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19話

「成る程、この程度の陽動には引っかかりませんか、この煙強毒なんですよね僕達はこの毒を解毒出来るんですが」


 エリクさんが、盗賊が潜んでいると思われる柱に向けカマを掛ける。


「ひゃっひゃっひゃ、驚かせるんじゃねぇ!」


 エリクさんのカマが効いたのか、柱の裏に隠れていた盗賊達が鼻と口を抑えながら姿を現した。

 その数はざっと10人程だ。

 それぞれが髪を逆立てていたりボウズにしていたり、頬や額と言った部位に切り傷を受けている者も多く見るからに悪党な雰囲気を出しており、盗賊達はナイフを持ち身構えている。


 盗賊達はエリクさんの言葉を受けたのか、解毒剤らしきものを飲み干しながら俺達の周囲を囲い出している。

 これで逃げる事は難しくなっているが、エリクさんやセフィアさんは余裕そうな表情を浮かべている。


「あらあら? 牽制の攻撃しただけでわざわざ姿を見せるなんて面白い事じゃない?」


 セフィアさんが、盗賊達をクスクスと笑いながら馬鹿にしながら言う。


「なにをっ! 俺達デザートスコーピオンを舐めてんじゃねぇ!」

「そうだそうだ! テメェ等なんざ手籠めにして奴隷にしてやんぞ!」


 盗賊の何人かが随分と小物な発言をする。


「セフィアさん? 砂漠の蠍なんて盗賊団知ってます?」

「さぁね? そんなダサい名前の盗賊団なんて記憶の片隅にすら残らないわね」


 セフィアさんが仕草含め、やれやれと言いたそうにしている。


「ぐぬぬぬぬ! 俺達を舐めやがって! お頭! やっちゃいましょうぜ!」


 盗賊達が顔を真っ赤にし、歯ぎしりをしている、この程度の挑発で彼等の琴線に触れたのだろうか? 随分と煽り耐性が低い様に見えるが、盗賊なんてこんなものだろうか。

 俺はルッカさんとルミリナさんを庇える位置に着き魔法をいつでも発動させらせる準備をする。

 ルッカさんは顔を強張らせながら必死に身構えている様に見える。


 これだけの数の盗賊に包囲されてしまって恐怖心を抱かないのは無理があるのか。

 ルミリナさんもまた、全身を振るわせて恐怖心を抱いている事が丸わかりだった。


「ガッハッハッハ、上等じゃねぇかぁ! デザートスコーピオンの恐ろしさを思い知らせてやる。男は適当に殺して女共は適当に遊んでやった後売り飛ばしちまえ」


 お頭の合図を受けた盗賊達が俺達に狙いを定め動き出す。

 二人を守らなければならないこの状況で、俺は盗賊達に対して自分から攻め込む事は出来ない、迎撃を!

 俺の頬を1筋の汗が伝い、全身に緊張感が駆け巡る。


「セフィアさん、どうします?」

「そうねぇ、出来る事なら命まで奪いたくないけどあいつ等何人も殺してそうなのよね」

「そうですね、どう考えても殺しや人身売買やってそうですね。悪党に情けを掛ける必要なんて有りませんよね。僕は気が進みませんが」


 つまり二人は盗賊団の命を奪うみたいだ。

 盗賊達に囲まれたこの状況下で捕縛、なんて甘い事をやっている余裕は無いのだろう。

 ……やらなきゃ自分がやられてしまう。


 出来る事なら人を斬りたくない、けれど冒険者になった以上いつかどこかで人を斬らなければならない時が来ると言う事はカオス学長に教えられている。

 俺は一度深呼吸をしその覚悟を決める。


「え? え? 盗賊って捕まえるんじゃないの!?」

「残念ながらそのメリットはありません」

「で、でも」


 ルッカさんは幾ら悪党とは言え同じ人間の命を奪う事をに対して躊躇っているみたいだ。


「彼等は罪のない一般人を多数殺害しているでしょう、ですから情けなど無用です」


 エリクさんの言葉を受けても尚、ルッカさんは瞳孔を開きながらも絶句している。


「ボウヤ、お嬢ちゃんを守って頂戴」


 セフィアさんは俺に指示をだしながらも盗賊に狙いを定めクロスボウにより矢を放つ。

 セフィアさんが放った矢は、狙った盗賊の右肩に刺さる。


「なんだぁ? こんなちっぽけな矢はぁ?」


 セフィアさんが放った矢を受けた盗賊は、少しばかり苦悶の表情を浮かべるが思ったほど痛くないのか自分の身体に刺さった矢を引き抜くと元の殺意が込められた表情の戻す。


「フフ。貴方達、魔法防御力高く無いよね?」


 セフィアさんが不敵な笑みを込めながら盗賊に言う。


「なーに言ってんだぁ? 俺達に恐れをなしてつよが」


 セフィアさんから矢を受けた盗賊は、全ての言葉を言い終える前に目を見開くと口元を抑えながらその場にうずくまった。

 誰が見ても苦しそうにもがきながら声にならないうめき声をあげ、大体10秒ほど経った所で彼は全身を痙攣させ口から泡を吹きだすと白目を剥けその場に仰向けになって倒れ

た。


「敵を毒物で葬るのはレンジャーの基本ってところよ」


 セフィアさんがそっと髪を掻き揚げ、クロスボウの先を自分の背後に向け矢を放つ。


「うぐっ」


 クロスボウから離れた矢は、セフィアさんの背後から奇襲を仕掛けようとした盗賊の脇腹に刺さる。

 凡そ1分後の未来を予測した盗賊は泣き喚き、叫びながらその最中に解毒剤の事を思い出し口に含む。

 しかし、解毒剤の服用で助かると一瞬だけ希望の表情を浮かべた盗賊は、その10秒後にセフィアさんが矢に仕込んだ毒が全身に回り切り先の盗賊と同じ様に事切れた。

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