蕾
ここ十年、感情を出していない気がする。脳では感情が出るけど顔に感情が出ないのだ。
父が母を殺したショックのせいかうまく感情が出せない。
十年も経っていたらさすがに表情筋が息をしていないのだ。
3月15日 高校を卒業した今日、僕には誰一人友達がいなかった。
小、中、高で一人も友達を作らないのはある意味才能なのではないかと思ってしまう。
さすがに大学で友達を作らないとという気持ちはある。
だって、祖父母に会うのが早まってしまうかもしれないから。
それだとさすがに申し訳ないし祖父母に教わったこと何もしてない。
でも、作らないとと考えてしまうと恐怖で仕方がない。
もし、僕と友達になって僕の父が人殺しだと知ってしまったら、
僕のことを嫌ってその人が離れていなくなってしまうんじゃないかと思ってしまう。そんなことを考えていると怖くなる。一気に鳥肌が立って息が苦しくなる。
僕のこといじめてる奴ならケラケラ笑って見るほどに顔が段々と青くなる。
確かに僕は人殺しの息子だ。だけど、被害者の息子でもある。
でも、人は悪いことを第一印象としてみる。被害者の息子という考えが出てこない。
しかも、人殺しなんて最悪の印象だ。その息子というだけでも何を考えているか解らないと軽蔑される。
子どもを何を考えているか解からない僕に近づけたくないという親の考えは理解できる。
近づいてくるのは僕をいじめる奴らだけ
「父親のことを言いふらされたくなければ」これが決まり文句。
皆もう知ってるって分かってるのにボコボコと殴られ蹴られ最悪金取られという
いじめの見本のようなことをしている。
この人生が夢であってほしいと何度願ったか、神様なんていないんだって何度思ったか。
小学校から高校までずっとレッテルを貼られている僕だ。
友達なんていなくてもいいじゃん。知り合い止まりでいいんだよ。教師と自分みたいな関係で。
最終的にその考えになってしまう。 それで落ち着いてしまうのだ。
でも今日でそんな関係はなくなってしまう。
これまでやられてきたことがもうなくなると考えると少し嬉しい。
皆が涙している中そんなことを考えて先生の話を聞く。
「これで先生の話は最後です。高校を卒業すれば皆先生と同じ大人になります。
相手を見つけるまでは一人で生きていきます。準備は終わりました。
これから、大学に行き知識を付ける人や社会に出て人のために働く人
人生に悔いが無いよう生きてください。」
号泣しながら先生は真面目なことを言う。
僕は後悔しかないから先生との約束は結べないけど
「これからなら何とかなるから。」
教室に少し暖かい春風がカーテンをふわっと揺らし通り抜けた。
教室を出て僕は、真っ先に家に帰ろうと下駄箱へ向かう。
下駄箱の外には人がたくさん集まっている。皆がざわざわしている中、
誰にも気づかれずにするりと校門を出る。
一日の中で下校が一番好きな時間だ。
帰り道の河川敷、太陽が水に反射し白くキラリと光っている。
雀がチュンと鳴き、鳩がちょこちょこと歩き、風が吹けば花弁が舞う。
まさに春日和だろう。制服が少し暑く感じる。
そんなことを考えながら帰っていると、河川敷の公園に立っている一本の桜の木が目に入った。
「ここに桜の木があったのか」まだ蕾はついていない。
その木の下に一匹の猫がいた。散歩の途中だろうか。
僕は猫を抱え、ふと考える。
「僕が猫だったら、気ままに過ごして誰にも迷惑かけずに
誰にも気づかれないまま死んでいたのに」そんな考えと一緒にそれを復唱した声が後ろから聞こえた。
後ろを振り向くとそこに女の子が立っていた。
肌は透き通る今にも消えそうなくらい白く、髪はさらっとしていて綺麗な桜色、
口元はリップをしているのか少しピンクに染まっている。
ふわっと香るこの匂いは桜の香りかと思うほどにいい匂いだった。
この娘が桜の妖精と言われたら信じてしまうかもしれない。
「あ、あのなんで分かったんですか?」
僕の思考となぜ重なったのかその少女に問う。
「君が前に同じことを言っていたからだよ、夢園蘭君」
「君と僕って初対面だよね?なんで僕の名前知ってるの?」
不思議な少女だ。
彼女は笑みを浮かべ僕の質問に答える。
「まぁ、学校同じだしクラスは違うけど学年も一緒だし」
確かに、うちの学校の制服だ。しかし、学校で見たことが無かった。
こんなに可愛ければ普段一人の僕でも話を聞くはずなのに。
「名前、聞いてもいいですか。」
「春崎桜」
彼女にぴったりな名前だった。
「夢園君はどうしてここに?」
「ここに桜の木があったからかな。去年は気づかなかったし。」
「そっか、でもこの木はまだ花を咲かせないよ。」
彼女は木に触れ悲しげに言う。
「いつ咲くのか誰もわからない。咲かないかもしれないね。」
「この木に花がついている頃は僕はいないかもしれないけど。」
僕はそんな言葉をこぼしてしまった。
「それは駄目だよ。それは私がさせないからね。」
彼女は僕の目を見てハッキリ言った。
「じゃあ私帰るね。また明日学校で。」と彼女は言って、いなくなってしまった。
僕は猫を抱きながら立ち上がった。
「君は友達がいるかい?」と猫に尋ねる。
そうすると猫は「ナーゴ」と鳴きながら僕の胸に頭を擦り付けてきた。
「僕と友達になってくれたらいいな。」
「ニャー」と猫は嬉しそうに鳴いた。
僕は猫をうちで飼うことにした。
「なんで彼女は僕に話しかけてきたのだろうか、もう会わないはずなのに。」
不定期更新になりますけど。
内容は決まっております。すこし言葉がおかしいかもしれませんがそこはご愛敬ということで、
ではまた次回。