル? どうしたの?」
「ルッカさん、今男の老人の声が聞こえなかった?」
「んーん、全然?」
「いや、確かに俺の耳に……」
耳? 脳が振動した感覚だった……?




