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21話 スティア、警備隊辞めるってよ②

 男女関係なく、ただただ気絶するまで殴り続ける。抵抗する奴もすべて力でねじ伏せる。残念ながらこいつらのなかに俺と張り合えるだけの実力者はいない……これは一方的な殺戮だ。


 真っ白の壁、こげ茶色のフローリング、高そうな装飾品や数多くの賞状。


 これらががすべて隊員の血に染まっていくのに時間はかからなかった。


「も、もうやめてくれ……」


 副司令官のおっさんが俺に助けを求めてくる。当然こんな奴を助ける気はない。俺は棚にあった高そうなワインを2本両手に持ち、

 


ーーバリンッッッッッ



 こいつの頭にたたきつける。



「グァアアアアアア……」


「チッ、喋ってんじゃねぇーよボケが!!」


 

ーードカッッ



 強烈な右ストレートをほほに叩き込む。



「グハッッ……はぁ、はぁ、……た、たのむ! もう許してくれ! このままじゃ本当に死んでしまう!!」


「あ? 命乞いなんかしても無駄なんだよ。全員まとめてブチ殺す!」

 

「ひぃ……」


 大きく腕を振り上げ力をこめる。


 そして今、こいつに拳を叩き込もうとした時だった。



ーーガシッッ



「……そこまでだ」


 誰かに腕をつかまれた。


(なっ!? 誰だ!? クソッ、さっさと振りほどいてやる!!)


 だが腕をつかむ力があまりに強く、少しも振りほどくことが出来ない。


 この時少しだけ冷静になった。今の俺を止められるほどの人間。それがどんなやつか気になったからだ。


 そっと後ろを振り向いて確認する。


 俺の腕をつかんでいたのは灰色の顎髭を生やしたイカつい顔のおっさんだった。年は40くらいか? ただ身長がクソデケェ。180㎝の俺より頭一つ大きい……ってことは2mくらいあんのかこいつ!? おまけにこいつすげぇマッチョだし……こりゃとんでもない奴につかまっちまったな。


「……さっさと離せ。こいつを今すぐ殺す」


「ダメだ。彼は私の部下。殺されるのを見過ごすわけにはいかん。……なにがあったか詳しく事情聴取をさせてもらう」


「し、司令官! こいつは危険な男です! 詳しい事情は私が説明するので、さっさと彼を殺してください」


「あ? テメェ、助けが来たからって調子こいてんじゃねーぞ! テメェみたいなクズは今すぐ俺が……」



「……静かにしろ」



「ッ!?」「ひっ……」


 落ち着いてはいるがドスの利いた低い声。そしてこのおっさんからあふれ出るとんでもない威圧感。


 この2つが合わさったことで直感する。



 このおっさんに逆らったらまずい。



 俺はおっさんの指示に従うしかなかった。


「……さてと。どうしてこんな悲惨なことになったのか説明してもらおうか?」


 





 俺は今まで怒ったことをすべて説明した。


 おっさんに呼び出されたこと。スティアが理不尽にクビにさせらたこと。それがこいつらによって仕組まれていたってこと。全てうそ偽りなく話した。


 俺が話している途中で副司令官が反論してきたこともあったが、マッチョのおっさんがそれをすべて制し、俺の話を優先して聞いてくれた。


「……なるほど。事情はなんとなく分かった」


「し、司令官!? こんな奴の言うことを信じるんですか!? こいつの言っていることはすべてでたらめで……」


「スティア隊長を解雇したこともか?」


「い、いや、それは本当ですが……」


「私はスティア隊長を解雇しろとは一切命令していない。副司令官。あなたは私に確認を取らず、独断で彼女を解雇したということだな?」


「す、すみません……」


「……これは大問題だ。あとで重い処罰を下す。覚悟しておけ」


 へへッ、もうこいつはクビ確定だろうな。いい気味だぜ。


「自分は関係ないって顔してるが、もちろんキミにも問題はある。彼らが悪いのは事実だがキミは私の部下たちに重傷を負わせた。この罪は重いぞ」


「はぁ!? こいつらはスティアを傷つけたクズだぞ! こんなのボコされて当然……」


「悪人に罰を下すのは我々警察……いや、警備隊の仕事だ! キミのような一般人がやることではない!」


 はぁ? お前らじゃ牢屋にぶち込むだけの生ぬるい罰しかしねぇだろーが! もっと殴って痛めつけねぇと……


 っていうか今こいつ警察って言わなかったか? 


 なんでこいつが警察のこと知ってんだ?


 まぁ、んなことどうでもいいか。


「それで、スティア隊長は今どこにいるんだ? ……見たところどこにもいないようだが」


「あ? 知らねぇよ。泣きながらどっかいっちまったんだがら」


「なんだと!? つまりキミは彼女を放って彼らに暴力をふるっていたということか……泣いている彼女を追いかけようとは思わなかったのか?」


 追いかけようとは思った。どう慰めてやろうかとも考えた。だけどこいつらのクソっぷりを見たら、どうにも殺意が湧いちまって……


 いや、言い訳は良くねぇな。俺が間違ってた。


 ゴミ共なんか無視してあいつを気遣うことを第一に考えるべきだった。それなのに俺はスティアのことを後回しにしちまった。


「……その様子だと、一応考えてはいたようだな。だが、考えただけじゃだめだ。キミがやるべきだったことは……」


「傷ついた人に寄り添ってやること……だろ?」 


「ッ!? あ、ああ。そうだ。……驚いたな。私が言いたかったことを先に言われてしまうとは」


 なぜかこいつの言いそうなことが自然と口から出てきた。


 そういえばこいつ、前にどっかであったことがあるような気も……


「そうだ! キミの名前を聞いていなかったね。名前は何ていうんだい?」


「坂口琉斗だ」


「坂口流……」


 なぜか突然おっさんが黙り込んだ。そして俺の顔をまじまじと見てきたと思ったら……


「あっ!? もしかしてキミ、あの時のクソガキか!?」


 急にテンション上げて馴れ馴れしく話しかけてきやがった。


 ……きめぇ。


「な、なに言ってんだおっさん?」


「覚えていないか? まだ子供だったキミに何度も説教した警官だよ。名前は大熊大吾。いやぁ、懐かしいな。確かあの時、私は交番に勤務していて……」


 交番に勤務してた警官……大熊大吾………ッ!?


 その名前は今でもよく覚えている。


※次は10月31日の15時20分ごろに第22話を投稿します。

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