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16話 俺の女は渡さねぇ①

 武器を買ったあと、俺たちは次に装備屋に向かい、そこで防具やらなんやらを護身用として一式揃えることになった。それにしても……


「防具つっても、いっぱいありすぎてどれがいいのか分かんねぇな」


「リュウトはこの特注の防具がいいんじゃない? 変身するスキルを持ってる人はほとんどこれ着てるし」


 バカ女はそういって赤ちゃん用の防具服を俺に見せてきた。……この服なんか鎖帷子に近いな。まぁ、ダセェけど防御力アップにはなるか。


 店の店員にもくわしく話を聞いてみると、どうやらこの服には特別な魔力ってのが込められていて変身した姿に応じて服も勝手に変化するらしい。


「めっちゃすげぇ服じゃねぇか! ……だけどよ、こんなのぜってぇ高いだろ。それでもいいのか?」


「うーん。確かに高いけど……リュウトが冒険者になったお祝いってことでプレゼントしてあげる」


 マジか! へへッ、案外こいついい奴じゃねーか。


「あんがとな! そんじゃあさっそく着てみるとすっか!」


 今着ているベビー服の上から防具服をかぶせる。何だか少し重いな。それに少しサイズが大きいし、これじゃあ使えない……


「ッ!?」


 着おわった瞬間、防具服が突然が白く輝きだした。そしてその一瞬のうちに俺の身体にぴったりのサイズに変化した。


「おお、すげぇ! ホントに服のサイズが変わんのか! なぁ、お前ら今の見たか……」 


 感想を聞こうと3人をみると、なぜか全員笑いを必死にこらえていた。


 なんだ? 何かおかしなことが……ってなんじゃこりゃ!?


 驚いたことに、防護服の色がピンク一色になっていた。


 そして最悪なことに、ど真ん中にクマのイラストがついていた。なんかわかんねぇけど服のデザインまで変わってんじゃねーか! 


「ブフッッ、リュ、リュウト。その服すっごく似合ってるよ。かわいいクマさんの入った防護服で……ッアハハハ!」


「リュート、本物の赤ちゃんみたいだよ!」


「シアナさん、リュウトさんは本物の赤ちゃんですよ」


 そういって3人は仲良く俺をバカにして笑い出した。


 ……ホント女ってのは集まるとロクなこといわねぇよな! 3人ともぜってぇ今度痛い目に合わせてやる! 今日はもうこいつらと一緒にいるのは御免だ! 服も買えたし、ひとりで外をブラついてみるか。


 そう思い立ち店から出ようとしたときだった。


――ドンッッ


「ッ!? ごめん! 大丈夫かい!?」


 誰かの足に思いっきりぶつかってしまった。


「ったく、ちゃんと前見て……」


「いや、ホントにごめん……ってキミはさっきの!?」


 ……驚いたな。まさかまたすぐにこいつと会うことになるとは。


「チッ、気を付けろやナオミチ! ああ、いてぇ。怪我したかも。おい、さっさとおりぇに慰謝料よこせ……」



――ゴンッッ



「あぁ!! イッテェ!!」


「変な要求するんじゃありません! それと、ぶつかったならちゃんと謝りなさい!」


 クソ。バカ女のやつ、いつも以上に強くブン殴りやがった。


「……悪かった」


「別に問題ないよ。……っていうか、キミすごいね! 赤ちゃんなのに会話ができるんだ! お名前はなんていうのかな?」


「サガグチ・リュウトだ」


「サカグチ・リュウト…… あぁ、なるほど。そういうことか……」


 俺の名前を聞いたあと、なにやらブツブツとつぶやき始めた。


「あ? なんだ? おりぇの名前になんか文句でもあんのか?」


「いや、何でもないよ。ところで、リュウト君はスティアさんと知り合いなのかな?」


「ああ、おりぇの女だ」



――ボカッッ



 また俺のこと殴りやがった……


「ウソつくんじゃありません! ……ナオミチさんごめんなさい。この子の言うことは当てにしないでください。私とリュウトはそうですね……年の離れた姉と弟って感じですかね?」


 クソ、勝手に姉貴面すんじゃねーぞ!


「っていうかお前、ナオミチのこと知ってんだな。お前らも知り合いなのか?」


「ええ。っていうかこの街でナオミチさんのことを知らない人はほとんどいないんじゃない? 彼は数少ないSランク冒険者なんだから」


 ナオミチの奴、Sランク冒険者なのか! クソ、俺はFランク冒険者だっていうのに……


「ハハハッ。言いすぎですよ。スティアさん」


「そんなことないと思いますけど……」


 ここで少し会話が途切れた。


 少し間をおき、ナオミチが何かを思い出したかのように話を切り出してきた。


「あっ、そうだ! スティアさん! 例の件について考えて直してもらえましたか?」


 ん? なんだ? 例の件って……


 気になったので小声で耳打ちしてスティアに話しかけた。


「……実は私、ナオミチさんのパーティーに招待されてるの。一緒に冒険者をやらないかって。全然乗り気じゃないから断ってるんだけど、どうにも話を聞いてくれなくって……」


 なるほどな。しつこく勧誘されてるってわけか。


「ならおりぇに任せとけ! おりぇが代わりに断り入れてやっから」


「えぇ……まぁでもお願い! 何とか断って!」


 バカ女とのひそひそ話を終え、ナオミチに話を切り出す。


「悪いがこいつをお前のパーティーにいれてやることはできねぇな」


「え? それはどうしてだい?」


「……こいつはおりぇのパーティーに入れるからだ!」


「え!? ちょっとリュウト! なにいって……」


 バカ女はキレていたが気にしちゃいられねぇ。


 ナオミチの方も一瞬目を見開いていたが、すぐに元の腑抜けた顔に戻った。


「……スティアさんはキミのパーティーには合わないと思うよ。スティアさんの剣の腕前は僕から見ても抜群だし、Sランクの僕と一緒に行動したほうがあっていると思うんだよ」


「ヘッ、Sランクだか何だか知んねぇけど、テメェみてぇなひょろがりに負けるほど俺は弱くねぇんだよ! ……そうだ、いっちょ勝負しねぇか? お前と俺でタイマン勝負して勝った方がこの女を自由にできる。負けたら今後一切こいつにはかかわらない。この条件でどうだ?」


「……分かった。その勝負受けるよ! ただ、赤ちゃんだろうと手加減はしないからね」


 へへッ、調子づきやがって! ぜってボコボコにしてやる!





「……なんか私の意志を無視して勝手に勝負することになってるんですけど」



※次は10月20日の18時20分ごろに第17話を投稿します。

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