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5話 シアナ

「おい、クソガキ。大丈夫か?」


「……う、うん」


 ひどくおびえてんな。今にも泣きだしそうだぜ。まあ、血まみれのおっさんが倒れてるんじゃしかたねぇか。


「お前ケガしてんじゃねーか。はやくおうちに帰って母ちゃんに直してもらいな」


「……おうちないもん」


「へ?」


「そ、それに、お母さんもどこかに連れていかれちゃった……」


 そういったあとギャーギャーと泣きだしやがった。クソ、どうすりゃいいんだよこれ?


「わ、わかったから、おちつけって。……頼むから泣かないでくれよ」


 ……ガラにもなく優しくフォローしてんな、俺。





「……ったく散々泣きやがって。気は済んだか?」


「うん」


「よし。それじゃあ改めて聞きたいことがあるんだが、話してもらってもいいか?」


「うん」


「お前の家はねぇのか?」


「うん」


「母ちゃんもいねーのか?」


「うん」


 うんしか言わねーなこいつ……。


「なるほどな。つまり、うん子は今迷子になっちまってるってことだな。へへへッ」


「……うん子じゃない。私はシアナ」


「フッ、ちゃんと喋れんじゃねーか。……シアナ、お前これからどうすんだ?」


「え?」


「このままってわけにはいかねぇだろ。誰かたよれる大人はいねぇーのか? いたらそいつに保護してもらおうぜ」


「……いない、ここがどこだか分かんないし、知ってる人もいないし……」


 うわっ、また泣きだしそう。もうクソガキに泣かれるのはこりごりなんだよ……


「わかった、わかったから泣くな! ……お前がいいなら、おりぇの家にくるか? 少なくともここよりかはまともな場所だと思うぞ」


「え? いいの?」


「行くのか行かねぇのかどっちなんだ?」


「い、行く。行きたい!! ……あっ、でも」


「でもなんだ?」


「首輪がある……。勝手に動くと呪いが発動しちゃうし」


 呪い? ……よくわからんが、ごうもん道具みたいなもんか? チッ、ガキにこんなもんつけるとか、このおっさんとんでもねぇクソ野郎だな。



―ーバシッッッ



 俺はおっさんの頬を強くビンタした。すると意識を取り戻した。


「うっ……、こ、この、クソ赤ん坊が……」


「おい、まだ殴られてぇのか? ……次は本気でブチ殺すぞ」


「ひっ……、そ、それだけはやめてくれ」


「だったら俺の要求を聞け。……シアナの首輪を外して呪いを解くんだ」


「なんだとっ!? ……フッ、いいぜ。やってやるよ」


 ……やけに素直だな。それに、なぜか反抗的なのが気になる。……なんか企んでる? 少し脅しをかけておくか。


「おい、もしちょっとでも変なことしてみろ。警備隊にいいつけてやるよ」


「な!? け、警備隊だけはやめてくれ!! 店がつぶれちまう」


 へぇ、この店違法営業してんのか。へへッ、こいつはいいこと聞いた。


「おりぇの女に警備隊の隊長がいるんだ。スティアってやつだ。知ってるか?」


「ス、スティアだと!? お、おまえ、あ、あの、鬼の冷徹隊長と知り合いなのか!?」


 ……あのバカ女そんなダセェ異名で呼ばれてんのか。へへッ、けっさくだ。後でめっちゃからかってやるか。


「ああ、そうだ。なんならお前に渡したその財布、それスティアのだぞ」


「なんだって!? ウソだろ!?」


「……本人連れてきて確かめさせてもいいんだぜ。さあ、どうする? おりぇの言うこと聞くってんならスティアは呼ばないでやるけど……」


「な、なんでもいたします」


 よし、これで脅しもかけられたしおっさんも変なことはしないだろう。


 おっさんはビクビクしながら首輪を外し始めた。






「お、おわりました……」


「よし、じゃあ死んどけ」



―ードガッ



 おっさんの頭をぶん殴り、再び気絶させる。


「ええっ!? な、なんで気絶させちゃったの……」


「は? バカかお前は? こいつをそのままにしたら、どーせまたロクでもないことするに決まってんだろ。だからその前に気絶させて警察につきだすんだよ。……そうすればお前みたいなかわいそうなガキもいなくなるだろうが」


「そ、そうだったんだ……。フフッ、優しい赤ちゃんだね」


「はっ!? んなことねーし! あと、おりぇは赤ちゃんじゃねー! サカグチ・リュウトだ」


「リュート?」


「……ああ、そうだ。だが、さんをつけろ! おりぇの方が年上だしな」


「ええ……。どうみてもリュートの方が年下だよ」


 何言ってんだこいつ……。あっ、いや、今の俺は赤ちゃんだし合ってるか。……ってなに受け入れてんだ俺!? すっかり忘れてたが、なんで俺赤ちゃんになってんだよ!? 


「リュ、リュート? だ、大丈夫? 汗すっごいかいてるけど」


 チッ、分かんねぇことだらけだが気にしててもしょうがねぇ。


「……ダイジョ―ブだ。それよりお前ケガしてるだろ。さっさと帰って手当すんぞ」


「う、うん!」


「にしても今日は疲れた。こんな日はかわいい女に癒してもらいたいもんだが、あのバカ女はそんなことしてくれねぇだろーな。堅物女だし。ヘヘヘッ」


 くだらねぇ会話をしながら俺たちは家に帰った。





 その後、あのおっさんは警備隊にタイホされたことをバカ女から聞いた。


 ……サイフを盗んで奴隷商店に行ったことをこっぴどく説教されながら。


次は22時10分ごろに第6話を投稿します。

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