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12話

「有難う御座います」


 とルミリナさんがぺこりとお辞儀をしながらルッカさんに対しお礼の言葉を述べる。


「ありがとう」


 同じく俺もルッカさんにお礼の言葉を述べ、木製の皿に視線を向ける。

 木製の皿は1人2枚あり、それぞれ6切れの干し肉が乗せられた物と手の平サイズのパンが4個乗せられている。いや、それだけじゃない、干し肉が乗せられている皿には正円に1cm程の厚さに切られ、煮詰めたニンジンも4切れ乗せられていた。

 栄養バランスもしっかりと考慮されているみたいだ。


「1日目だしね、携帯用食料でも良い物は出せたよ」


 ニッっと少々得意味が伺える笑顔を見せるルッカさんだ。


「ふぇぇぇ? このニンジンさんってルッカさんのお手製ですよね? 凄いです」

「ありがと、でも、偶々昨日作った物が余っていただけだけどね」


 何処か嬉しそうな気配を見せながらも、ルッカさんは謙虚に振舞っている。


「そうだな、野営中の食事で鮮やかなオレンジ色の食材が並べられるだけでも気分が晴れるな」


 俺はルッカさんお手製のニンジンを金属製のフォークを上手く使い口へと運ぶ。

 たかがニンジンされどニンジンと侮るなかれ、何の味もしないと思い噛み締めたニンジンからはほんのりとした甘みと僅かではあるがバターの様な味わいが口の中に広がった。


「このニンジンさん、甘くて美味しいです」

「同感だ」


 俺とルミリナさんが、ルッカさんお手製のニンジンに対し賛美すると、ルッカさんは目に見えてご機嫌な様子になって、


「良かった、この干し肉も私が作ったんだけどね」


 ニッっと笑顔とウィンクを見せるルッカさんだ。

 普段ツンケンしている印象が強いせいか、ルッカさんが何処か無性に可愛らしく見えてしまうのは気のせいか?


「ふぇぇぇ、凄いですよルッカさん! 私もお姉ちゃんもこんな料理出来ないです」

「そうだな、干し肉は作るのに手間がかかるからな、正直俺も凄いと思うし俺も真似出来ない」


 俺は、皿に乗せられている干し肉の内1枚に対しフォークで刺し、口へと運ぶ。

 干し肉を口へと運んだ瞬間、濃縮されている肉の旨味が口の中に広がる。

 少々塩辛い感じが否めないが、保存食であるのだからそれは仕方ない。

 1枚の干し肉を食べ終えた俺は、続いてもう1枚ある皿の上に乗皿れているパンを一つ手に取り口へと運ぶ。

 口へと運んだパンは、口の中に広がる旨味を上手く調和し喉を過ぎ去ってゆく。

 これもまた、美味いの一言に尽きるのだが脳裏に喉の渇きが掠めてしまう。


「へへへ、セザールタウンに戻ったらまたご飯作ってあげるね」


 嬉しそうに言うルッカさんだ。


「ルッカさんが羨ましいです」


 一方で、ルミリナさんは少し俯きながら小声で何かを言っていた。


「ああ、楽しみにしている」


 俺はルッカさんの厚意に対し笑顔を見せ答えた。


「ねぇ? カイル? 喉乾かない?」


 ルッカさんが、2リットル程の水を入れられそうな木製のボトルを俺に差し出しながら言う。


「喉は乾くが?」

「君が魔法で産み出す水は飲めるよね?」

「なるほど、そういう事か、分かった」


 そうだな、水属性魔法の中でも初歩である、水球ウォーターボールそれの出力を絞って発動すればそのボトルに飲用水を入れる事は可能だろう。

 勿論この水を飲用するに当たって全く問題は無い。

 俺はルッカさんが差し出す木製のボトルに向け、水球ウォーターボールを発動させボトルを水で満たす。


「へへ、ありがと、やっぱ君は頼りになるね」


 人差し指を立て、笑顔を作り直し言うルッカさんだ。


「そうか? ただの初歩的な魔法を使っただけだが」

「だって私水属性魔法使えないし?」

「それもそうだな」


 俺は小さくフッっと笑って見せ、ルッカさんは、あははと声高く笑って見せた。

 その隣でルミリナさんが寂しそうに、


「私も理魔法覚えようかな……?」


 と呟いた。

 ルミリナさんが呟いた理魔法とは魔法の基本属性である炎、水、風、地等の総称である。

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