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24話 婚約破棄された悪役令嬢①

 先日の騒動から三日が過ぎ、今日がいよいよ4人での初仕事。


「お前ら、準備はできたか?」


「うん!」「はい、完璧です!」


 クソガキ共はやる気十分みてぇだな。あとは……


「スティアはどうだ? ビビってねーか?」


「大丈夫に決まってるでしょ!」


 フン、強がってはいるみてぇだが大丈夫そうだな。


「よっしゃ! それじゃあ仕事行くぞ!!」


 俺たちは森のなかに進んだ。


 これからやるのはミストウルフ退治。ミストウルフってのは森のなかに住んでいる狼みたいなモンスターらしい。このクエストは報酬が高いこともあって前から目を付けていたんだが、受付嬢が「子供だけだと危険ですよ!」とかいってやらせてくれなかった。


 だがその問題も今や関係なし。スティアが入ったことで年齢制限を受けずに済んだし、これで高額報酬は俺の手の中にあるも同然だ!

 

「ヘヘヘッ、帰ったらギャンブルしに行くか。ちょうど新しい賭博場が出来たらしいし、そこにいってもう一儲けしに行くか!」


「……言っとくけど、リュウトには報酬あげないからね」


「はっ!?」


 ま、まさかこいつ、報酬を一人占めしようと企んでいるんじゃ……


「おい、報酬はみんなのもんだぞ! お前ひとりだけのもんじゃねーんだ!」


「なにいってるの? リュウトには渡さないだけ。報酬は3人で山分けにするから」


 言っている意味が分からず困惑する。


「えっ? なんだ? つまりお前はこのおりぇにダダ働きしろって言いてぇのか?」 


「うん!」


 な、なんて横暴な野郎なんだ。俺が稼いだ金なのに使い方まで指示してくるなんて頭がイカれてんじゃねーのかこいつは……


「ス、スティアお姉ちゃん。流石にそれはちょっとかわいそうじゃ……」


「いいの! それくらい厳しくしないと! それに、賭博をしようとしてる赤ちゃんにお金を渡すわけにはいかないから」


 言いたい放題やりたい放題やがって……流石の俺でも我慢の限界だ!!!


「ふざけんじゃねーぞ! だいたいなんでお前にそんなこと……」



「きゃあああああああああああああああああああああああああ!!!」



「ッ!?」


 森の奥から異常なまでにデケェ叫び声が聞こえてきた。


「い、いったい何が起こったんでしょうか?」


「わからん。だが、あの様子じゃ尋常じゃねーことが起こってるに違いねぇ。……よし、俺たちも行ってみるぞ!」


「ちょ、ちょっとまってよリュート! 危ないから先に一人で行かないで!」


 悲鳴が聞こえた森の奥へと俺たちは向かった。




「あっ、いたよ! あそこにいる!」


 シアナが指をさした場所は大きな木だった。そこにはボロボロのドレスをきた赤髪の女が狼10匹くらい囲まれていた。


「結構ギリギリだったな」


 女はナイフをぶんぶん振り回して抵抗していたが、狼たちにジリジリと距離を詰められていた。


(……これはうかうかしてらんねぇな。アレ使うしかねぇか)


「トランス・フォームⅠ」


 狼にばれないよう木の陰に隠れながれ変身を行い、突撃体制を整える。


「……よし、準備は済んだ。みんな気合入れていくぞ!」


「ええ!」「うん!」「はい!」


「今だぁ! 突撃しろ!!」


 一斉に木の陰から飛び出し、狼の群れに突撃する。


 狼は俺たちに気が付かなかったのか、動揺してオロオロしている。その一瞬のスキをついてスティアとシアナが次々と狼の首を切り落として……


「……っておい! 俺の獲物も残しとけよ!!」


 クソ、アイツら仕事早すぎる! もう狼の群れがほとんどいねぇじゃねーか!


「きゃあああああああ! こっちに来ないで!」


 振り向くと1匹の狼が赤毛女を狙って突進してきていた。


「ったく、弱ぇ女を狙ってんじゃねーぞ! ゴミカス狼が!!!」


 女の正面にいち早く回り込み、狼の顔面めがけ右ストレートを振りぬく。



―ードガッッ



 ……決まった。渾身の一撃。


 この鈍い打撃音が最高に気持ちいんだよな。


「ギャァウゥゥン……」 


 狼は遠くに吹っ飛び、近くの大木にぶつかって気絶し……いや、死んだなありゃ。


 狼の状態を確認し、次は女の方へと視線をうつす。


「……よう、大丈夫か? どこかケガしてねぇか?」


「は、はい。大丈夫です……助けていただきありがとうございます」


 透き通ったキレイな声。お礼を言った後の可愛らしいニコッとした笑顔。


 思わず俺はドキッとしてしまった。


(こ、こいつめちゃくちゃカワイイ……)


 赤色の長い髪、茶色の瞳、鼻筋の通ったキレイな顔立ち。可愛さとキレイさを兼ねそろえた完璧な女。おまけにこいつめっちゃ胸デケェし、もろ俺のタイプだ。


 それにさっきからずっと目が合って……


「あ、あのさ姉ちゃん……そんなにマジマジ見られると照れるんだが」


「ああ、すみません。つい見惚れてしまって……って、なに言ってるの私は!? ああ、はずかしい……」


 えっ? 何この反応? これってもしかして……


「……あの、よろしければあなたのお名前を教えてもらってもいいですか?」


 やっぱり。こりゃ完全に脈ありだ。


「俺は坂口琉斗だ。へへッ、姉ちゃん美人だし俺の彼女にしてやっても……」



―ーボカッッ



「いってぇ!! ……おい、なんで殴った? 今のは殴られる理由はねぇはずだぞ!」


「……別に。ただちょっとイラっときたから殴っただけ」


 なんだそりゃ? 今のどこにイラっとするようなことが……


「あっ、分かったぞ! 俺がこの子と仲良くなるの邪魔するってことは……お前もしかして嫉妬してんのか? へへッ、お前ももうちょい素直になれよ。そしたら俺が可愛がってやるのに」


「ば、バカじゃないの!? 勝手に勘違いしないで! なんでリュウトなんかに嫉妬しなくちゃいけないのよ!」


 へへッ、この程度の茶化しで顔真っ赤にしちゃってさ。


 ホントこいつちょろいな。


「リュートもスティアお姉ちゃんもケンカしてないでよ!」


「そうですよ! そんなことしてる場合ではありません。今はこの方を安全なところに連れて行いくことを優先しましょう。まずは街に戻って……」



「それだけはやめてください!!」



 マリアがしゃべってる途中で急に姉ちゃんが大声を荒げた。


「ど、どうしたんだ? そんな大声出して?」


「あっ、すみません。その実は私……」



「「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」



 うわっ!? ビックリした。


 今度はスティアとマリアが声を荒げやがった。


「チッ、うっせーぞテメェら! なにそんな騒いでんだよ!」


「そ、そりゃビックリするわよ! だってこの人……」



「公爵令嬢のカレン様なんですから!!!」

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