貨物船護衛作戦 前編
2119年、宇宙に人類が進出し彼らは空人と呼ばれる存在になった。空人は宇宙船を使い惑星や他のコロニーへと移動することができるが実は宇宙以外に地球に降下して移動することもできる。地球には空人とは違い宇宙へと行かずに残る人達もいる。彼らは空人とは反対に地人と呼ばれ地球と宇宙コロニー間で物資の交換をしている。2120年現在、地球から送られる物資の護衛任務に俺はあたっていた。
さかのぼること3時間前、午前10時にギルドから連絡が入ってきた。相手はギルド内で通信担当をしているナタリアだった。
「どうしたんだこんな急に連絡してきて」
「あなたにおすすめの仕事を持ってきたから連絡しただけ」
「おすすめの仕事だぁ?この前そうやって俺を巨大化した宇宙イナゴの掃討に駆り出させたろうが」
「あら、でも何かと文句は言いつつも受けてくれるじゃない」
こいつには何かと無茶な仕事や誰もやりたがらないような仕事を押し付けられている。今度こそ断ってやりたいところだが評価に響くと俺の生活に響く。
「仕事の内容は?」
「結果受けるんじゃない」
「うっせぇな、早く教えろよ」
「まぁ、いいわ 仕事の内容は地球から貨物船がマスドライバーで射出されるんだけどそれの護衛。合流地点は第1コロニーの第2発着場」
「ただの貨物船の護衛なら誰にでもできるだろう。他をあたれよ」
「あら、いいのかしらその貨物船の積み荷のことなんだけど」
「どうせ食料品とかだろほかにやらせろ 切るぞ」
「確かあなたの好きな漫画本の最新刊が入ってるのよ。もしも貨物船が誰にも守られずに宇宙生物に壊されたらどうなるかしらねぇ」
「・・・ます」
「聞こえないわ。もう少し大きな声で言ってちょうだい」
「やります やらせてください 仕事受けさせてくださいお願いします この通りですからァァァ」
「だったら最初からやるといえばよかったのに。場所はさっき言った場所に1時間半後、遅刻厳禁だから気を付けてね」
通信が切れた後、俺は腹ごしらえをすることにした。今いるのは第1コロニーの第1発着場付近、第2発着場とは反対側にある。幸運なことに別のコロニーではなかったためある程度時間に余裕ができた。
第1コロニー第1発着場付近 大衆料理屋 プラネット
ここは大衆料理屋、名前はプラネットでいつも俺が贔屓にしている店だ。
「おーい、また来たぞー」そう呼びかけると奥からエプロンをつけた女性が一人走ってきた。
「ジェドじゃん。こっちのテーブル空いてるからそっち座って」
今話しているこの女の名前はリンダ。このプラネットの看板娘で空人になる前からの知り合いだ。
「注文は?またいつものチャーハン?たまには別の料理も食べてほしいんだけどなー」
「あのチャーハンの味付けが一番スペースミートの味をかき消してくれるから俺はチャーハンを食べるんだよ」
そう、コロニー内では限られた敷地の中でしか畜産ができないし地球から貨物船で送られる肉も多くはないため本物の肉はコロニー内では貴重な存在なのである。そして俺がさっき言ったスペースミートについてだがスペースミートは科学技術で作られた人工肉のことで大変安価だが味がひどく不味い肉で本物の肉の代替品としてコロニーで売られるようになった。驚きの不味さから好んで食べる人はいないし他の人もしょうがなくこのスペースミートを食べている。俺もしょうがなく食べている一人だがこのプラネットのチャーハンは味付けが濃くスペースミートの不快な味を感じさせずに食べることができるためここにきてはいつもチャーハンを食べている。
「はい、注文のチャーハン」
「ありがとよ、ん?この小皿の奴は何だ?」
「それはスペースミートを特製のたれで煮込んだ煮込み。新作だから食べてみてよ」
「スペースミートの煮込みって俺の嫌いなものをわざわざ食べさせんのかよ」
「いいから食べてみてよ。自信作なんだから」
「ったくしょうがないな」
一口煮込みを食べてみるとスペースミート特有の味はほとんどしなかった。
「美味い」
「え!本当?美味しかった?」
「不快な味が全くしねぇ。美味いなこの煮込み」
「やった!ジェドがチャーハン以外のスペースミート料理で美味しいって言ってくれたー」
「信じられねぇ、これがあのスペースミートなのか?」
「正真正銘スペースミートなんだけど」
「これ新メニューにしてくれたらチャーハン以外に食べられるのが増えるじゃねぇか」
「もしこれからも試作品作ったら味見してね」
「これだけのもの作れるんだったら食べてやるよ」
「そういえば今日って休みなの?」
「何言ってんだ?今日も仕事があるに決まって・・・今何時だ!」
ふと腕時計の時刻を見ると約束の時刻まであと45分ここから急げばぎりぎり間に合うが油断はできない。
「すまん今日はもう行かないと。会計頼む」
料金をテーブルにおいて急ぎ足で自分の宇宙船へと走り出す、走っている途中後ろからリンダが
「ちょっとおつりはー?」と声をかけたので
「釣りは取っといてくれ、次来た時に返せよなー」と返して宇宙船を発進させた。
第1コロニー第2発着場
「随分と遅かったじゃねえかジェド」
「悪かったよおやっさん。でも遅刻じゃねえだろ?」
「まぁ遅刻じゃねぇからいいけどな。気を抜くなよ、最近この宙域で巨大な宇宙生物がいるみたいだからな」
「その情報はもうギルドから来てるよおやっさん。何人もやられているんだとよ」
「できれば討伐してほしいものだな」
「この際討伐できれば楽になるな」
「無理して闘うなよ、何人もそうやって死んでるんだから」
「無理には戦わねぇよ、命の方が大事だし。それに政府の戦闘部隊が今日護衛にくるって追加連絡が来たぞ。そいつらに任せてればいいんじゃないの?」
「戦闘部隊といってもついこの前まで訓練生だったひよっこが大半だとよ。お前の方がまだ戦えるんじゃないか?」
「それ本当か?なんで政府はそんな戦力にならないような奴らを派遣するのか理解に苦しむな」
「さぁな大方実戦経験を得させるためなんだろうけどよ。俺も人の考えてることなんてわかるわけねぇよ」
そんな雑談をしている中後ろから
「ちょっとあんた達」と声をかけられた。
「なんだよいきなり話しかけてきて人と人が話している最中だろうが。なぁおやっさん」
「ジェド、政府の戦闘部隊ってこいつらのことだ」
「こいつらが政府の戦闘部隊か。にしても政府の戦闘部隊ってのは名乗りもしないでいきなり人に話しかけるんだな。初対面には最初名乗るのが普通だろうが」
「悪かったわね。私は政府直属宙域戦闘部隊第2小隊に所属しているエリカ=アーノルド、要件はさっきの発言を撤回しなさい」
「実戦経験のない新兵が飛ばれても邪魔なだけなんだよ」
「私たちはこれでも訓練校で厳しい訓練や試験を通過して卒業してきた兵士よ!馬鹿にしないで!」
「訓練や試験を通過したとか言ってるけど宙域戦闘は訓練通りじゃない、いつイレギュラーが起こるかすらわからない。その時の状況に対応できなければ死ぬだけだ。訓練を通過して得た自信だけで出撃するのはやめておけ、すぐ死亡者リストの中にお前の名前が載る」
「なんですって!あなたみたいな命が大事とか理由をつけて逃げようとしている臆病者なんかにこの私が負けるわけないでしょ!」
「勝ち負けなんてどうでもいいんだよ。一つしかない命を無駄にはしないようにしろってことだ」
「余計なお世話よ!絶対に私が宇宙生物を倒してやる!覚えてなさい!」そう吐き捨てるとエリカは部隊の方へと戻っていった。
「ジェド、お前めんどくさいのに絡まれたな」
「どうして軍人ってああも好戦的なんだろうな」
「まぁいい、そろそろマスドライバーから貨物船が出発する時間だ。出撃の準備でもしとけ。くれぐれも気を付けろよ」
「いわれなくても気を付けるよそして俺は必ず帰ってくるさ」
さて、そろそろ行くとしますか。
ナタリア ジェドの所属しているギルドの連絡員。彼に嫌がらせのように仕事を渡すが実は彼の実力の高さを見込んでのこと
リンダ 第1コロニー第1発着場付近にある大衆料理屋 プラネットの看板娘。新作メニュー開発に情熱を注いでいる。
おやっさん 本名はグルド=カークス 第1コロニーの荷物搬入担当 ジェドとは仕事でよく顔を合わせるため仲良し