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魔法帝国君主論 ー前世の知識を得たら魔法が使えなくなったので、取り戻すために近代化した帝国の帝になりますー  作者: 芥川輪舞(旧:桜月詩星)
第1章 立派な帝になってください(12歳 魔法喪失編)
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第二話「魔法喪失」

「ニコラ様、医師を連れてきました」


メイド──セーラが医師を連れて戻ってくる。

魔法が使えず、憔悴していた僕を見て医師が目を瞬かせた後、口を開いた。


「失礼しますニコラ殿下……おや? どうなさいました?」


それだけ態度に出ていたのだろう。

医師は具合が悪化したのかと探るような目つきでこちらを見ていた。


「魔法が……使えなくなった」


辛うじて絞り出す。

ニコラの精神だけなら何も言えなかったが、幸い元々使えない能力が結局使えないだけだったという高校生の精神のおかげで、それなりのショックという程度で収めることができた。

まあそれでも期待していた分、もちろんショックではあったのだが。

年相応の皇子らしい振舞いをすることを忘れるほどではなかった。


「魔法が使えなくなった……?」


医師が目を見開き、反復する。

ニコラの知識では分からないが、何かまずかったのだろうか……?

医師は少し考えこみ、こちらを向いて質問してくる。


「魔法が使えなくなるなど聞いたことがありませんが、これまで普通に発動できていたものが使えなくなったということでしょうかな?」

「うん、『ライト』を詠唱しても発動しなかったんだ」

「うーむ。『ライト』は詠唱すれば、ほとんど失敗することの無い魔法ですな。魔力は問題無く集められたので?」

「いつも通り集めてダメだったから色々変えて試してみたんだけど、結局ダメだったよ」

「ということは、詠唱の段階で何か不具合が起こっているようですな」


そしてまた考え込む。

ひとしきり唸った後、何かに気付いた医師がまた質問をしてきた。


「そういえば、私がここに呼ばれた理由は殿下が何か靄が見えるというものでしたな。詳しい話を聞かせてもらっても?」


そういえばそういう話だった。慣れてしまい、薄い靄ということもあってあまり気にしなくなってしまっていた。

それと魔法が使えなくなることと何か関係があるというのだろうか?


「薄い靄でずっと視界が覆われているんだけど、慣れたらあまり気にしなくなったよ」

「ふむ、ということは寝起きで目がぼやけていたということでもなさそうですな。てっきりセーラ殿が焦って私を呼びにきたと思っていましたが──おっと、失礼」


冗談を言おうとした医師がセーラに睨まれ、口を噤む。


「しかし、魔法が使えなくなり、視界に異常があるとなると、脳の病が考えられますが……。そうだとすると困ったことになりましたな」


脳の病気か。確かに、脳がやられて幻覚が見えるとかそういう話は地球でもあった。魔法はどういう仕組みで成り立っているのかよくわからないが、脳が関わっていることは間違いないだろう。

だが、この世界で脳のことはどれほど分かっているものなのだろうか?


「残念ながら、脳の仕組みは全く解明されておりません。脳が人間の身体の一部である以上、他の臓器と同様に病にかかるものだということは分かっているのですが、では具体的にどういう治療法を行うべきなのかということまではさっぱりというのが現状ですな」

「そんな! ではニコラ様はずっとこのままだと!?」


セーラが思わず口を挟む。

医師はそれに同情するような表情をした後、また少し気付いたような顔をしてこちらに質問をしてきた。


「殿下、もう一度靄のことを詳しく聞かせていただいてもよろしいですかな?」

「うん、そうだね。薄く白いものがかかっている状態だけど、少し動きがあったりするかな」

「動き、でしょうか?」

「うん、特に人の周りかな。そこだけ少し濃くなってる気がする」

「ほう?」


医師の眼鏡がキランと光ったような気がした。

急に医師が手を伸ばし、詠唱を行い始める。


「『汝、小光を我が求むるところへ与え給え。ライト』」

「医師殿、何を!」

「……どうですかな?」


急に魔法を使った医師に対して驚くセーラの声を無視し、医師は『ライト』を唱え、指先に小さな光を灯した。

おお、魔法だ。これが何回もやってできなかった魔法だ。

感動し、医師の指先を何度も舐めまわすように眺める。

この時だけは正真正銘の12歳だった。


「……コホンッ。それでいかかでしたかな」


医師の咳払いと共に光が消える。

ああ、僕の唯一の希望の光が……。いや、止めとこう。

実際、少し収穫になりそうなことはあった。


「白い靄が指先で濃くなって、光がついた!」


そう、魔法で靄が動いたのだ。


「おお! やはりそうでしたか!」


医師も一転喜びを露わにした表情で反応してくる。

おそらく二人とも同じことを思っているのだろう。


「つまり、僕の見えているものは魔力ってこと!?」

「ええ!」


医師が興奮冷めやらぬままに続けてくる。


「今まで魔力を見える人間は見たことはおろか、聞いたこともありませんぞ! おそらく殿下は初めて魔力が見える人物になったということでしょう!」


何とも男心をくすぐる言葉を使ってくれるものだ。

つまり、僕は初めて魔力が見える魔眼を持つ人物になったということらしい。


「魔法の仕組みは今までほとんど解明されてきませんでしたが、魔力が見えるとなるとかなり分かってくることも増えるでしょう! 魔法革命が起こるのも時間の問題ですぞ!」

「医師殿、革命という言葉を使うのはちょっと……」


なにやらセーラに医師が窘められているが、頭にあるのは魔法革命という言葉の響きだった。

何とも心躍る言葉だ。この医師はワードセンスが良いな。

魔法革命の旗を僕が先頭で握ることになる。

その様子を想像するだけで滾ってくるものがある。

ただ、それならなおさら魔法が使えたらよかったのだが……。


勝手に興奮しては少し落ち込むという忙しない僕の様子を見て察したのか、そのことについても医師は希望を示してくれた。


「ふむ、殿下。その靄、魔力をこれからよく観察するようにされてはどうでしょうか? おそらく魔法の使い方が分かるようになるでしょうし、殿下が使えない原因が分かるやもしれません」


なるほど。これから魔法の仕組みを解き明かすのだから、自分が使えない理由も分かるかもしれないということか。

理に適った考え方だな。


「十分稼いだのでさっさと引退して田舎に隠居しようかと考えていたところでしたが、いやはや何があるかわからんもんですな。何かあればいつでも相談していただいて構いませんぞ」


これから面白くなりそうですなと、フラマー子爵──そう名乗った医師は快活に笑っていた。

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