4半世紀
長旅の後
あなたが、私を親の車に乗って帰る日
あなたはまるで、自分が産んだ子猫を取られる母猫のような顔をして
ウロウロしてたね
私はあなたの子を産んでも、
私があなたの乳首を吸うのを許してくれたね
『今度生まれてくるなら、私はあなたから産まれて、あなたの子どもになる』
と言っても、困った様な顔をして笑っていたね
だから、
私は自分の産みの母が、あなたに
認知症が故に酷いことを言うと
私はかつてのあなたの様に
あなたが私を子猫のように思ってくれた分だけ
私は私の母を
外敵のように
「シャー」と威嚇するんだ
あの日、ウロウロする母猫を
あの母猫を守る子猫の様に
私はあなたを守りたいと思ったんだ
私のボケた母から
母は今朝うんこに間に合わなかった
薬で真っ黒なうんこは、畳の上で
母自身が踏んでしまったので、こびりついて中々とれなかった
主人はでトイレに流せるトイレットペーパーで拭い、使い古しのタオルで拭いてくれた
このご時世だからと、買ってあったエタノールを使い、取りきれないうんこを拭いた
それでも、畳にのめり込んだうんこたちを、使い古しの歯ブラシで掻き出し
また、拭き
うんこが無くなっても色素沈着した畳を、塩素スプレーで掻き出して落とした
薬のせいか、不思議と人糞の匂いはしなかったが、塩素を使うので
開け放した窓から風が吹いていた
肌寒くも、春の風である事は確かだった