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魔法帝国君主論 ー前世の知識を得たら魔法が使えなくなったので、取り戻すために近代化した帝国の帝になりますー  作者: 芥川輪舞(旧:桜月詩星)
第1章 立派な帝になってください(12歳 魔法喪失編)
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 間話「準備」

 レキシンガム宮殿、星の間。

 ロエグランド王室そしてヴィクテン帝室の歴史において、長年魔法を取り扱う場所として機能してきたのが星の間である。

 星の間には帝直属の魔法師が常駐しており、星室師団と呼ばれている。

 その星室師団と共に、帝ウィラールは星の間で自ら作業を行っていた。


「銀朱をもて」

「はっ」


 魔法師が器に入れた銀朱を差し出してくる。

 ウィラールはそれを受け取らずに魔力を込め始めた。

 銀朱が発光しはじめる。

 その様子を見たウィラールは魔力を込めるのを止め、筆を使って床に魔法陣を描き始めた。


 銀朱とは、硫化水銀の鉱物から作られた赤い顔料だ。

 顔料にされる前の鉱物は赤い鉱石であり、魔力を込めると発光して魔法の効果を高める触媒になることから、賢者の石と言われている。

 魔力の込められた銀朱はまさに賢者の石で作られた顔料であり、それを使って魔法陣を描くことで魔法を発動させられることが知られていた。


 赤く発光する顔料をたっぷり付けた、赤く発光する筆を持ったウィラールが慎重に魔法陣を描いていく。

 魔法陣は発動させようとする魔法が複雑であればあるほど、構造が複雑になっていく。

 そしてその複雑な構造を全て理解した上で描かなければならない。

 ウィラールはかなり神経を尖らせながら筆を動かしていた。


 ひと段落し、ウィラールは休憩する。

 魔法陣は一気に描かないといけないというわけでは無く、精神を摩耗する作業であるためこうしてちょくちょく休憩を挟んでいた。

 そこに侍従がやってきた。


「陛下。お休みのところすみませんが、カールケイン大主教が至急謁見したいと仰ってこられています」

「通せ」

「よろしいのですか?」


 侍従が確認してくる。

 作業中というのもあるが、何せその作業の内容が問題だった。

 描いている魔法陣を見られてもいいのかという確認でもあった。

 しかし、その確認も予想していたというような様子でウィラールは答える。


「問題無い。メリーは大丈夫だ」

「失礼しました。それではお通し致します」


 侍従がすぐに離れていく。

 それを見てウィラールは筆を侍従に預け、ため息をついた。

 ほどなくしてカールケイン大主教メリーが入室してくる。

 メリーは焦った表情と驚きの表情を浮かべていた。


「陛下、突然の来訪すみません。謁見を許可いただきありがとうございます」

「いや、予想通りだ。用件も大体想像がつく」


 メリーはその言葉を聞き、描きかけの魔法陣を見て納得の表情を浮かべていた。


「なるほど、分かりました。ですが一度こちらのことを話しておいた方が良さそうですな」

「ああ、頼む」

「陛下の想像されていることかと思いますが、ニコラ殿下が魔法を使えなくなったという話を受け、殿下を破門するべきだとの声が大きくなってきています。正直なところ私の手には負えないところまで来ておりまして……」


 ウィラールは動じることなくメリーの言葉を聞く。

 ウィラールがヴィクターからニコラのことを聞いて最初に思ったことが、魔法教会がニコラを破門すると言いかねないということだった。

 そのため、メリーの言うことは想定内であった。


「見ての通り、それを見越した魔法を準備している。これは今度の夜会の前に発動させる予定だ」

「やはりそうでしたか」


 魔法陣を使った魔法の存在は知られていたが、材料が高価であることと魔法陣を描くのに専門的な知識が必要であることから、そこまで一般では使われていない。

 ヴィクテン帝室が魔法で尊敬を集めたのはその魔法の威力であると一般的には理解されていたが、その実は魔法陣を使った大規模な魔法の行使にあった。

 つまりニコラが魔法を使えなくなっても、魔法陣に込める魔力を使えれば問題は無かったのである。

 メリーはそれを知っていたからこそウィラールが魔法陣を描いているのを見て、帝室魔法の要は魔法陣にあることを周知させようとしているのだろうと想像した。


「夜会まで持ちこたえてくれれば問題無いだろう。ただ、夜会の後は忙しくなるぞ」

「それはどういうことで?」


 ウィラールの含みを持たせた言葉にメリーは首を傾げる。

 ただニコラの魔法が使えないことに何も問題が無いと言うだけなら忙しくはならないからだ。


「実はな……」


 ウィラールはそんなメリーの反応を見てニヤリと笑みを浮かべる。


「どうにもニコラには魔力が見えるようなのだ」

「は……?」


 メリーはそのまま固まった。

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