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17話 俺の女は渡さねぇ②

 ナオミチとの決闘は話し合いの末、2日後に行われることになった。場所はこの街にある闘技場。


 俺はこの準備期間を活用し、特注のメリケンサックを使ってスライム退治のクエストをこなしていた。


 武器屋のおっさんが作ってくれたメリケンサックは非常に出来がいいし、使い勝手もバッチリだ! おまけにこの武器、魔法石だか何だかが入ってるらしく、そのおかげで俺も火や雷を拳から出せるようになった。



―ードゴッッ



「よしっ、これでスライム300匹目! こんだけスライム倒して特訓したんだ、これでナオミチにも勝てるはずだぜ!!」


「うん! 絶対勝てるよ! リュート頑張ってね!」


「……はたして上手くいくでしょうか?」


 俺たちが浮かれているなか、マリアだけが暗い顔してボソッとつぶやいた。


「なんだ? マリア、もしかしてお前……おりぇが負けるとでも思ってるのか?」


「いえ、私もリュウトさんなら勝てるかもって思ってるんですけど……彼はおそらくこの街で1番強い冒険者なので十分注意してくださいね」


 街で一番か……そういやアイツ、Sランク冒険者って言ってたし、それなりに魔法とかも使えるんだろうな。


 まぁでもそんなの俺にかかれば朝飯前だけどな! へへッ


「その顔、自分なら大丈夫って思ってるかもしれませんけどナオミチさんは全属性の魔法も使えるし、それにとんでもないスキルだって持って……」


「心配すんな。どんな敵だろうと油断はしねぇ! 全力で叩き潰してやる!」


「そういうことじゃないんですけど……」






 あっという間に時間が経ち、今日がいよいよ決闘の日。バカ女を加えた俺たち4人は闘技場まえでナオミチたちを待っていた。


 数分待っていると、ナオミチが6人くらい女を連れてゆっくりとやってきた。


「おせぇーぞ! ナオミチ!」


「ごめんごめん。……っていってもまだ集合時間前だけどね」


「こまけぇことはどうだっていいんだよ! さっさとケリつけにいくぞ!」


「やれやれまったく。わがままな赤ちゃんだな」


 俺たちが先に闘技場に向かう。


 後ろから「あんな礼儀の知らない赤ちゃんにかまってあげるなんてナオミチ様流石です」とかの気持ちワリィほめ言葉なんかも聞こえてきてイライラしたが、気にしないことにするか。


「……完全にリュウトさん悪役みたいですよ」


「フン。あいつに勝ちさえすりゃバカ女をあいつらのパーティーにすむんだ。おりぇがあいつらにどう思われようがどうだっていい」


「ッ!? リュ、リュウトォォォ……」


 急に泣き出したと思ったら、俺を抱っこして突然ギュっとしてきやがった


「ゲッ!? おい、放せぇ! 息が出来ねぇよ!」


「……ごめんね。私のせいでこんなことになっちゃって。本当に無理しないでね。あなたにケガだけはしてほしくないから。危なくなったら私がすぐ止めるから」


 クソ、なんでどいつもこいつも俺を心配してんだ? こいつら俺がボコボコにされて負けるとでも思ってんのか? 


「……そんな心配してる暇があんなら、もっと俺の気持ちを高めるようなことをしてくれよ!」


「えっ? そんなこと急に言われても……あっ、そうだ! このバトルで勝ったら何でも好きなご褒美あげる」


「何でもだと!? だったら今夜おりぇと一緒に寝ようぜ!」


「え? ……っていうか、いつも一緒の部屋で寝てるじゃない。そんなことがご褒美で本当にいいの?」


 あれ? もしかして勘違いされてねぇか? 仕方ねぇな、こいつにも分かるようちゃんと説明してやっか……







「えっ!? その顔一体どうしたんだい!? っていうか、リュウト君。そんな状態だけど本当に戦えるのかい?」


「うるふぇ! ふぁっさとしふぁいすんぞ!」


 あのバカ女、試合前だっていうのに俺のことボコボコにしてきやがった! 顔面に平手打ちまでされて散々だ。何でもっていうからお願いしたのにこの仕打ちはねぇだろ!


 この試合の審判をしているバカ女を睨む。一瞬俺と目が合ったが、すぐにプイッと顔をそらされてしまった。


 そしてすぐにいつもの真面目な顔に戻り、


「試合開始!!!」


 力強い声で試合開始の宣言がされた。


「ったく、試合前に散々ひどい目にあわせといていい気なもんだぜ。おい、ナオミチ! おりぇは今イライラしてんだ! いっちょ派手に暴れさせてもらうぜ!!」


 俺は全力で駆け出しナオミチとの間合いを詰める。赤ちゃんの短い脚のせいで全然進んでいる気はしなかったが。


 それでも射程圏内にはそろそろ入る。そこで一発殴りかかりに行けば……


「……スリップグラウンド」


「ッ!? やべっ!?」



―ードシンッッ



 ナオミチがなんか言った瞬間、俺は派手に転んでしまった。……なんかわかんねぇけど、突然地面がスケートリンクみたいにツルツルになりやがった。


 おかげで立ち上がることも出来ねぇ。


「リュウト! 大丈夫!? ケガしてない!?」


「審判さーん。ひいきしちゃ駄目ですよー! 肩入れ厳禁です!」


「っていうか、なんでナオミチ様の応援をしないのかしら? どう考えてもナオミチ様の圧勝に決まっているのに……」


 チッ、女どもはうるせぇな! 真剣勝負に口出しすんじゃねーよ!


「……リュウト君。もう降参してくれないか? これ以上僕はキミを傷つけたくはないんだよ!」


「ハッ、ウソだな。もしそれが本心ならお前が降参するはずだ! それなのにお前から降りないってことは、お前がまだバカ女を自分のパーティーに引き入れたいってことだろ!」


「なっ!? 僕はそんなつもりじゃ……」


「気遣ったふりすんじゃねぇ! 赤ちゃんにも優しいアピールのつもりか? そうすれば女どもが勝手に褒めてくれるもんな!」


「ッ!? 少しお仕置きが必要そうだね! ―ーファイアーボール!!」


 火の玉が俺の方に向かって飛んでくる。本当は避けたかったが、地面がツルツルするせいで全然動けねぇ! ……これは受けるしかねぇか


 俺は腕をクロスして顔をうずめる。


「グッ!?」


 体中に激しい熱さと痛みが襲ってきた。


 辛ぇがここは我慢だ!




 ……なんとかたえられたな。


 防護服のおかげでそこまで深刻なやけどは追わずに済んだみてぇだな。


「へぇ、この魔法を耐えるのか。まあでも、ただの初級魔法だし耐えれて当然か」


「へへッ、おかげで体もあったまってきたわ! こっからが本番……」


「リュウト!!」


 俺が再び立ち上がろうとしたとき、バカ女が俺の方に駆け寄ってきた。


「な、なんだ!?」


「ケガはない!? 大丈夫!?」


「あのなぁ、今勝負の最中なんだよ。女がわって入ってくんじゃねー!」


「よかった。その様子なら大丈夫みたいね」


 ……こいつ全然話聞いてねぇな。


「それよりナオミチさん、赤ちゃん相手に魔法を使うなんて、いったい何を考えているんですか!?」


「彼が変なことを言うから少し懲らしめただけです。それよりスティアさんは審判なんですからちゃんとその仕事を全うしてください。さっきからリュウト君に肩入れしすぎです」


「なっ!? だってリュウトは……」


「ナオミチ様のおっしゃる通りそうですわ! あなたは口を挟まないでください」


「ッ!? スティアお姉ちゃんはリュートのことが心配なんだよ! それなのになんで心配しちゃダメなの!?」


「その通りです。それにしてもあなた方、リュウトさんに少し……」


 ……何なんだこいつら?


 どいつもこいつも俺の勝負に割り込んできやがって!!


 もう我慢の限界だ!!! 


 もう少し後に使う予定だったが、今使ってやる!


「……トランス・フォームⅠ」


 みんなが口論になっている中、俺はひっそりと元の姿に変身した。


 そして大きく息を吸い、




「おい!!!」




 ドスの利いた低い声で叫んだ。


 そしたらみんなの視線が一斉に俺に集まった。


「えっ……あ、あなたあの時の!? な、なんで? あの赤ちゃんは!?」


「リュウトさんもう変身しちゃったんですか!? まだちょっと早いんじゃ……」




「俺とナオミチのタイマン勝負に勝手に入ってくるんじゃねぇよ!!! サッサと消えろやクソボケ女共が!!!」




 俺が再び声を張り上げる。女たちは俺が怒っているのを察したのか、スタスタと闘技場のすみっこに散っていった。


 そして再びナオミチと対面する。


 ナオミチは相変わらずひょうひょうとしていたが、そんなことはどうでもいい。


「ナオミチ、この姿なら本気でやれんだろ? ……さっさと続きすんぞ」


※次は10月22日の18時20分ごろに第18話を投稿します。

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