13話 新スキル『トランス・フォームⅠ』
冒険者カードを作り終え、俺たちはクエストを受けることになったんだが……
「なんでおりぇが草むしりなんかしなくちゃいけねぇんだ! これじゃあ孤児院にいた時と変わんないじゃねーか」
「我慢してください。私たちにできるクエストはこれしかなかったんですから。それと、草むしりじゃなくて薬草採取です!」
どっちでもいいわんなもん!
「あぁ! リュート、普通の雑草までカゴに入れちゃダメだよ!」
「あ? どれも同じ草だろうが!」
「全然違います。 私たちが集めてるのはエナジーベイビー草。ポーションのもとになる重要な薬草なんですから、テキトーに判別してはダメですよ」
「……めんどくせぇ仕分け作業だな」
「文句言ってないでみんなで頑張ろう!」
そんなこんなで小一時間ほどぶっ続けでやり続けた。
「……なぁ、なんたらベイビー草ってやつ? もうどこにもなくねぇか?」
「うん。私の方にも全然ないよ」
「確かにそうですね。……少しだけ森の方に行ってみますか? そこでしたら大量にあると思いますよ」
「マジか、それならそこいってみようぜ」
俺たちは森に向かうべく平原から移動しはじめた。
だが、そんな時、
「うげっ、なんだこいつ!?」
水色の饅頭みたいのが俺たちに近づいてきた。
「え? ただのスライムじゃないですか? どうしてそんなに驚いてるんですか?」
スライム!? ……そういや、ゲームかなんかでそんな名前の生き物聞いたことあるな。にしても、まさかホンモノに会えるなんてな。
「……スライムなんて初めて見たからな」
「フフッ、そういえばリュウトさん。まだ赤ちゃんだから驚いても仕方ないですね」
「こいつはおりぇたちに攻撃とかしてこないのか?」
「スライムは基本的に攻撃してこないのでご安心を。ですが森の奥にはもぉーと凶暴で怖い魔物がいるので、赤ちゃんのリュウトさんは気を付けてくださいね」
チッ、こんなクソガキにまで赤ちゃん扱いされるとは。
俺も堕ちたもんだぜ。
「ヘッ、森にいる魔物なんぞおりぇが蹴散らしてやんよ」
「まぁ、頼もしいですこと」
無駄話をしていると、いつの間にか森にたどり着いた。
マリアの予想通りそこには目当ての草がいっぱい咲いていた。
「よっしゃ、さっさとこいつを刈り取って家に帰ろーぜ」
「うん! よぉーし、私頑張っちゃうよ!」
フン、ガキども張り切ってんじゃねーか。
だったらおりぇは少しばかり休憩を……
―――ガサガサガサガサ
茂みの中からなにか音がした。
……これはなんかいるな。イノシシか?
しかもこの音からして1匹や2匹じゃない。10匹ぐらいいるか?
「……リュート」
「ああ、分かってる。なんかが近くにいる。2人とも気を付けろ」
「ギィィィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
様子をうかがっていると茂みの中からうるせぇ金切り声が聞こえてきた。そしてすぐに茂みの中からバケモノども飛び出てきた。
「な、なんだこいつら!?」
見た目は豚っていうかゾンビみたいだ。
数はおそらく10……いや、20匹入る。しかも最悪なことにどいつもこいつも金棒をもってやがる。クソ、こいつは厄介だぞ。
「ゴ、ゴブリンですよ! リュウトさん、こいつらは人間を襲う危険なモンスターなので注意してください!」
「ギィェェエエエエエエ!!!」
「きゃああああ!!」
奴らはいっせいにマリアに襲い掛かってきた。こいつら、弱そうな女を狙いやがって。……おまえらの思い通りになんかさせねぇよ!
「おめぇらの相手はこのおりぇだ!」
握りこぶしを作り、奴らに叩き込む。
――グシャ
「グェェェエエエエエエ……」
よし、まずは一匹……
「リュ、リュート! 後ろ!!!」
あ? 後ろだと?
――ブンッッッ……ドカッッッ
「グハッ!?」
クソ、金棒の攻撃もろに食らっちまった。
やべぇ、意識が飛びそう……
「リュート!!!」「リュウトさん!!!」
……俺が倒れたら2人はどうなる?
あのバケモンたちに殺されちまうんじゃねーのか?
そんなことは絶対させねぇ!
こんなとこで俺が倒れるわけにはいかねぇんだよ!!!
『条件クリア、スキル『トランス・フォームⅠ』を獲得』
……なんだ? 頭の中に変が声が聞こえた。
そういえばこの声、ずいぶん前に聞いたことがあるな。
『このスキルによって、坂口琉斗の姿に10分間だけ変身できます。使用する際には『トランス・フォームⅠ』と詠唱してください。また注意事項として、このスキルは使用してから24時間経過しないと再使用はできません』
……ごちゃごちゃうるせぇな。
それにしてもこのトランス・フォームⅠってスキル……いや、変なこと考えてる時間はねぇ。あいつらを守るためだ! 使えるもんは何でも使ってやる!
「トランス・フォームⅠ!!!」
詠唱をすると突然、俺の身体は白く輝きだした。
「リュ、リュート!? だ、大丈夫!?」
全然大丈夫じゃねー!
やべぇ、体がめちゃくちゃ熱い。これだけで意識が飛びそうだ。
だが今は耐えるしかねぇ……
数秒たつと熱はなくなった。
それと、こころなしか身体は大きくなっている気がした。
「リュ、リュ、リュートが大人になった!?」
シアナの奴なに言って……って、どうやらマジで体が大きくなったみたいだな。
このムキムキに鍛え上げられた肉体。丸太みてぇに太い腕。体中にある無数の切り傷。そしてなにより左肩の龍の入れ墨と右肩の虎の入れ墨。これもちゃんとある! まちがいねぇ。まさしく俺の身体だ!! へへッ、最高だぜ。
それに、さっきまで俺よりデカかったゴブリンやクソガキたちも今や俺の腰くらいの身長しかおチビちゃんだ。
「本当に俺、元に戻ったんだな……」
「え? ホントにリュウトさんなんですか!? ……というか、リュウトさん! あなたすっぽんぽんじゃないですか!!! ちゃんと下を隠してください!!!」
あ? なに言ってんだ……ってホントだ。
さっきまで着てたベビー服破れちまったみたいだな。
「ヘッ、気にすんな。それよりまずは……」
ゴブリンどもに視線を向ける。
やつら俺の変身にビビったみたいで、互いに身をすくめてビクビクしていた。
「おい、テメェら。さっきはよくも金棒で俺を痛めつけてくれたな! 覚悟はできてんだろうな!!!」
「ピギィィ……」
俺はこの後、こいつらを1人残らずボコボコにした。
※次は10月12日の18時20分ごろに第14話を投稿します。
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