2話
「これはホールス・ソーラと名付けられた剣と、キース・クレッセントと名付けられた杖だ」
カオス学長は、ホールス・ソーラを俺に、キース・クレッセントをルッカさんに渡す。
「これは南の砂漠地方より発掘された武器だ。これを君達に委ねよう。私が調べた限りこの不思議な形状に何かの秘密が隠されている様だ。詳細が分かり次第また連絡しよう」
「ありがとうございます!」
俺はカオス学長より太陽をモチーフとされる美しき剣、ホールス・ソーラとそれを納める鞘を受け取り、ホールス・ソーラを鞘に納め背中に装着した。
「ありがとうございますっ!」
カオス学長より三日月をモチーフとされる美しき杖、キース・クレッセントを受け取ったルッカさんは少女が魅せる可愛らしさが溢れる笑顔を見せ、新しい武器を受け取った嬉しさを前面に現していた。
「続いてエリートへの道を歩む君達が冒険者として目指して欲しい事だが、アーティファクトについてどれだけ知っている?」
カオス学長が、少しばかり真剣みを帯びた眼差しで俺を見据える。
「はい。物凄い力を持つ武具であり、1つ入手出来るだけで素晴らしい力を身に着ける事が出来、中堅の冒険者ですらトップクラスの冒険者が数人集まってなんとか倒せる竜と言った魔物をたった一人で討伐出来ると言う事です。また、これらのアーティファクトは170年程前コルト大陸の平和を取り戻す為に戦った英雄達の魂が宿っているとの事です」
「簡潔にまとめ上げるとその通りだ。カイル君、やはり素晴らしい」
「いえ、俺はまだまだです」
俺がカオス学長に褒められ内心嬉しい気持ちを抑えながら謙遜したところで、ルッカさんがムッっとした表情を見せながら、
「わ、私だって、セザール教会に聖神の杖の血を引く子孫が居る事位知っているんだから!」
「ルッカ君、その情報を把握しているとはな。君もカイル君と同じく素晴らしいものだ」
「へへへ、とーぜんですよ」
カオス学長よりお褒めの言葉を貰えたルッカさんは上機嫌になり、その場で横方向にクルッと1回転した後ニカッと笑みを見せる。
「ルッカ君の言う【聖神の杖】を含め、コルト大陸に存在するアーティファクトの内5つのアーティファクトの存在を認識している。残りの4つは【賢神の石】【闘神の斧】【勇神の剣】【武神の爪】であり、これらのアーティファクトをセザール国の手中に収めたい」
「私に任せれば大丈夫ですよ!」
カオス学長の説明に対し、俺は少しばかり緊張しているのだが得意気に言うルッカさんだ。
彼女の物事に対する気持ちの強さは俺も見習いたいと思う事もあるが、
「ルッカ君。君の熱意は素晴らしいものがある、だが学園での模擬戦とは違いこれから先の戦いは仲間達と共に力を合わせ更なる戦果をあげる事を学びなさい」
カオス学長がルッカさんを優しく諭す。
「で、でも私全学部の技術を持ってますし、ウィザードだけど接近戦もこなせます」
確かに、ルッカさんの言う通り彼女はウィザードでありながらナイトやファイターと言った接近戦を得意とするクラスと同じく近い間合いでの戦いもこなしている。
本来、ウィザードは彼等の後ろで身の安全と魔法の詠唱を行う時間を確保して貰い強力な魔法攻撃をこなせば良いんだけど。
「それはあくまでセザール学園と言う狭い世界での話に過ぎない。これから先、セザール学園の生徒や教師よりも強い力を持つ魔物と対峙する事になるだろう。その時も自分の力を過信するならばその時は命を落とす事になりかねん」
「その時は今よりももっと鍛錬するから大丈夫です!」
カオス学長の指摘は、ルッカさんが譲りたくない部分なのだろうか? 学長を相手にしてもルッカさんは食い下がらない。
「君よりも僅かだが秀でているカイル君は、自分の力に溺れる事無く仲間との戦いを大切にしている。君がカイル君に勝ちたい気持ちは分かるが、この先仲間と力を合わせなければ―命を落とす事になる―(・・・・・・・・)」
「ですが、それではカイルに勝てる証明が出来ません!」
ルッカさんが強い気持ちが乗せられた声で言う。
「私に出来る事は忠告をする事までだ。それ以上は君の好きにしなさい」
カオス学長が、まるでルッカさんを突き放すかのように言う。
それをルッカさんは察知したのか、眼を見開き絶句している。
少しばかり静寂に包まれ、重い空気が纏い始めた所でそれを解消しようと口を開く。
「カオス学長、俺達は【聖神の杖】を見付ければ良いのですか?」
「そうだな、出来ればそれも願いたいが私としては【賢神の石】の入手を願いたい。先程君達に渡した武器は砂漠エリアで発掘されたと言ったが、私が知り得る限り【賢神の石】もまたその砂漠エリアに存在するとの事だ。君達に渡した武器が【賢神の石】を入手する為の鍵となっていると予測を立てている」
「そ、そんな重要な武器を俺達に委ねて良いのですか!?」
俺はカオス学長の説明に対し驚き、カオス学長に尋ねた。




