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28話 謎の花屋

 俺は今、ギルドの中にある休憩所でちょっとしたギャンブルをしている。


 やっているのはポーカー。


 警察のおっさんからこの世界にもトランプがあることを聞き、俺は少し前からギルドにいるカス共にギャンブルを持ち掛けるようになった。


 今日のメンバーは最近仲良くなった人相の悪いポーション屋のおっさん、ギルドで酒ばっか飲んでるクズ、暇そうにしてたギルドの受付嬢だ。


「よっしゃああ! おりぇの勝ちだ! テメェらさっさと金はらえや!」


「ったく、相変わらず口のワリィ赤ん坊だな」


「分かった分かった。……ホラッ、これもってさっさと帰れ」


「あっ? 何言ってんだ? もう一勝負すんぞ。今度はテメェらを破産させるくらいベットして……」



―ーガタンッ



 扉が開く音。それと同時に聞きなれた声が聞こえてきた。


「あっ、こんなところにいた! リュート探したんだよ!」


 なっ!? ……シアナの奴、せっかくいいところだったのに水差しやがって。


「へっ、良かったな赤ん坊。お姉ちゃんが迎えに着てんぞ」


「お姉ちゃんなんかじゃねーよ!」


 おっさんに肩パンをお見舞いしたあと、急いでシアナのもとに駆け寄る。


「おい、いったいなんのようだ?」


「もぉー、約束したじゃん! 忘れちゃったの?」


 約束? そんなもんいつしたっけ?


 目を閉じてしばらく考え込んだが、残念ながら全く思い出せない。


「スティアお姉ちゃんにお花買ってこいって言われてたでしょ!」


「花……」


 そういえば昨日の夜そんなこと頼まれた気が……


「早く買いにいかないとスティアお姉ちゃんに怒られちゃうよ!」


「げっ、それはまずいな。そんじゃあ金渡すからお前ひとりで……」


「……一緒に行かなきゃ賭けのこと言いつけちゃうよ?」


 なっ!? このクソガキ俺を脅しやがって!


 でもまあ殴られるのも癪だし、ここは大人しく一緒にいくしかないか。


「はぁ……そんじゃあ花買いに行くぞ」


「うん!」


 花買うんならやっぱ花屋だよな……


 そういや、この辺に変わった花屋があるって前マリアが言ってたな。ちょっと興味はあったが、行く機会がなかったからすっかり忘れちまってた。


(せっかくだしそこに行ってみっか)





「うわー! キレイなお花がたくさんある!」


「……ああ、そうだな」


 シアナがアホみたいに騒ぐのも無理もねぇ。


 店頭には黄色や水色、朱色といった色鮮やかなデカい花が大量に並べられていた。


(こんな花屋日本じゃ見たことねぇな)


「いらっしゃいませー。何かお探しでしょうか?」


 店に到着して最初に声をかけてきたのはめちゃくちゃカワイイ金髪の女店員だった。


「ああ、ちょっと花をだな……」


「えっ!? あ、赤ちゃんがしゃべった!?」


 女店員は目を見開き、ひどく動揺し出した。そして持っていた植木鉢を手放してしまった。



ー-ガシャン



 割れた音が店内に響き渡る。


(はぁ……久しぶりにそんなリアクションされたな。もうブチギレる気すらおきねぇ……)


「アレスタ、どうしたんだい? なんかすごい音がしたけど……」


 店の異変に気付いたのか、奥から茶色のエプロンを着た30歳くらいのおっさんが飛び出てきた。


「マ、マスタぁー。聞いてください! こ、この赤ちゃんが喋って……」


「赤ちゃんが喋る? ……ああ、なるほど。この子がうわさのリュウト君か」


 おっさんはそのままジロジロ俺を見ながら話かけてきた。


「会えてうれしいよ。まさかキミの方からうちに来てくれるだなんてね。……そうだ! 今から時間あるかい? ちょっとだけキミと話をしてみたいんだがどうだろう?」


「あ? なんでおりぇがてめぇなんかとおしゃべりしなきゃなんねぇんだ?」


「……僕がキミと同じ日本人だといってもかい?」


「なに!?」


 これはまたとない機会だ。


 こいつなら俺が知りてぇことも知っているかもしれねぇし、逃すわけには行かない。


「分かった。いいぜ」


「ホントかい!? ありがとう!」


「シアナ、ちょっとだけこいつと話すっから、一人で花探してもらってていいか?」


「えっ? ……う、うん。分かった。早く戻ってきてね」


 シアナといったん別れ、俺は店長と共に店の奥へと向かった。






 案内されたの高そうな机、ソファー、棚だけしかないシンプルな書斎だった。


「そこのソファーに座っていいよ」


「ああ」


 どっしりとソファーに腰を下ろす。


「それでさっそくで悪いんだけど、ひとつ確認したいことがあるんだ。……リュウト君も異世界転生してきたんだよね?」


 イセカイテンセイ。


 いろんな奴から聞いたその言葉。なんとなくだが、『生まれ変わり』みたいなことをいってんだと最近分かった。


「……ああ。そうだ。っていうか、どうしておりぇが赤ちゃんになってんだよ? お前なんか理由知ってるか?」 


「ん? まぁ転生だから赤ちゃんになっても不思議じゃないかな? ……なにか神様から説明を受けてないのかい?」


 か、神様?


 思わぬ発言にきょとんとしてしまう。


「あれ? その様子だともしかしてリュウト君、神様に会ってないのかい?」


「ああ」


「おかしいなぁ。僕や他の転生者たちはみんな神様から説明を受けたのに。なんでリュウト君は神様に会っていないんだろう……これは詳しく調査しなくちゃ!」


(い、いったい何を言ってんだこいつ……頭イカれてんのか?)


 ブツブツと訳の分からんことをしゃべるおっさんを、俺はただ茫然と見つめることしか出来なかった。





 ……どれくらい時間たったんだ?


 しばらく俺はおっさんから質問攻めされ、少し憔悴していた。


「……おい、もう帰っていいか?」


「え? ああ、ごめん。少し長く話過ぎちゃったかな?」


「ふん。そんじゃあな」


 俺がソファーを立ち上がろうとした時だった。


「あ! ちょっと待って。今回のお礼と、あとお詫びもかねてこれを受け取ってくれるかい?」


 おっさんが渡してきたのは、赤色の紋章が書かれた青色の紙切れだった。


「ん? なんだこれ?」


「ああ、それかい? それは割引券だよ。実は僕、表向きは花屋さんってことになってるけど、裏ではちょっとした情報屋みたいなことをやっていてね……」


 情報屋。花屋のおっさんのクセにずいぶん闇が深そうなことやってんな。


「まぁ、くれるっていうんなら貰っといてやるけどよ……」 


「ああ。何か欲しい情報があったらいつでもうちに来たらいいよ。それで少しだけ料金を安くしてあげるからさ」


「タダじゃねーのかよ! ……ふん。まぁ必要になった時に来てやるよ」


 俺はソファーから立ち上がり、ゆっくりと出口の方へと向かった。


(にしても、不思議なおっさんと店だったな…)


 その後、俺はシアナと合流し花屋のおっさんの店を後にした。

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